「困っていること」=「新たなニーズ掘り起こしのチャンス」

多くの消費者が感じているストレス、困りごとにフォーカスしていくことは、新たなニーズ掘り起こしのチャンスだと捉えることもできます。

前項で述べた「アフターコロナに困っていること」の上位3つは、「運動不足」「外出自粛」「金銭面」でした。

また、それに続いて述べた「緊急事態宣言中に新しく始めたことがある」人は少数派ではありましたが、「外出自粛」「ソーシャルディスタンスの確保」「密を避ける」という状況の中にあってもポジティブな行動を起こし始めた人が少しは居るという点は注目すべき側面です。
その中で

・家に居ながらにして楽しめる趣味をはじめた
・一人でも、家の中や、自宅周辺で手軽にできるスポーツをはじめた
・将来の仕事や独立開業に役立つアクションを起こし始めた

という具体的な消費者の声は、これから需要が高まりそうな業界の萌芽とも言えるかもしれません。

今後需要が高まりそうな業界予測

ではここからは、実際に今後、需要が高まりそうな業界予測について述べていきます。

自宅トレーニンググッズ、スマートウォッチ

緊急事態宣言中に「筋トレ」「ウォーキング」「ジョギング」を始めたという声、その後も運動不足に悩まされている人が非常に多い点を併せて考えると、「自宅トレーニンググッズ」が伸長すると予測できます。

フィットネス機器を多く取り扱う「ショップジャパン」が実施したリサーチによると、

・筋トレに「挫折した」人は約6割。挫折の理由は「面倒くさい」から
・筋トレを習慣化させるために、あったらいいものは「ながら」で使えるエクササイズグッズ "
引用元:【新型コロナウイルス感染症流行前後での運動・筋トレ実態調査レポート】「太った」人は35.9%、中でも「お腹」が85.9%。「運動不足になった」人が61.7%で、習慣的に運動・筋トレする人が増加。|PR TIMES

という結果も明らかになっています。

筋トレを始めたものの、挫折してしまう人が多数。でも、それをアシストしてくれる「ながらエクササイズグッズ」があったらいいな、という消費者の声が見て取れます。

また、セルフトレーニングのお供として、成果を「見える化」してアシストし、モチベーションキープに役立つ「スマートウォッチ」市場も伸長しています。アメリカの調査会社Strategy Analysticsが発表したレポートによると、2020年第1四半期の世界のスマートウォッチ出荷台数は前年同期比20%増に達しているそう。セルフトレーニングに力を入れる人が増えそうだ、と考えると、フィットネス器具と併せて、スマートウォッチ市場の成長も期待できそうです。

参考:新型コロナが影響?スマートウォッチ出荷台数が20%増に|FASHIONSNAP.COM

エフォートレス自炊

アフターコロナにも「外出自粛」で困っている人が多い、という点から、外食を控えて自宅で料理をする機会が引き続き多いと考えられます。また、緊急事態宣言中に、自宅でできる新たな趣味として「料理」に目覚めた、という人もいることでしょう。

そういった観点から、自炊をもっと簡単でラクにする、あるいは、楽しくするための「エフォートレス(がんばらない)自炊」関連商品が伸長しそうだと予測できます。

「エフォートレス自炊」とは、自分で一から栄養バランス、献立を考えて下準備などする手間は不要、という意味です。昨今では、ほんのひと手間かけるだけで料理が完成するように工夫を凝らされた、さまざまなアシストグッズが登場しています。

例えば、「ミールキット」「冷凍食品」「合わせ調味料」「時短調理家電」といった商品が該当します。

「ミールキット」は、Oisixや生協が提供するサービスがよく知られていますが、コロナ禍でその売上は伸長しています。また、家庭用冷凍食品や、チャーハンの素のような「合わせ調味料」も同様に伸長。また、料理プロセスの「時短」をアシストする「ホットプレート」や「電気圧力鍋」も、コロナ禍以降、よく売れているそうです。

参考:アフターコロナ時代の自宅食トレンドは「エフォートレス自炊」“料理はこれ以上がんばれない、でも栄養は気になる” 意識が浮き彫りに|PR TIMES
レストランの味を家庭で手軽に。飲食店の”ミールキット”に注目集まる|DIG-IN
冷凍食品 新型コロナの影響色濃く 家庭用・業務用で明暗|食品新聞
炒飯の素特集:ご飯食急増を下支え メニュー・形態が進化|日本食糧新聞
オンライン会議が増えた影響? いま通販で売れている意外なもの|Yahoo!ニュース

園芸、DIY、掃除

緊急事態宣言中に家でできる趣味として「ガーデニング」を始めた、という回答がありましたが、同様に家の中でできる取り組みとして「DIY」「掃除」にも関心が高まり、ホームセンターには客足が増えています。

DIY用品のECサイトを運営する会社「大都」では、コロナ禍の2020年4月に過去最高の売上を記録。新規顧客の流入も、前年同月比で2割増となり、「外出自粛でDIYに挑戦してみたいと、新たにアクションを起こす人が増えているのではないか」と見ているそうです。

