*「気温が25℃を超えるとアイスが売れる」*という話を聞いたことはありませんか?

実は、このような気温によるものだけでなく、天気によっても売れる商品は変わるということをご存知でしょうか。
「そんなことうちのショップの売上をみればわかるよ」という方もいるかもしれません。感覚として天候と売れる商品の関連性を掴んでいて、季節商品の展開を行っている企業もあるでしょう。

こういった気象情報を利用した販売促進計画を*「ウェザーマーチャンダイジング」*といい、在庫ロスの減少及び売上の増大といった効果が見込めます。
ネットショップや飲食店、コンビニなどBtoCビジネスを展開している企業は特にチェックしておきたい手法の1つでしょう。

今回はウェザーマーチャンダイジングの具体的な手法を解説します。
特定の気候に売れる商品の種類や自社で取り組むためのステップまでを解説するので、これからウェザーマーチャンダイジングを学びたい方は必見です。

ウェザーマーチャンダイジングとは

ウェザーマーチャンダイジングとは、気象情報を使った販売促進計画を指します。
具体的には、天候に合わせて売れる商品を予測し、事前に仕入れする量を調整したり、広告の出稿を増量したりといった方法が挙げられるでしょう。

商品の売上と天候の関係性を明らかにすることで、将来的な売上予測を立てることができます。精度の高い予測を立てることで、在庫のロスを減らし、売上の増大にもつながるでしょう。

参考:
異常気象が続く今こそ知りたい「ウェザーマーチャンダイジング」とは?言葉の意味と事例を解説

天候の影響を受ける商品の例

ウェザーマーチャンダイジングでは、商品ごとの特性を認識した上で、気象情報への理解を深めることが大切です。
まずは、基本的な考え方として天候に対応した商品の分類を5つ紹介しましょう。

1.昇温商品

体感温度が高くなるにしたがって、購入されやすくなる商品を「昇温商品」と言います。
昇温商品の代表としてはアイスクリームが挙げられるでしょう。

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引用:気候リスク管理技術に関する調査(スーパーマーケット及びコンビニエンスストア分野):販売促進策に2週間先までの気温予測を活用する|気象庁

上記のグラフは、仙台のスーパーマーケットにおける7日間平均の平均気温とファミリー向けアイスの販売数の関係を明らかにしたものです。
図からわかる通り、気温が上がるにつれアイスの販売数が伸びていることがわかります。

また、気温が上がっていく2~7月には平均気温が15°Cを超える頃から販売数が伸びているのに対して、気温が下がっていく8~11月の伸びは緩やかであることがわかるでしょう。

昇温商品には他にも冷やし中華やうなぎ、キャミソール、殺虫剤、Tシャツ、レタス、刺身、ヨーグルトなどが含まれます。

2.降温商品

「降温商品」は体感温度が低くなるのに合わせて購入されやすくなる商品です。
鍋焼きうどんやおでん、鮭、しいたけ、毛布、カーディガンなどが挙げられます。

それでは具体的に、ロングブーツと気温の関係性を見てみましょう。

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引用:気候リスク管理技術に関する調査(アパレル分野):売り場作りに2週間先までの気温予測を活用する|気象庁

上記のグラフは、2009から2013年の東京における気温変化とアパレルショップにおけるロングブーツの販売数を表したものです。

グラフからわかる通り、ロングブーツの販売数は平均気温20°C付近で販売数が伸び、11月中旬にピークを迎えていることがわかるでしょう。

3.晴天型商品

「晴天型商品」とは雨が降っていない日に購入率が上昇し、雨が降っている日には購入率の上昇が見られない商品を指します。

キャンプ用品や園芸用品、洗車用品といった晴れの日に行える活動に関連した商品が該当します。

4.雨天型商品

「雨天型商品」とは、雨が降っている日に購入率が上昇する商品を指します。
代表的な商品としては雨傘や長靴のような雨の日に使うもののほか、シャンプーや洗剤といった生活消耗品も該当します。
では、なぜ生活消耗品が雨の日に売れるのでしょうか。

この現象に関して株式会社ライフビジネスウェザーの常盤勝美氏は「雨が降っているからと外出を控え、家庭内で片付けを行った結果、生活消耗品の不足に気づき、購入しに行くのではないか」と指摘しています。

