新型コロナウイルスで、新しい生活様式や行動の変化が進むとともに、アプリでの消費行動も変わり、可処分時間のなかでモバイル(アプリ)の占める割合はこれまで以上に増加しています。その中でも、Z世代(16〜24歳の若年層、Generation Z)と呼ばれる若年層は、子どもの頃からデジタルデバイスに親しみの持っている世代であり、特徴、価値観も他の世代とは異なるものを持っています。

今回は、Z世代がよく利用する「モバイル」に注目し、App Annie が提供するモバイル市場データから、新型コロナの影響を含めてZ世代の消費動向を解説します。

新型コロナで急増したモバイルの利用と日本における変化

アプリの世界は、新型コロナウイルスによる各国でのロックダウンや外出自粛を受け、2020年上半期に640億を突破し、2019年下半期から10%、2019年上半期から5%増加する結果となりました。コロナ禍で生活自体が変化する中で、消費者は、日常のコミュニケーションをする、エンターテインメントを楽しむ、わからないことを調べるといった生活のあらゆるところで、以前にも増してスマホアプリを利用する傾向にあります。
appannie1.png 出典:App Annie Japan 株式会社

また、消費支出(サブスクリプション、アプリ内課金を含むアプリでの収益)でも、2020年上半期に500億ドル(日本円で約5兆4千億円)を超え、2019年下半期比で10%増加しました。

さらに、2020年4月のダウンロード数急増を受け、2020年5月には過去最高額を記録しました。消費支出額の増加は、消費者がアプリをこれまで以上に利用しているということだけでなく、モバイルサービスに価値を見出していることを示しています。

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日本におけるダウンロード数と消費支出の変化を見ると、2020年上半期で大きな成長を見せています。ゲームも非ゲームのダウンロード数、収益額共に成長をしており、特に非ゲームの成長率が高いことがトレンドです。

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カテゴリ別に見ると、日本のアプリダウンロード数は、メディカルカテゴリが大きく飛躍しました。続いて、ビジネス、教育カテゴリーがダウンロード数を伸ばしました。消費支出においては、ニュース&マガジン、エンターテインメント、教育、写真&ビデオカテゴリが大きな成長を見せました。

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モバイルの利用時間は年々増えていますが、コロナ禍で、可処分時間はこれまでに増してさらにモバイルに費やされる結果となりました。日本人は、1日のうち平均3時間36分の時間、モバイル(スマートフォン)を使っています。モバイルの利用時間は、新型コロナ影響で大きく増加しましたが、これからも年々伸び続けることとなるでしょう。

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新型コロナウイルスで変わった消費者動向の変化についての詳細は、こちらのレポートでもまとめています。

Z世代のモバイル利用傾向とは?

Z世代における、ゲーム/非ゲームアプリの利用傾向を見ていきましょう。

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Z世代におけるゲームアプリのダウンロード数は2020年3〜5月にかけて増加しているものの、6月に急落していることがわかります。要因としては、2020年3〜5月の急増は、広告収益型のカジュアルゲームと特定のゲームアプリが成長をけん引したことが予測されます。一方で、新型コロナ以前の2019年からダウンロード数が増加しているカジュアルゲームは、Z世代を中心に浸透しており、ゲーム全体の中では注視が必要なジャンルとも言えるでしょう。

消費支出においては、2020年5〜6月にかけて増加し、グローバルのトレンドと同じく、最高潮に達しています。2020年 3〜4月に収益が微増な理由は、広告収益型のカジュアルゲーム、特定のゲームの成長の影響が高く、2020年5〜6月に課金系ゲームの収益が増加を見せました。これには、Z世代のゲーム利用急増が影響している可能性が高く、Discord、Mirrativ、Mildomなどゲームライブ配信ができるアプリも含めて注視が必要だと言えるでしょう。

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非ゲームアプリでは、ダウンロード数は3〜5月にかけて増加し、6月にはいったん落ち着いていることがわかります。3〜5月の間は、外出自粛や緊急事態宣言の影響による巣ごもり需要での急増、また、ビデオ会議アプリなどのアプリが成長をけん引しています。

収益は2019年1月から見た場合、着々と増加傾向が見られ、2月以降、新型コロナをきっかけに一気に加速しています。ソーシャル系アプリ、動画・漫画といったような巣ごもり需要の影響を大きく受けるアプリ、マッチング系アプリが成長をけん引し、全体でも、Z世代の利用増加が後押ししている様子が見受けられます。

異なる傾向を見せるZ世代のモバイル利用、他の世代とZ世代の比較

コロナ禍におけるZ世代の傾向を見るために、Z世代の間でユーザー数を伸ばしたアプリをカテゴリー別に推移を見てみましょう。

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Z世代では、全体的にユーザー数を伸ばし、その中でも特に、ソーシャルアプリ、エンターテインメントアプリが3〜5月にかけて著しく増加しました。ゲームアプリの利用は伸びてはいるものの、6月にかけてゆるやかに下落傾向にあります。緊急事態宣言での休校措置などを受け、教育アプリは4月以降で急増しています。また、ヘルスケア、ファイナンスは、例年通り横ばいで推移しています。結果、Z世代では、ユーザー数月平均成長率2.92%を記録しています。

