川鍋氏インタビュー「新しい提案を通したいなら、小さくてもいいからわかりやすい成果を」

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新たなテクノロジーを導入しなければ時代に対応できないと焦っている企業は少なくないはずです。
しかし、新しいことを始めるには大きな労力が必要で様々な役職の人間を巻き込む必要もあるのでなかなか導入が進まないのが現実です。

組織規模が大きくなればなるほど、比例して新しいことを始める難易度も高くなっていくものです。
1945年に設立され、9,000人近い従業員(関連会社含む)を抱える日本交通株式会社において、どのように新技術の導入を推進しているのか、川鍋氏に伺いました。
  

ferret:
一般企業の場合、新たなテクノロジーを導入しようとしても社内を説得するために苦戦するケースが多いと思います。
導入を促すには何をすればいいのでしょう?

川鍋氏:
とにかく、施策の数をこなすことですね。狙いすました1撃ではなく、とにかく数を打って、なんでもいいから実績を作ることです。

例えば僕が新しい組織に入った時、一番初めに取り組むのはコスト削減です。
わかりやすく、短期的に成果が出やすいからです。

東京のタクシー協会の会長になった時、一番最初に伝票を1枚1枚確認しました。
無駄なコストを1つ1つ潰して、それを1ヶ月分やると大きなコスト削減につながるんです。
その場で何かしらの違いを起こして実績を残さないといけない。

次に取り掛かるのは部屋の模様替えですね。
大抵、普通のオフィスはコミュニケーション取りにくくなってますから。
無駄なスペースを省いて会話スペースを作ったり、少し環境を変えるだけで組織は大きく変わります。」
  
ferret:
新技術を導入してから、現場でしっかり活用されるようになるために工夫されていることはありますか?
  
川鍋氏:
JapanTaxi株式会社ではエンジニアに裁量をもたせて動いてもらっているんですが、やはり、ごく稀にユーザー体験から外れたUI設計をしてくるときがあるんですよね。
なので、エンジニアを半日ほどタクシーに乗るプログラムを組んでいたりします。
現場の様子を目の当たりにしてもらうんです。

エンジニア側はアプリが使いこなせないのは運転手が操作方法を理解していないだけだと考えがちなんですが、いざ現場で、運転手がお客様を待たせて重い沈黙が流れる空気を感じると、「これではまずい」と思うわけです。
エンジニアは頭だけで考えがちですが、タクシーの運転手は体を動していますからね。
お互いをリスペクトできて、お互いに良い影響が出るようになるための環境を作るようにはしていますね。