参考:
マーチャンダイジングと季節|国際環境研究協会

5.異常気象型商品

「異常気象型商品」とは、台風や大雪など災害につながるような異常気象が発生した際に購入率が上昇する商品です。

台風時には乾電池や軍手、ろうそく、水などの保存食品、大雪ではスコップ、冬用タイヤ、タイヤチェーンなどの購入率が上昇します。

この時注意したいのが、シーズン中の大雪において2回目の大雪では、1回目よりも購入率が上昇しないということでしょう。タイヤやチェーンのような商品は一度購入したら、継続して利用できるため、2回めには1回めほどの上昇は見られなかったと予測されます。

参考:
[スーパーマーケット及びコンビニエンスストア分野における気候リスク評価に関する調査報告書~様々な食品等について販売数の増加につながる気温を見出しました~|気象庁]
(http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/pos_chousa.html)

ウェザーマーチャンダイジングに取り組むステップ

商品の特性を掴んだら、実際に自社でウェザーマーチャンダイジングを取り組む方法を考えてみましょう。女性向けのアパレル系ネットショップを想定して、3つのステップごとに紹介します。

1.気候と商品の売上の関係の仮説を立て、検証する

まず最初に気候と商品の売上がどのように関係しているか仮説を立てて検証します。
例えば「冷感素材で作ったストールは、気温の上昇に合わせて売れるが、真夏日になるとストールすら邪魔に感じて売れないのでは?」のような仮説を立てたとしましょう。

この仮説をもとに冷感素材で作ったストールの販売実績と、それに対応する過去の気温データを調べます。
気象庁では、場所と項目、期間を指定して過去の気象データを取得できるサービスを公開しています。CSVファイルとしてダウンロードもできるので、資料作成にも役立つでしょう。

▼過去の気象データ・ダウンロード|気象庁
http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/

2.影響を与える気候が発生する可能性を見積もる

気候に影響される商品がわかったら、次に、実際にどこまで売上に影響を及ぼすかを予測します。
例えば、冬用タイヤのような異常気象型商品の場合、大雪が降る確率が低ければ、そもそも売上に及ぼす影響も低いでしょう。

先ほどの例をあげると「冷感素材で作ったストールは気温が30°C以上の日が3日以上続くと販売数が増大する」という事実をもとに、気温が30°C以上の日が3日以上続く可能性を検証する必要があるでしょう。

参考
[漠然と認識した気候リスクをより"はっきり"と把握する|気象庁]
(http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/riskhyoka.html)

3.過去の数値と気象予報を使って見通しを立てる

商品と気象の関係を認識し、なかでも売上に大きな影響を与える商品がわかったら、具体的に売上予測を立てていきます。

過去の一定期間から平均値を導き出し、今年の売上予測を立てましょう。

その際には、平均値だけでなく変動幅を認識しておくことも大切です。
「この期間は暑くなったり寒くなったりと大きく変動しているから、平均値では判断しないほうがいい」といったことがわかるでしょう。

また、より高度な予測を立てるには週間予報のような比較的短期的な気象予報だけでなく、長期的な予報を参考にします。
気象庁では、週間予報よりも先の予報を予測資料として提供しており、平年に比べ、どの程度気温の変化が現れる可能性があるか把握できます。
商品の発注に時間がかかる場合や予算の設定を行う際には、こういった長期予測も合わせて参考にするといいでしょう。

▼各種予測資料(異常天候早期警戒情報・1か月予報)|気象庁
http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/probability/index.html

参考:
統計値を使って見通しを立てる|気象庁
[予測値(数値予報モデルの計算結果)を使って見通しを立てる|気象庁]
(http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/taio_yosoku.html)
[気象情報を活用して気候の影響を軽減してみませんか?|気象庁]
(http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/)

まとめ

ウェザーマーチャンダイジングに取り組むには以下のような4つのステップをふみましょう。

・気候と商品の売上の関係の仮説を立て、検証する
・影響を与える気候が発生する可能性を見積もる
・過去の数値と気象予報を使って見通しを立てる

このようにウェザーマーチャンダイジングを行うには、気候と商品の関連性を1つずつ明らかにしていく必要があります。
しかし、最初は「どの商品が気候と関連してるかなんてわからない」という方もいるかもしれません。

そういった方は最初の仮説立ての段階で、昇温商品や降温商品といった商品分類を意識して、自社の商品をピックアップするといいでしょう。
気候と商品の関連性を意識することで、商品の売上予測の精度があがり、在庫のロスや品切れを減らすこともできます。また、ネットショップや店頭、広告などで売れると予測できる商品の露出を増やすことで売上の増大も見込めるでしょう。