「アフターコロナの困りごと」から読み解く、今後需要が高まる業界予測
昨今のコロナ禍で、人々の消費行動は大きく変わり、「新しい生活様式」が求められるようになりました。コロナ禍によって、時代・文化の大きな分岐点を迎えていると言えます。その「消費行動の変化」「生活様式の変化」の中で、困りごとを抱えている人も多々、存在するようです。今回の記事では「アフターコロナの困りごと」を詳しく見ていき、消費者の間で広がっている新たな商品・サービスのニーズを読み解きます。マーケターの方は、最新の消費者心理をキャッチアップし、ぜひ、新たな事業展開・創出のヒントにしてみてください。
アフターコロナで困っていることは?
[図1]新型コロナウイルス感染拡大によるお困りごと
出典:緊急事態宣言解除後の意識を調査!afterコロナのお困りごとに関する調査|ネオマーケティング
総合マーケティング支援を行なう「ネオマーケティング」は、緊急事態宣言解除後の2020年6月5日(金)~2020年6月8(月)の4日間、20歳以上の男女1000人を対象に「afterコロナのお困りごと」をテーマにしたインターネットリサーチを実施しました。
[図1]はその中から、「新型コロナウイルス感染拡大によるお困りごと」を示したグラフです。具体的に困っていることとして回答が多かったものは以下の3項目でした。
・1位:運動不足(33.8%)
・2位:外出自粛(25.8%)
・3位:金銭面(22.0%)
「運動不足」は、外出自粛期間が長く続いたり、在宅勤務への移行で通勤が無くなった人も多かったため、体を動かす機会が従来より減少し、いわゆる「コロナ太り」に悩まされているのではないかと推測できます。
「外出自粛」に関しては、感染防止の観点から、不要不急の外出を控えたり、ソーシャルディスタンスの確保で人との接触を極力避けるようになり、「親しい人と会食に行けない」「実家の家族に会いに行くのも躊躇する」「休日に百貨店やショッピングモールへ買い物に行きたいが、密を避けようと考えると足が向かない」といったジレンマ、ストレスを抱えていることが伺えます。
「金銭面」では、緊急事態宣言中に休業・出勤停止を余儀なくされた業種などでの収入減、あるいは、求職中だがコロナ禍で企業も新規採用を停止している、といった実情がもたらした困り事だと推測できます。
このように、緊急事態宣言が解除された後もなお、外出自粛期間中の行動制限の余波を色濃く受けたり、新しい生活様式に戸惑いを感じてストレスを感じている人が多いことが伺えます。
コロナ禍に新しく始めたことは?
[図2]緊急事態宣言中に新しく始めたこと
出典:緊急事態宣言解除後の意識を調査!afterコロナのお困りごとに関する調査|ネオマーケティング
続いて、同リサーチ内で「緊急事態宣言中に新しく始めたこと」について問いかけた結果を示したグラフです。
新しく始めたことが「ある」と回答した人は23.5%。その内訳詳細は「お菓子作り」「ガーデニング」「編み物」といった家の中でできる趣味や、「オンライン飲み会」「ゲーム」といった家に居ながらにして楽しめる新たな娯楽、「筋トレ」「ウォーキング」「ジョギング」といった軽いスポーツ、長い在宅時間をこれからの将来に向けて有効活用できる「資格勉強」といった具体的な回答が挙がりました。
「困っていること」=「新たなニーズ掘り起こしのチャンス」
多くの消費者が感じているストレス、困りごとにフォーカスしていくことは、新たなニーズ掘り起こしのチャンスだと捉えることもできます。
前項で述べた「アフターコロナに困っていること」の上位3つは、「運動不足」「外出自粛」「金銭面」でした。
また、それに続いて述べた「緊急事態宣言中に新しく始めたことがある」人は少数派ではありましたが、「外出自粛」「ソーシャルディスタンスの確保」「密を避ける」という状況の中にあってもポジティブな行動を起こし始めた人が少しは居るという点は注目すべき側面です。
その中で
・家に居ながらにして楽しめる趣味をはじめた
・一人でも、家の中や、自宅周辺で手軽にできるスポーツをはじめた
・将来の仕事や独立開業に役立つアクションを起こし始めた
という具体的な消費者の声は、これから需要が高まりそうな業界の萌芽とも言えるかもしれません。
今後需要が高まりそうな業界予測
ではここからは、実際に今後、需要が高まりそうな業界予測について述べていきます。
自宅トレーニンググッズ、スマートウォッチ
緊急事態宣言中に「筋トレ」「ウォーキング」「ジョギング」を始めたという声、その後も運動不足に悩まされている人が非常に多い点を併せて考えると、「自宅トレーニンググッズ」が伸長すると予測できます。
フィットネス機器を多く取り扱う「ショップジャパン」が実施したリサーチによると、
・筋トレに「挫折した」人は約6割。挫折の理由は「面倒くさい」から
