UX(ユーザー体験)という言葉は幾分か意味が広いので、もしかしたら人によってその定義は曖昧なのかもしれません。
実際、UIUXの違いがよく分かっていなかったり、UXのことについてあまり理解せずにUXデザイナーと仕事をしている人もいるのではないでしょうか。

しかし、制作チームがUXについてよく分かっていないのであれば、それはクライアントやユーザーにも最高のユーザー体験を届けることができません。
実際、UXというのはデザイナーが行う作業の中でも非常に大切な要素のひとつです。

非常に美しいデザインを生み出すことができたとしても、使いにくいものであればそれは成功とは呼べません。
また、UX上の戦略をほとんど採用しないのであれば、プロダクトは使いにくいままです。

こうした問題に、デザイナーはもちろんのこと、ノンデザイナーも向き合う必要があります。

今回は、ノンデザイナーがUXについて知っておくべき考え方をご紹介します。
UXとはどういうことかが分かれば、デザイナーとのコミュニケーションも円滑になるだけでなく、その知識が総合的にベストなプロダクトを作る一助にもなるはずです。

ノンデザイナーがUXについて知っておくべき5つの考え方

1. UXとUIは別物

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もしUXUIという言葉を区別せずに使っているのだとしたら、今からその違いを区別できるようにしましょう。

UIとはUser Interfaceの略で、UXがUser Experienceの略であるということくらいであれば、目の前のスマートフォンで検索すればすぐに分かりますが、どうしてもそれだけでは違いについて理解できないかもしれません。
UIUXの違いについては、次の定義がしっくりとくるのではないでしょうか。

 「UIとは、実際のシステムのこと。UXとは、それを使ってどう感じるかということ。」

もちろんより正確に言えば、Interfaceとはボタンやテキストボックスなどのパーツのデザインを指したりしますが、上記の定義の方が分かりやすいでしょう。
iPhoneのホーム画面を開いた時のアプリアイコンのひとつひとつはUIです。
そしてUXは、そのアイコンを押して開くときにどのように感じるかについて言っています。

もちろん基本的には、UXとはUIを触った結果生じる感情のことを言います。
UI/UXデザイナーのように、2つのデザインを一緒に担当させる企業が多いのは、両者が密接に関係しているからだと言えます。
しかし、厳密にはUIUXは異なるものであるため、両者の違いをしっかりと区別できるようにしておきましょう。

2. UXはWeb上だけで繰り広げられるものではない

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テック系の求人サイトを開くと「UXデザイナー」は今でもたくさん求められており、その多くは従来のWebデザイナーが行なっていた業務も担当として割り振られています。

しかし、そこだけにフォーカスすればUXデザインとはWebデザインに取って代わるもののように見えますが、実際にはUXというのはあらゆる場面に関係してきます。

例えば、どういう風に注文していいのか分からないフードコートでは心地いい体験はしないでしょうし、簡単に開けられるように一工夫施されたお菓子のパッケージを開けてみると気持ちがいいものです。
このように、UXとはオンラインだけでなくオフラインの場面においても考慮すべき重要な要素なのです。

逆に言えば、UXデザイナーはオンラインだけでなくオフラインで出会うさまざまなものからも優れたUXを学び取ることができます。
オンラインとオフラインを行き来することで、新鮮な広い視野で物事を考えられるようになります。

3. UXは逆算思考から生まれる

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先ほどUXは感情に訴える部分であることをお伝えしました。
感情と聞くと、どうしても目の前の事象に対しての反応的な、偶然の産物のように聞こえるかもしれません。

しかし、いわゆるアーティストが「今感じた感情を率直に表現する」という作業とは違って、多くのデザイナーはビジネスフィールドに立っています。
そのため、UXはゴール、目標から逆算して設計していくことが重要です。

例えば、「お客様の声」のページの閲覧数を増やすためにページ上部にリンクを移動したいというクライアントがいるとしましょう。
しかし、本質的な問題はページ上部にリンクを移動することではなく、閲覧数を増やすことです。
こうした問題解決を行う際に、閲覧数を増やすために本当は何をしなければならないのか、そのことを考えることこそがUXデザインの正しい道筋です。

4. UXとはブランドである

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従来、Webというフィールドにおけるブランドデザインとは、いかに1pxのデザインに気を払うかということでした。
しかし、表面的なデザインに夢中になるあまり、「どう見えるか」ばかりに気を取られ、ユーザーがホームページに流入してから離脱するまでに「どう感じるか」を考えるのを後回しにしています。
しかし、見た目だけでなく使い勝手や利便性まで評価されるこんにちのプロダクト評価を考えると、UXこそがブランドであるということはよく分かります。

例えばディズニーランドに行けば、もちろん派手なアトラクションや美しい建物にも魅了されるでしょう。
しかし、ゲストが期待しているのはそれだけではなく、キャストの笑顔やおもてなしも含めて「ディズニーランドに行く」ということを体験しています。
キャストの振る舞いもすべてひっくるめて、ディズニーランドのブランドアイデンティティと言うことができます。

5. UXは行動要請の引き金である

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逆算思考とも関係してきますが、世間でUXをこれほど重要視しているのは、UXの改善こそがビジネスの目的を達成しうるからです。

UXは心理学的な特性と密接に関係しています。
そして、UXデザイナーはユーザーの行動特性について学んでいくだけでなく、コンバージョンに貢献する行動を要請するための仕掛けを考えるのが仕事です。
何らかの行動を促すことで、売り上げアップに寄与する必要があります。

ただし、行動要請の方法論だけを考えるのは危険です。

例えば、通知について考えてみましょう。
通知はユーザーに起こしてほしい行動をy直接的に伝えますが、ユーザーが今現在やっている行動を中断し、時間を割いてしまいます。
何度も何度も行動要請を繰り返すごとに、ユーザーの心は離れていってしまいます。

したがって、UXデザイナーはユーザーにとって心地いい体験を設計しながらビジネス上のゴールまで導いていくことが重要です。
ユーザーが習慣的に行なっている行動や普段持っている欲求に刺激を与えれば与えるほど、より成功に近くようにする方法はないかを考えてみましょう。