4つの段階それぞれが持つ"意味"と"役割"

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ご紹介したタックマンモデルですが、必ずしも全てのチームがこの成長曲線をたどれるとは限りません。最後に大きな成果を出すためには、ストーミングを正しく乗り越えることがポイントです。

ほとんどのチームは、せっかく問題が表面化してストーミングの時期が訪れても、もめ事や食い違いから目を背け、何もなかったように「偽りの平和」を振る舞います。

先ほどの例は、生徒たちの衝突を回避するために先生が手を打ち、偽りの平和、すなわちフォーミングに戻そうとしていたということなのです。結果的にもとの状態(=フォーミング)に戻るので、永遠にノーミングやパフォーミングは迎えられません。先生のこの対応が「間違い」だったということになります。こんな時こそ、前向きで建設的な伝え方を心掛け、仲間の意見にも耳を傾けて最善の方法を模索する態度が必要です。
  

”ストーミングとの向き合い方”を知ることが重要

メンバー全員が問題と真摯に向き合い、様々な意見衝突を繰り返すストーミングは、とても勇気が必要なステージです。その理由はシンプルで、"このままチームは崩壊してしまうのではないか"と不安になるからです。

そのため、多くのリーダーはストーミングが起こることを恐れ、自らが火消しに回ったり、問題を水面下へ押しやったりしてしまいますが、それはせっかく訪れたチームの成長機会を手放し、再び4月のような偽りの平和に戻そうとしているわけです。

例えば、学園祭に向けてクラスの模擬店で何を売るか、いくつかの意見が出てなかなか決着が付かないとします。偽りの平和を重視するメンバーなら、「変に衝突して後味が悪くなるのも嫌だから、俺たちが引き下がろう」という考えになります。まさに、表面的には衝突がありませんが、納得していない模擬店では心から頑張ろうとも思えず、結果的にチームとしてのパフォーマンスは上がってきません。

そこで、重要となるのが「ストーミングとの向き合い方」を知ることです。

ここからは、ストーミングを「正しく乗り越える」ために、いったいどのようなことを意識すればいいのかをご説明します。
  

目指すべきは”活発な議論ができる”下地づくり

まず、フォーミングの時期(形成期)に、リーダーがメンバー間の「心の安全」に関する約束を取り付けることが重要です。

「心の安全」とは、多様性を認め合い、意見の食い違いに対して批判・攻撃・文句・陰口ではなく、提案のような発言を心掛けることです。そして、自分とは異なる意見からも学ぼうとする態度を持つことです。言い換えれば、メンバー同士がリスペクトの関係で結ばれることです。

そうすることで、安心して発言ができるようになり、議論が活発化します。フォーミングの時期(4月)は、「心の安全」を根付かせること(=活発な議論ができる下地づくり)ができれば合格です。

次に、ストーミングのポイントです。何か問題が表面化した時、「心の安心」が確約されたチーム環境の中で、全員の意見がテーブルに上がってくることが非常に重要です。この時に、意見を出さない人は、最終的に「他人事」のような態度をとる可能性が出てきますので要注意です。そして、各々の主張とその背景などを伝えるなど、可能な限り議論を深めていくことで参加意識が高まってきます。
  

ストーミングの段階で議論に妥協があるとノーミングは迎えられない

議論に議論を重ねて決定した計画に対しては、各々に「俺のプロジェクト!」という意識が芽生え、「この決断が成功だったことを証明したい」という思いが強くなり、その思いが責任感へと形を変えていきます。これがノーミングの時期です。

つまり、ストーミングをとおして、皆が納得する良い方法が見付かり、共通理解を築き上げ、オリジナルの方法にたどり着いたことを意味しています。また、「このメンバーで成功させたい」という思いを強くするきっかけにもなります。

全員が計画にワクワクしているかどうかも1つの指標となります。お気付きかもしれませんが、ストーミングの段階で議論に妥協があるとノーミングは迎えられないのです。
  

「このチームで成功したい」という想いがハイパフォーマンスにつながる

最後のパフォーミングの時期は、自分たちのやり方に磨きをかけ、オプションを増やし、完成度を高めていく段階で、言い換えると「究極のこだわり」のステージです。「そこまでやらなくてもいいでしょ?」と思ってしまうくらい細かいことにまでこだわり、わずかな可能性にかけてでも結果を追求する姿が特徴的です。しかし、はっきり言ってこのステージまで発展するチームは稀だと思います。

日本人の特徴と言い切ってしまうのはどうかと思いますが、どうしても問題の本質を曖昧にし、発言を控え、見て見ぬふりをする、偽りの平和が浸透しています。

ごく少数ではありますが、チームの問題をあぶり出して積極的な議論を好むストーミング体質の人がいるのも事実です。しかし、大多数の人が「まあまあ、そんなこと言わないで」「波風立たせずに穏便にやりましょう」という雰囲気を出し、フォーミングに逆戻りすることになるのです。

リーダーは時に問題を掘り起こし、メンバーに問題を直視させ、それぞれの考えに隔たりがあることを認識させる役割を担わなければなりません。そして、食い違いを恐れずに前向きなディスカッションを引き出させることも欠かせません。

メンバーが目標に対して前向きな気持ちをもっていれば、必ずや「俺たちのやり方」にたどり着き、「このメンバーで成功させたい」というステージへと向かうはずです。