・筋トレを習慣化させるために、あったらいいものは「ながら」で使えるエクササイズグッズ "
引用元:【新型コロナウイルス感染症流行前後での運動・筋トレ実態調査レポート】「太った」人は35.9%、中でも「お腹」が85.9%。「運動不足になった」人が61.7%で、習慣的に運動・筋トレする人が増加。|PR TIMES
という結果も明らかになっています。
筋トレを始めたものの、挫折してしまう人が多数。でも、それをアシストしてくれる「ながらエクササイズグッズ」があったらいいな、という消費者の声が見て取れます。
また、セルフトレーニングのお供として、成果を「見える化」してアシストし、モチベーションキープに役立つ「スマートウォッチ」市場も伸長しています。アメリカの調査会社Strategy Analysticsが発表したレポートによると、2020年第1四半期の世界のスマートウォッチ出荷台数は前年同期比20%増に達しているそう。セルフトレーニングに力を入れる人が増えそうだ、と考えると、フィットネス器具と併せて、スマートウォッチ市場の成長も期待できそうです。
参考:新型コロナが影響?スマートウォッチ出荷台数が20%増に|FASHIONSNAP.COM
エフォートレス自炊
アフターコロナにも「外出自粛」で困っている人が多い、という点から、外食を控えて自宅で料理をする機会が引き続き多いと考えられます。また、緊急事態宣言中に、自宅でできる新たな趣味として「料理」に目覚めた、という人もいることでしょう。
そういった観点から、自炊をもっと簡単でラクにする、あるいは、楽しくするための「エフォートレス(がんばらない)自炊」関連商品が伸長しそうだと予測できます。
「エフォートレス自炊」とは、自分で一から栄養バランス、献立を考えて下準備などする手間は不要、という意味です。昨今では、ほんのひと手間かけるだけで料理が完成するように工夫を凝らされた、さまざまなアシストグッズが登場しています。
例えば、「ミールキット」「冷凍食品」「合わせ調味料」「時短調理家電」といった商品が該当します。
「ミールキット」は、Oisixや生協が提供するサービスがよく知られていますが、コロナ禍でその売上は伸長しています。また、家庭用冷凍食品や、チャーハンの素のような「合わせ調味料」も同様に伸長。また、料理プロセスの「時短」をアシストする「ホットプレート」や「電気圧力鍋」も、コロナ禍以降、よく売れているそうです。
参考:アフターコロナ時代の自宅食トレンドは「エフォートレス自炊」“料理はこれ以上がんばれない、でも栄養は気になる” 意識が浮き彫りに|PR TIMES
レストランの味を家庭で手軽に。飲食店の”ミールキット”に注目集まる|DIG-IN
冷凍食品 新型コロナの影響色濃く 家庭用・業務用で明暗|食品新聞
炒飯の素特集:ご飯食急増を下支え メニュー・形態が進化|日本食糧新聞
オンライン会議が増えた影響? いま通販で売れている意外なもの|Yahoo!ニュース
園芸、DIY、掃除
緊急事態宣言中に家でできる趣味として「ガーデニング」を始めた、という回答がありましたが、同様に家の中でできる取り組みとして「DIY」「掃除」にも関心が高まり、ホームセンターには客足が増えています。
DIY用品のECサイトを運営する会社「大都」では、コロナ禍の2020年4月に過去最高の売上を記録。新規顧客の流入も、前年同月比で2割増となり、「外出自粛でDIYに挑戦してみたいと、新たにアクションを起こす人が増えているのではないか」と見ているそうです。
「掃除」に関しては、在宅時間が長いことで「居住空間を快適に保ちたい」「在宅時間が長いので、この際だから大掃除に取り組もう」といった考えから、掃除道具購入目的の客足が増えたと予想できます。また、「掃除」といえば従来は「年末に大掃除をするもの」という流れがありましたが、最近の主婦向けメディアでは「気候の良い夏に大掃除をしよう」と呼びかけている記事もよく目にします。
そのほか、片付けコンサルタントとして世界的なインフルエンサーである近藤麻理恵さんに端を発する「片付けブーム」「断捨離ブーム」の影響も考えられ、「在宅期間が長いから、今こそ掃除、片付けを」と行動を起こしている人も多いのではないでしょうか。
参考:外出自粛によりDIY、園芸、掃除用品の需要が高まり密状態になっている首都圏のホームセンター|DIME
大都、4月の売上は過去最高5億円超に コロナで外壁塗装の需要が急増|日本ネット経済新聞
断捨離、収納、トランクルーム、宅配買取サービス
コロナ禍に「コロナ断捨離」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。先述したように、在宅期間が長いことから、家の中をきれいにしたい、デトックスしたいということで所持品、備蓄品を思い切って整理して捨てる、という行動を起こした人も多いことを示す言葉です。