「掃除」に関しては、在宅時間が長いことで「居住空間を快適に保ちたい」「在宅時間が長いので、この際だから大掃除に取り組もう」といった考えから、掃除道具購入目的の客足が増えたと予想できます。また、「掃除」といえば従来は「年末に大掃除をするもの」という流れがありましたが、最近の主婦向けメディアでは「気候の良い夏に大掃除をしよう」と呼びかけている記事もよく目にします。

そのほか、片付けコンサルタントとして世界的なインフルエンサーである近藤麻理恵さんに端を発する「片付けブーム」「断捨離ブーム」の影響も考えられ、「在宅期間が長いから、今こそ掃除、片付けを」と行動を起こしている人も多いのではないでしょうか。

参考:外出自粛によりDIY、園芸、掃除用品の需要が高まり密状態になっている首都圏のホームセンター|DIME
大都、4月の売上は過去最高5億円超に コロナで外壁塗装の需要が急増|日本ネット経済新聞

断捨離、収納、トランクルーム、宅配買取サービス

コロナ禍に「コロナ断捨離」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。先述したように、在宅期間が長いことから、家の中をきれいにしたい、デトックスしたいということで所持品、備蓄品を思い切って整理して捨てる、という行動を起こした人も多いことを示す言葉です。

「断捨離」をすれば、自ずと自宅内の収納スペースを整えようとすることから、収納ケースをはじめとする「収納グッズ」の需要も生まれます。

また、備蓄品を家の外に預ける「トランクルームサービス」もコロナ禍で伸長しています。

そして、家の中を片付けて不用品が出たなら、次はリサイクルショップの買取サービスに依頼しに行こう、という行動が生まれますが、こちらもコロナの影響で非対面取引となる「宅配買取サービス」への関心が高まっています。

Googleの検索ボリュームでは、「宅配買取」「郵送買取」のキーワードがコロナ以前と比較して2倍近くに増え、ブランド品買取で知られる「コメ兵」でも、新規の宅配買取利用者が伸長しているそうです。

参考:過ぎた「コロナ断捨離」に注意?|日本ネット経済新聞
コロナ影響と展望 パルマ、トランクルーム 6月の申込倍増|全国賃貸住宅新聞
宅配買取強化に必要な3つのポイントとは?|リサイクル通信

プチリフォーム(書斎、風通し)

続いて、「住宅リフォーム」への関心が高まっている、という側面も挙げられます。

在宅時間が長くなっていること、さらには、突然の在宅勤務移行を命じられ、落ち着いて業務に集中できる執務スペースの確保に困っている人も多いと考えられます。特に日本の都市部の住宅は狭小住宅が多く、また、欧米などと比較してこれまで在宅勤務があまり進んでこなかったことから、いわゆる「書斎」を持つ人は少ないと言われています。

そこでここへ来て、「自分の書斎を作りたい、在宅勤務に対応できるような住宅にプチリフォームしたい」というニーズが生まれてきているようです。

また、感染予防対策には、「換気」「風通しの良さ」も必要不可欠な観点です。その観点も含め、今、住宅のプチリフォームに関心が高まっていると考えられます。

参考:《アフターコロナ新トレンド予測》テレワークリフォームが増える理由|リフォーム産業新聞

ギグワーク、隙間バイト、副業・兼業

「アフターコロナのお困りごと」の3位に、「金銭面」が挙がっていたことを先述しました。コロナ禍で休業や出社停止を余儀なくされ、突然の収入減に困っている人も多いと考えられます。

そんな中、注目されているのが「隙間バイト」「ギグワーク」と呼ばれる働き方です。こういった新しい働き方は、コロナ禍だから、ということだけでなく、国が推奨する「働き方改革」で「副業・兼業」を推奨する、という側面にも当てはまります。

よってこれからは「副業・兼業」「隙間バイト」「ギグワーク」を求める人、そして、そういった働き口を供給する企業とのマッチングサービスも盛り上がっていくと考えられます。

例えば「隙間バイト」を紹介するサイト「タイミー」の利用者数は2020年6月時点で1,350,000人を突破、導入店舗数は19,000箇所に上ります。利用者数に注目すれば、東京都の人口の9.6%に該当し、都内で10人に1人に近い割合でこの「隙間バイト」に登録している人が存在する、と考えることもできます。

また、クラウドソーシング大手の「クラウドワークス」でも、2020年6月末時点で働き手の登録者数は380万人を見込んでいる、と報じられています。こちらは、在宅での仕事を請け負いたい人が多く登録しているサイトですが、先に紹介した「タイミー」と比較して3倍近くの登録者数を誇り、このことからも「ギグワーク」「隙間バイト」「副業・兼業」「在宅での業務請負」に対して一般の人々が高い関心を寄せていることが伺えます。

参考:これから問われるギグワーカーの価値ーーニューノーマルで変化する人材市場|Yahoo!ニュース
タイミー
「大企業こそ出社文化は必要」 クラウドワークス吉田社長|日経ビジネス