新しく会社やサービスを立ち上げる時に、事業内容や仕組みづくりなど、大切な要素は様々あります。その中でも重要なのが、"カスタマー"と"サービス"をつなげる役割を担っている*「ロゴ」*です。

ロゴによってサービスの印象が決まるだけではなく、ロゴが覚えやすいものであればサービスを使ってもらえる頻度も高くなる可能性さえあります。
しかし、会社やサービスを立ち上げる時には、どうしてもロゴのデザインは後回しになりがちです。

そこで今回は、会社やサービスの顔となる「ロゴ」のデザインの詳しい手順と、ロゴを制作する上で気を付けるべき注意点を徹底解説していきます。
ロゴは、会社やサービスが拡大しても5年、10年と使っていく大切な役割を担います。ぜひ、詳しい手順や注意点を確認していきましょう。

ロゴデザインの3パターン

具体的なロゴの制作手順を見ていく前に、ロゴデザインのパターンを確認していきましょう。

ロゴデザインには、大きく分けて次の3種類に分類することができます。

1. アイコンパターン

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アイコンパターンは、ロゴアイコンだけでそのブランドを表している場合のパターンです。
上記で例えていうと、水色の鳥のシルエットを見ればtwitterだと認識したり、リンゴのマークが付いているだけでApple製品だと認識したりと、ロゴマークを見るだけでブランドを認識することができます。

2. タイポグラフィパターン

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タイポグラフィパターンとは、文字のデザイン自体がロゴになっているものです。
上記の例だと、コカ・コーラという文字のフォントがユニークで、逆にこの文字全体の形からコカ・コーラをイメージしてしまいます。下段中央のドトールがコーヒー豆をモチーフにしているように、扱っている商材をデザインの中に取り込んでいるものもあります。

ゴシックを使うのかセリフを使うのか、直線的なのか曲線が多いのかなど、使用するフォントの種類やスタイルによってもイメージが大きく変わります

3. アイコン+文字パターン

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ロゴマークと文字がセットで1つになっているパターンをアイコン+文字パターンと呼びましょう。アイコンだけではイメージ喚起されない場合にも、文字があればそのブランドだと認識することができます。ただし、文字部分は先ほどみたタイポグラフィパターンと違って、必ずしも装飾がされていない場合もあります。

ロゴのデザインを行う5つの手順

ここまで、既存のブランドを3つにわけた場合のパターンについて見ていきました。パターン別に見ると、アイコンだけなのか、文字を添えてあるのかだけでも大きく印象が変わってきます。

ロゴが与えるイメージは非常に強力です。
例えば、ネットオークションを見てみると、スターバックスのロゴマークが付いているタンブラーは、無地のタンブラーよりも高値で取引されていることがわかります。DEAN & DELUCAのロゴが付いたトートバックは、無地のトートバックよりも人気があります。これらから共通していえることは、ユーザーはそのブランドが大好きで、所有していたり身につけているだけで自分の価値も上がると考えています。

大切なのは、3つのパターンを押さえた上で、*「自分の会社やサービスはどんな印象を持たれたいのか?」*を考えることです。せっかくだったら、そのブランドを表すだけではなく、その先にある価値まで生み出すようなロゴデザインにしたいですよね。

それでは、ロゴが与えるイメージの重要性を念頭に置きながら、ロゴのデザインの手順を確認してみましょう。

1. テーマを決める

まずは、テーマを決めます。テーマとはまさしく、*「自分の会社やサービスはどんな印象を持たれたいのか?」*のことです。

このテーマ出しは非常に重要です。例えば、新しく喫茶店を作ろうと思った時に、*「昭和の古きよき時代を感じさせる純喫茶」なのか「若い人でも気軽に入りやすいモダンなカフェ」*なのかで随分イメージが変わってきます。もちろん純喫茶であれば渋めの配色になるでしょうし、モダンなカフェであればビビッドでポップなデザインになるかもしれません。

2. コンセプトを決める

テーマ出しができたら、今度はコンセプトを決めていきましょう。コンセプトとは、「創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点」と定義されますが、わかりやすく言えばロゴの全体像です。

コンセプトは、テーマに比べると抽象的な言葉がたくさん出てくるでしょう。先ほど例として出した「昭和の古きよき時代を感じさせる純喫茶」であれば、*「渋い」「懐かしい」「下町っぽい」「でもスタイリッシュ」*などの言葉が出てくるでしょう。こうしたコンセプトが軸となれば、これからロゴを作る時の大きな方向性となります。

3. モチーフを決める

次に、モチーフを決めていきます。モチーフとは、構成する要素の方向性となる題材のことです。

先ほどのカフェの例でいえば、「昭和の古きよき時代を感じさせる純喫茶」を表現するために、サイフォンレコードプレイヤーをイメージしたロゴを作ってみよう、といった具合です。

ロゴのポータルサイト・logo stockに掲載されている川崎市のロゴを見てみましょう。

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▲ 川崎市のロゴ

川崎市のロゴのモチーフは、川崎市の*「川」*という字です。これだけ見てもかなり印象的です。

川崎市のロゴは、光の三原色(RGB)にちなんだ配色になっています。「光の三原色はどんな『色』にもなれる」ということで、市民一人ひとりの多様性や自由を表しているそうです。一人ひとりが自由に色を混ぜ合わせていくことができる、そんな思いも込められています。

4. タイポグラフィを決める

文字を入れる場合には、どういう文字のスタイルや文字組みにするのか、タイポグラフィを決めていきます。

タイポグラフィも非常に重要な要素で、どんなフォントを使うのかだけでもイメージが変わってきます。例えばあなたが焼肉屋さんを始めたい時、あるいはカフェを開業したい時、次のどのフォントを選びますか?