「断捨離」をすれば、自ずと自宅内の収納スペースを整えようとすることから、収納ケースをはじめとする「収納グッズ」の需要も生まれます。
また、備蓄品を家の外に預ける「トランクルームサービス」もコロナ禍で伸長しています。
そして、家の中を片付けて不用品が出たなら、次はリサイクルショップの買取サービスに依頼しに行こう、という行動が生まれますが、こちらもコロナの影響で非対面取引となる「宅配買取サービス」への関心が高まっています。
Googleの検索ボリュームでは、「宅配買取」「郵送買取」のキーワードがコロナ以前と比較して2倍近くに増え、ブランド品買取で知られる「コメ兵」でも、新規の宅配買取利用者が伸長しているそうです。
参考:過ぎた「コロナ断捨離」に注意?|日本ネット経済新聞
コロナ影響と展望 パルマ、トランクルーム 6月の申込倍増|全国賃貸住宅新聞
宅配買取強化に必要な3つのポイントとは?|リサイクル通信
プチリフォーム(書斎、風通し)
続いて、「住宅リフォーム」への関心が高まっている、という側面も挙げられます。
在宅時間が長くなっていること、さらには、突然の在宅勤務移行を命じられ、落ち着いて業務に集中できる執務スペースの確保に困っている人も多いと考えられます。特に日本の都市部の住宅は狭小住宅が多く、また、欧米などと比較してこれまで在宅勤務があまり進んでこなかったことから、いわゆる「書斎」を持つ人は少ないと言われています。
そこでここへ来て、「自分の書斎を作りたい、在宅勤務に対応できるような住宅にプチリフォームしたい」というニーズが生まれてきているようです。
また、感染予防対策には、「換気」「風通しの良さ」も必要不可欠な観点です。その観点も含め、今、住宅のプチリフォームに関心が高まっていると考えられます。
参考:《アフターコロナ新トレンド予測》テレワークリフォームが増える理由|リフォーム産業新聞
ギグワーク、隙間バイト、副業・兼業
「アフターコロナのお困りごと」の3位に、「金銭面」が挙がっていたことを先述しました。コロナ禍で休業や出社停止を余儀なくされ、突然の収入減に困っている人も多いと考えられます。
そんな中、注目されているのが「隙間バイト」「ギグワーク」と呼ばれる働き方です。こういった新しい働き方は、コロナ禍だから、ということだけでなく、国が推奨する「働き方改革」で「副業・兼業」を推奨する、という側面にも当てはまります。
よってこれからは「副業・兼業」「隙間バイト」「ギグワーク」を求める人、そして、そういった働き口を供給する企業とのマッチングサービスも盛り上がっていくと考えられます。
例えば「隙間バイト」を紹介するサイト「タイミー」の利用者数は2020年6月時点で1,350,000人を突破、導入店舗数は19,000箇所に上ります。利用者数に注目すれば、東京都の人口の9.6%に該当し、都内で10人に1人に近い割合でこの「隙間バイト」に登録している人が存在する、と考えることもできます。
また、クラウドソーシング大手の「クラウドワークス」でも、2020年6月末時点で働き手の登録者数は380万人を見込んでいる、と報じられています。こちらは、在宅での仕事を請け負いたい人が多く登録しているサイトですが、先に紹介した「タイミー」と比較して3倍近くの登録者数を誇り、このことからも「ギグワーク」「隙間バイト」「副業・兼業」「在宅での業務請負」に対して一般の人々が高い関心を寄せていることが伺えます。
参考:これから問われるギグワーカーの価値ーーニューノーマルで変化する人材市場|Yahoo!ニュース
タイミー
「大企業こそ出社文化は必要」 クラウドワークス吉田社長|日経ビジネス
「お困りごと」の深堀りで新たなニーズのヒントを得よう
一般消費者が抱える「afterコロナのお困りごと」とは一体何なのか、というリサーチデータから、「昨今の消費者が抱える課題を解決する新たなニーズとは?」「ニューノーマルに求められる商品・サービスとは?」という論点で読み解きました。
消費者にとって困っていること、ネックになっていることを読み解くことで、新たなニーズの気付きとなり、新規事業創出のヒントにもつながっていきます。企業のマーケターの方はぜひ、アフターコロナの自社の事業展開の参考にしてみてください。
アフターコロナ 時代を紐解く
医療現場も変化!?アフターコロナで注目の新ビジネスたち
新型コロナウイルス感染症の流行によって、私たちの暮らしも大きく変わりました。今までなかなか普及しなかったリモート診療や、オンライン学習などのビジネスサービスもニーズの高まりによって、改めて必要性を見直され、普及しはじめています。 アフターコロナ、withコロナ時代に生まれた新たなビジネスの形とは、一体どのようなものがあるのでしょうか?本記事では、アフターコロナの時代に注目したい新ビジネスを、ご紹介します。
【アフターコロナの世界】ファッション・コスメ業界の販売戦略は?