一方、25歳〜44歳の世代を見てみると、Z世代とは違う傾向が見受けられます。

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25歳〜44歳の世代では、ショッピングアプリ(ECやC2Cのフリマ)の利用者が増加しており、この世代では、アプリカテゴリ全体の中でショッピングアプリの利用が最も大きいシェアを占めています。エンターテインメントアプリは巣ごもり需要の影響で増加を見せるものの、ゲームアプリは大きな変化はなく、ほぼ横ばいで推移しています。

アプリの利用時間をZ世代と25歳〜44歳の世代で比較すると、Z世代の消費時間の月平均成長率は25歳〜44歳の世代の2.7倍となっています。

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Z世代においては、2020年3月に前月比で30%(カテゴリ全体)の急増を記録しています。

3月以降、春休みや緊急事態宣言による休校延長の影響も受け、時間消費が加速したことが予測されます。また、エンターテインメントアプリ(動画視聴など)はコロナ前後で2倍近い変動を見せています。教育アプリは利用者数が伸びたこともあり、2020年5月は2月比較で4.5倍と、時間消費が増加しています。

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25歳〜44歳の世代では、2020年3月に前月比で12%(カテゴリ全体)の増加を記録しています。中でも、ソーシャルアプリは2020年4月に125%増加(2月比)し、メッセージ系、オンライン繋がり系のアプリが成長をけん引しています。また、巣ごもり需要により、エンターテインメントアプリ(動画ストリーミングアプリ)も増加しました。

成長が大きく見られたゲーム、エンターテインメント、ソーシャルアプリでどのようなアプリが台頭したかを見ていきましょう。

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ゲームアプリにおいても、Z世代と25歳〜44歳の世代では使うアプリに違いが見られます。

Z世代では、3〜5月にかけてゲームの利用が約115%成長(前月比成長の平均)しました。カジュアルゲーム、「どうぶつの森 ポケットキャンプ 」などの任天堂発のゲームも大きな影響を与えていますが、「荒野行動」「Identity V」などのコアゲームが人気を博して利用数値を押し上げています。

一方で、25歳〜44歳の世代では、ゲームの利用状況は新型コロナ影響を受けておらず、むしろ微減しています。GW期間前後に「ポケモンGO」の利用が増えたことが要因となり、5月に総時間が増加しました。

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エンターテインメントアプリでは、両世代共通して、Netflix、Hulu、Amazon Prime Videoなどの動画ストリーミングアプリの利用が伸びました。

Z世代においては、3〜4月にTikTok など無料配信系のアプリが、一気に新規ユーザー獲得を行い、その後、新型コロナの長期化により徐々に課金層が増え、利用も増加したと推察されます。

また、Z世代が利用する特有のアプリとして、Twitcasting(ツイキャス)や、お絵かきアプリのアイビスペイントが挙げられます。

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ソーシャルアプリでも、世代により使うアプリに変化が見られました。

Z世代では、3月のアプリ総時間は約130%成長(前月比成長の平均)しました。特に、チャット系のLINE、Discordといったようなアプリは、3月に約130〜140%で利用時間が拡大(前月比成長の平均)し、Zenlyに至っては約155%で急拡大し、上記グラフ(青線)のように全体を押し上げる結果となりました。地図上で新型コロナウイルスの拡散状況を可視化できる機能「コロナウイルス・レンズ」をリリースしたことが急拡大の要因と予測されます。

こうしたことから、コロナ禍では、Z世代が「人との繋がり」を意識していたと言えるでしょう。

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25歳〜44歳の世代も、2020年3月〜4月にかけて総時間が増加し、115%の成長(前月比成長の平均)を記録しました。

しかし、アクティブユーザー数の成長は5%未満(前月比成長の平均)の微増に留まり、新しいサービスを利用ではなく、LINE、Facebookなど既にインストールしているアプリへの時間消費が多く見られました。

Z世代のモバイル利用から見る、消費動向とニーズを探る

Z世代は、その他の世代と異なる消費行動をしていることがモバイルの利用状況から見てとることができたかと思います。他の世代でうまくいっていた戦略では、Z世代にアプローチすることはできず、戦略自体を変える必要があるでしょう。

例えば、「若年層」を一括にするのではなく、ミレニアル世代、Z世代と若年層を定義しながら、Z世代がどのようなサービスを好み、どのような行動をしているのかをタイムリーなデータ(ファクト)から分析することで、マーケティングや商品企画、新規事業など、事業の成功角度を上げていくことができるでしょう。