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おそらく、あなたが選んだ「炭火焼肉」の文字と「カフェラテ」の文字の種類は違いましたよね?それは、タイポグラフィによって与える印象が大きく変わるからです。

タイポグラフィを決める際に、何となく決めるのはよくありません。先ほど出したコンセプトに合致するようなタイポグラフィにすることが、一貫性のあるロゴデザインにするために重要です。

5. カラーリングを決める

最後に、ロゴの配色を決めていきます。色によって与える印象は大きく変わるので、色を使い過ぎてはいけません。ロゴを作成する時の配色は、1色から2色にするのがいいでしょう。3色の場合には、先ほど見た川崎市のロゴの例のように、赤・緑・青などバランスの取れた色をチョイスするようにしましょう。

ロゴデザインを行う時の7つの注意点

ロゴを作成する時に、意外にも盲点となる注意点があります。

1. ベジェ曲線で作成する

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ロゴを作成する時には、ベジェ曲線で作成してください。ベジェ曲線とは、端的にいえば数式化した曲線データのことです。

ロゴはホームページや印刷物、看板など、あらゆる場面で使われます。通常のペイントソフトでは、一つひとつの点(ピクセル)に色を塗っていきますが、拡大すると荒くなってしまうという難点があります。ベジェ曲線で作成すると、点と点の間に自動で綺麗な線を描くことができるのでガタガタすることがなくなります。

Adobe製品を使うのであれば、PhotoshopではなくIllustratorを使ってください。Photoshopではピクセルの編集を行いますが、Illustratorで作ったデータはベジェ曲線データなので拡大・縮小しても綺麗に表示されるからです。

参考:ベジェ曲線は怖くない!自在に扱うための4ステップ

2. モノクロ化しても認識できるように作る

先ほどロゴデザインのカラーリングについて見ていきましたが、Wordをはじめとしたオフィス文書などでは白黒印刷されることもあります。その時に、モノクロでも認識できるようなデザインになっているかを確認しておきましょう。

3. 色を使いすぎない

ロゴのテーマカラーが多過ぎると、ロゴの印象が薄くなってしまいます。コカ・コーラなら赤、アマゾンならオレンジ、マクドナルドなら黄色、サイバーエージェントなら黄緑、という具合に、ブランドと色が1対1で対応するくらいが理想です。今から作るロゴの配色が何色もあれば考え直したほうがいいでしょう。

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▲ カラフルにする場合には彩度・明度などを合わせてバランスよく

ただし、配色ルールに乗っ取っていれば、バランスよくカラフルにするパターンも存在します。カラフルにすると、多様性をイメージさせることができます。その場合には彩度や明度などを合わせてバランスよく使うことが重要です。

4. 流行にとらわれない

ロゴを作成する時には、流行にとらわれ過ぎてはいけません。なぜなら、ロゴとはこの先10年、20年と使っていく場合のほうが圧倒的に多いからです。時代に合わせてロゴデザインをリニューアルすることもありますが、そのたびに新しいロゴデザインを定着させるのは大変なことです。競合の会社やサービスのロゴデザインも気になるでしょうが、あくまでも参考程度に留めておきましょう。

5. あらゆる場面で使われることを意識する

ブランドが有名になればなるほど、ロゴは一人歩きします。知らないうちにメディアで取り上げられていたりして、自社媒体以外のところで使われる可能性すら出てきます。そのことを留意しつつデザインしていきましょう。

6. 著作権・商標権に注意する

既存のロゴデザインの著作権・商標権に注意しましょう。

著作権は、ロゴマークはもちろん、イラストモチーフ、文章、音楽などの著作物を制作した人が持つ権利で製作者の権利と財産を守るための権利です。
商標権は、商標法で認められている権利で、登録した商標(トレードマーク)を日本国内で独占的に使用することができるようになるものです。商標権に関しては、商標登録をしないままだと、後から競合に登録をされてしまった場合、そちらに権利が奪われてしまうことがあります。

また、フォントを使用したロゴデザインの場合には、商用利用可能かをチェックしておく必要があります。フォント自体は第三者の著作物にあたるので無断で商用利用をしてはいけません。明示されていない場合には、フォントの作者に許可を取ることをオススメします。

7. ロゴのガイドライン・レギュレーションを決める

ロゴは、ブランドそのものやブランドの世界観を示すものです。そのため、他人にロゴの使用を認める場合には、どのような範囲でなら使用してもいいのか、ロゴのガイドライン(使い方)やレギュレーション(禁止事項)を決めておいたほうがいいでしょう。

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▲ DeNAのロゴガイドライン

例えば、株式会社DeNAのロゴガイドラインページでは、ロゴを使う時の配色や、ロゴの周りに余白を設けるというルールなどがしっかりと決められています。

このように、事前にガイドラインやレギュレーションを決めておけば、他者がロゴを使ったとしても、伝えたい意図を保持したまま利用してもらうことができます。

まとめ

以上、ロゴを作るための5つの手順7つの注意点を解説しました。

・どんな手順でロゴを作ればいいかわからない
・ロゴ作成時に気をつけるべきことがわからない
・ザックリとしかロゴを作ったことがない

そんな場合に、もう一度この記事を読み返して、ポイントを整理してみてください。

しっかりとテーマやコンセプトを決めて、世界でたった一つの素敵なロゴを作りましょう。