株主向けに発信するIRは、企業にとって重要な情報発信の1つであり、安定した企業運営や資金の調達のためには欠かせない要素でしょう。

IRでは、偽りのない財務情報の公開といった説明責任だけでなく、多数のステークホルダーに向けた社会的責任も求められます。
ですが、財務情報以外にどういった情報発信を行えば、より株主に評価されるのか悩んでしまう担当者もいるでしょう。

今回は、IR優良企業の特徴とWebを活用したIRのポイントを解説します。
自社のIRに活かせるよう、まずは他社の事例を参考にしてみましょう。

参考:
IR行動憲章「基本姿勢と実行の手引き」【統合版】

IR優良企業賞受賞5社のIR事例

一般社団法人日本IR協議会では毎年「IR優良企業賞」として、会員企業のうち優れた情報発信を行っている企業を表彰しています。

2016年度は258社の応募があり、合計14社が受賞しています。
14社の中でも積極的にホームページを活用している企業から、どういった情報発信が行っているか見てみましょう。

参考:
2016年度(第21回)受賞企業|一般社団法人日本IR協議会

1.住友金属鉱山

投資家の皆様へ___住友金属鉱山株式会社.png
http://www.smm.co.jp/ir/

鉱山を中心とした資源開発事業を行っている住友金属鉱山株式会社では、財務情報だけでなく経営全般の情報を公開しています。
同じ業態での上場企業が少ない中、「ひと目でわかるSMM」というコンテンツを配信しているのも特徴的でしょう。

また、こまめに情報発信を行うだけでなく、ホームページで更新された情報を自動で受け取ることができるRSSも公開しており、株主にとっても情報を得やすい環境を整備しています。

中長期計画や財務情報・CSR報告書を兼ねた統合報告書も毎年発行しており、環境や社会貢献度を考慮する投資家の視点であるESGへの配慮もされています。

2.東京海上ホールディングス

株主・投資家情報___東京海上ホールディングス___To_Be_a_Good_Company__.png
http://www.tokiomarinehd.com/ir/

火災保険や海上保険といった損害保険事業を中心に展開している東京海上ホールディングスでは、個人投資家向けに動画配信など積極的な情報発信を行ってます。

財務情報だけでなく、事業部ごとの収益などの営業情報を月次で公開しています。
メール配信サービスも運営しており、株主にとっても情報を受け取りやすい環境を提供しています。

3.カルビー

IR情報_|_カルビー株式会社.png
http://www.calbee.co.jp/ir/

製菓メーカーのカルビーでは、経営方針や経営情報といった基本的な情報だけでなくガバナンスに関連した情報発信も積極的に行っています。
独自のコーポレートガバナンス・コードを策定し、ホームページで公開しています。

また、食育や品質保証といったCSR分野では、キャラクターによるアニメーションを取り入れたコンテンツを配信しています。

4.コマツ (小松製作所)

KOMATSU___株主・投資家情報.png
http://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/ir/

建設・鉱山機械の製造販売を行っているコマツでは、財務情報だけでなくESGの視点を意識した情報発信を行っています。

適正な労働環境の整備や発展途上国でのインフラ整備だけでなく、ステークホルダーとの対話内容や頻度も公開しています。

5.すかいらーくグループ

株主・投資家の皆様へ|すかいらーくグループ.png
http://ir.skylark.co.jp/

外食サービスを展開しているすかいらーくグループでは、店舗を軸とした経営情報の発信を行っています。

具体的には外食市場全体の規模や店で働くスタッフにスポットをあてており、個人投資家であっても事業を把握しやすい内容となっています。

Webを活用したIR 3つのポイント

では、Webを活用したIRにはどういったポイントがあるのでしょうか。
今まで紹介してきた企業の特徴をもとに紹介していきましょう。

1.タイムリーな情報発信を行う

業績説明会や事業説明会といったオフラインでの情報発信は集客や会場手配などの工数がかかり、こまめな開催は難しいものです。一方、ホームページであれば手軽に情報発信が行えるだけでなく、タイムリーな内容を発信できるでしょう。

また、RSSの公開やメールマガジンの提供を通して、株主にとって情報を得やすい環境を整備している企業もいます。
こういった工夫を行うことで、細かい情報発信の効果も高めていけるでしょう。

2.財務情報だけでなく事業の紹介も行う

株主により深く企業のことを知ってもらうためには、経営状態だけでなく市場全体や事業そのものも理解してもらう必要があります。

デザイン性を高めることで数字をわかりやすく理解してもらうインフォグラフィックや動画を活用して、個人投資家にもわかりやすい説明を行えます。
作成したコンテンツはホームページで公開することで、株主はもちろん消費者や取引先などあらゆるステークホルダーにも企業をアピールできるツールになるでしょう。

3.ESGを意識した情報発信を行う

投資家の中でも評価されつつある*ESG(環境:Environment 社会:Social ガバナンス:Governance)*の視点を意識した情報発信も、企業の経営力をアピールするのに有効です。

こういったESGを意識して、CSR報告書の作成や独自のコンテンツを提供している企業もいます。
消費者庁の調査によると「商品やサービスの購入時に経営方針や理念、社会貢献活動をよく意識する」と答えた消費者の割合は*全体の19.0%*にものぼり、決して無視できる割合ではありません。株主だけでなく、消費者からも提供が求められている情報と言えるでしょう。

参考:
[「平成 27 年度消費者意識基本調査」の結果について]
(http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/160609_kekka.pdf)

まとめ

株主向けに優れた情報発信を行っている企業では、事業説明会などの説明会をこまめに開催しているだけでなく、ホームページでの情報発信にも積極的に取り組んでいます。
特に東京海上ホールディングスのように動画を用いた事業説明は、個人投資家にとって事業の内容やロードマップを理解する手助けになるでしょう。

オフラインでの活動に比べてホームページでは素早く情報発信を行えるだけでなく、不特定多数に向けて一度に発信することができます。
あらゆるステークホルダーに対して良い影響を与えられるよう、財務情報だけでないIRを目指してみましょう。