メールマーケティングにおいて注意したいことの1つに「迷惑メール」だと判別され、通常どおり受信できずメールが迷惑メールフォルダ行きになってしまうこと、があります。

メールが届かない、メールが届かない……と思っていたら、迷惑メールフォルダにあった!という経験をされたことがある方も多いのではないでしょうか。
  
メールマーケティングを行う上で、たとえどんなに戦略的に組み立てられたメールだとしても、迷惑メールフォルダに振りわけられてしまっては元も子もありません。メールは、相手に届かなければ意味がないのです。そう考えると、メールマーケティングの最大の壁、それは迷惑メールか否かを判断する「フィルタ」にあるのかもしれません。

そこで今回は、迷惑メールフィルタに嫌われないために知っておくべきお作法をご紹介します。

ここで学ぶことはただ1つで、何故あなたのメールが迷惑メールフィルタに"無礼なメール"だとして振りわけられてしまったのかについてです。そのポイントをわかりやすく解説します。

迷惑メールと判定されるメールとは?

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まず前提として、きちんと認識しておかなければならないのが「迷惑メールフィルタだって無闇やたらにメールを拒否しているわけではない」という事実です。迷惑メールフィルタも自らの役割である、"悪質で無礼なスパムメールおよびスパマー(迷惑メール配信者)を排除している"だけに過ぎません。

そのため、迷惑メールフィルタに嫌われないようにするためには、まずは無礼者である迷惑メールの特徴を知る必要があります。

ここで言う"スパマー"がメールを配信する目的は様々です。配信そのものを行うことで報酬を得ている場合もありますし、配信することで今も使われているメールアドレスを再リスト化し、それを販売しているケースもあります。

ただし、如何なる場合でも「非合法に手に入れた雑多な配信リストに向けて、大量に配信をする」という大きな特徴があります。そのため、スパマーと間違われないためには迷惑メールについて理解を深めることが必要です。
  

ここからは、スパマーの特徴や迷惑メールそのものについて知っておきたい情報をピックアップして紹介します。
  

メールを確実に届けたい!迷惑メール判定されないための"4つのお作法"  

お作法その一:配信リストは常にキレイにする

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スパマーは様々な手段でメールアドレスを入手します。リスト業者から購入する場合もあれば、Web上に公開されているアドレスを拾う場合もありますし、プログラムをハッキングして入手する場合もあります。また、あり得そうな文字列の組合せを全て試すなんていう力技を使う場合もあります。

このようにして得たメールアドレスは多くの存在しない「無効なメールアドレス」を含んでいます。そのため、メール配信した結果、「failure notice」などと言った大量のエラーメールが返ってくることになります。使われていないメールアドレスに大量に配信するような行為は無意味なメール配信であり、非常に無礼です。

弊社の経験では、一斉配信したうちの10%以上がエラーメールとして返ってきているような配信リストは迷惑メールフィルタに嫌われやすいようです。

そのため配信リストに使用するメールアドレスは、オプトイン(メール配信の許諾)が取れている「有効なメールアドレス」を使用するのはもちろんの事、利用中に「無効なメールアドレス」になったものついても適宜クリーニングし、なるべくエラーメールの返らない配信リストを作成することが大事です。

しばらく使っていなかった配信リストでどれだけのメールアドレスが「無効」になってしまったかわからない場合は、1時間に100通ずつなど小わけにして配信し、徐々に配信リストをキレイにしていった後で一斉配信リストとして使用するようことをオススメします。
  

知ってるとトクをするポイント「1」

エラーメール = 無効なメールアドレス ではない?

相手サーバからエラーメールが届いたメールアドレスが全て「無効なメールアドレス」ではありません。エラーメールには"エラーになった理由が記載"されていますが、その中には何らかの理由で一時的に受け取れていなかったという場合もあります。

エラー例

Mail quota exceeded:
受信ボックスの容量がいっぱいです。(受信ボックス内のメールを削除すれば受け取れる)

Service unavailable:
なんらかの理由で相手サーバが機能していません(サーバの復旧後受け取れる)

こういったエラーの場合は、次回の送信時は送れる場合もあります。
エラーが返ってきたからと言ってすべてを配信リストから削除する必要はありません。
  

お作法その二:レンタルサーバから送信しない

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スパマーは、自分たちで迷惑メール送信用のサーバを用意することもありますが、現在は他人のメールアドレスのパスワードを盗んだり、プログラムの脆弱性をついてサーバを乗っ取るなど、第三者を踏み台にする方法が主流です。

これら乗っ取られた側のサーバからメールの大量送信が実行されることで、そのサーバのIPアドレスがブラックリストとして全世界に共有されます。そして、迷惑メールフィルタは、このブラックリストを常にチェックしているのです。

日常のメールの送受信に、共用のレンタルサーバを使用している企業も多いかと思います。しかし、レンタルサーバは1サーバ1IPアドレスが一般的ですので、もし誰かが大量配信をしてしまい、そのIPがブラックリストに登録されてしまうと同じサーバを共有している全員が影響を受けることになります。