コロナ流行により大きく変わった私たちの生活。特に、観光業などインバウンドビジネスほどではないかもしれないが、少なからず影響を受けているのがファッションやコスメ業界です。国内外の企業の動向を見ながら、これからのファッション・コスメ業界の生き残り戦略、販売戦略について見ていきましょう。
コロナ禍で投資拡大する第1位は「SNS広告/SNS活用」。マーケティングのこれからを予測
コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言解除後も先行き不透明な状況が続いており、各社のマーケティング活動にも今後さまざまな変化があると推測されています。マーケティング責任者・担当者を対象とした2020年5月実施のアンケート調査の結果では、アフターコロナで投資拡大予定施策の1位が「SNS活用・SNS広告」という結果に。 この記事では、マーケターはこれからの時代、何に注力していくのか、要因や背景を深掘りしていきます。
- マーケティング
- マーケティングとは、ビジネスの仕組みや手法を駆使し商品展開や販売戦略などを展開することによって、売上が成立する市場を作ることです。駆使する媒体や技術、仕組みや規則性などと組み合わせて「XXマーケティング」などと使います。たとえば、電話を使った「テレマーケティング」やインターネットを使った「ネットマーケティング」などがあります。また、専門的でマニアックな市場でビジネス展開をしていくことを「ニッチマーケティング」と呼びます。
- インターネット
- インターネットとは、通信プロトコル(規約、手順)TCP/IPを用いて、全世界のネットワークを相互につなぎ、世界中の無数のコンピュータが接続した巨大なコンピュータネットワークです。インターネットの起源は、米国防総省が始めた分散型コンピュータネットワークの研究プロジェクトARPAnetです。現在、インターネット上で様々なサービスが利用できます。
- オンライン
- オンラインとは、通信回線などを使ってネットワークやコンピューターに接続されている状態のことをいいます。対義語は「オフライン」(offline)です。 現在では、オンラインゲームやオンラインショップなどで、インターネットなどのネットワークに接続され、遠隔からサービスや情報などを利用できる状態のことを言う場合が多いです。
- サイクル
- サイクルとは、スタートしてゴール、そしてまたスタートと、グルグルと循環して機能する状態のことを言います。まわりまわって巡っていく、といった循環機構をさすことが多いです。水の循環サイクルというように、実は繰り返しになってしまう使われ方もすることもしばし。また、自転車に関する事柄として、サイクルスポーツなどという使われ方をされることもあります。
- Googleとは、世界最大の検索エンジンであるGoogleを展開する米国の企業です。1998年に創業され急激に成長しました。その検索エンジンであるGoogleは、現在日本でも展開していて、日本のYahoo!Japanにも検索結果のデータを提供するなど、検索市場において圧倒的な地位を築いています。
- フォーム
- フォームとは、もともと「形」「書式」「伝票」などの意味を持つ英単語です。インターネットの分野では、パソコンの操作画面におけるユーザーからの入力を受け付ける部分を指します。企業のホームページでは、入力フォームが設置されていることが多いようです。
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- クラウドソーシング
- クラウドソーシング(Crowdsourcing)とはcrowd(群衆)とsourcing(業務委託)を組み合わせた造語であり、webサービス上のやり取りで不特定多数の人々に仕事を依頼する新しい雇用形態の一種です。
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