そのため、普段使うサーバを使用しての大量のメール配信はタブーであることをご認識ください。※そもそもレンタルサーバ側の規約で禁止されているはずです
  

知ってるとトクをするポイント「2」

ブラックリストに登録されてしまったら?
ブラックリストの管理団体は多数あり、残念ながら誤登録が多いのも事実です。正当な配信をしていたのに、ブラックリストに登録されてしまった場合は、解除申請が必要です。ブラックリストの管理団体としては、以下の団体があります。

有名な"ブラックリストの管理団体"

・SPAMHAUS:
https://www.spamhaus.org/lookup/

・SPAMCOP:
https://www.spamcop.net/

・Barracuda:
http://www.barracudacentral.org/rbl/removal-request

解除申請を行うと、通常は1日~1週間ほどで解除されます。
  

知ってるとトクをするポイント「3」

クラウド型のメール配信システムを使っている場合は?
クラウド型のメール配信システムを利用する場合は、ブラックリストのチェックと解除はサービスに含まれていることが普通ですので、それほど気にすることはありません。また、多くのメール配信システムでは複数のIPアドレスに分散しての配信を行っているので、ブラックリストに登録をされたとしても影響は最小限になるよう設計されています。
  

お作法その三:きちんと名乗る

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皆さんは「なりすましメール」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?

これはメールの差出人(Fromアドレス)が偽装されているメールの事を指します。今回詳細を記載しませんが、実はFromアドレスを詐称することは非常に簡単です。

例えば最近も、Fromアドレスを実在する有名企業のメールアドレスを使用した標的型メールが話題になっているのは記憶に新しいのではないでしょうか?これらのメールは実際にその企業が使用しているサーバからメールが送られているわけでは無く、多くの場合Fromアドレスを詐称して送信されています。

そのため、メールを送信する側としては「このメールはちゃんとした送信サーバを使って送っており、詐称されていませんよ」と証明することが重要であり、そのための仕組みをSPFと言います。

SPF (Sender Policy Framework)とは、 電子メールの送信元ドメインが詐称されていないかを検査するための仕組みです。 SPFの仕様は、RFC 4408で定められています。
インターネットでメール送信に使用されるプロトコルであるSMTP (Simple Mail Transfer Protocol)は、 差出人のメールアドレス(Fromアドレス)を自由に設定することが可能です。 このため、送信元を偽った「なりすましメール」を簡単に送ることができてしまい、 これが迷惑メールに利用されてきました。
SPFは、こうしたメールアドレスにおけるなりすましを防ぐための技術の一つで、 DNSを利用するのが特徴です。 ドメインをSPFに対応させるには、 そのドメインのゾーンデータにSPFレコードという情報を追加します。 SPFレコードには、 そのドメイン名を送信元としてメールを送ってもよいサーバのIPアドレス等を記述します。
引用元:一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンター

とは言っても、メールを送るために送信サーバを自社で持ちましょう、という話ではありません。メールには「このメールはどこから発信され、どこを経由しあなたに届いたのか」という情報が記載されています。これをメールヘッダ情報と言います。
  
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迷惑メールフィルタは、この中に記載されているFromアドレスに使用しているドメインyamada@example.comの場合「example.com」の部分がドメインです)のIPアドレスと送信元のIPアドレスをチェックすることで、メールが詐称されていないのかチェックしています。

Fromアドレスで使用しているドメインに、メール送信に使用するサーバのIPアドレスの情報を設定することでSPFの設定は完了です。

また、SPFのほかに「DKIM」という仕組みもあります。
DKIMとは、送信メールに電子署名を付けることで、「改ざんされたメールではない」と証明する技術です。迷惑メールフィルタは、電子署名をチェックすることでメールが偽装されていないのかチェックをします。DKIMの設定方法は「第三者署名」と「作成者署名」の2種類があり、セキュリティ強度的には「作成者署名」の方が強度は高いのですが、若干技術的な難易度も高くなります。

「SPF」も「DKIM」も、クラウド型のメール配信システムを利用している場合は、提供会社の方でマニュアルを用意していると思いますので、詳細については問い合わせてみることをオススメします。
  

お作法その四:セキュリティを確保する

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最後のお作法は、「セキュリティの確保」です。
インターネットの安全性を高める動きは、近年特に活発になってきています。例えば、最近では、https通信(暗号化通信)に対応していないWebサイトについては、ブラウザで警告が表示されるようになりました。

ちなみに同様に、メールについても警告が出るようになったのをご存知でしょうか?

以下はある企業からのメールをGmailで見た時の画面なのですが、画面上の赤く開いた鍵の部分にカーソルを合わせると、「暗号化されていない」という警告が出ます。
  
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メールの暗号化方式はいくつかあるのですが、一般的には「STARTTLS」という通信方式が使われます。メール通信の暗号化はそれほど一般的ではありませんが、今後はどんどん普及していくものと思われます。

こちらについても多くのメール配信システムでサポートされています。