UXデザインの時代には、ユーザーリサーチの場面で適切な参加者を集めることが必要不可欠です。

ユーザビリティテストの被験者は、作りたいプロダクトやサービスのターゲットにぴったり合致する可能性もありますが、そうでなければ想定外のことが起きる場合もあります。
適切な被験者を集められるかどうかは、被験者を集める際に適切な採用基準を設定しているかにかかっています。

採用基準は、世代や場所のような一般的なものであれば、求めている被験者を集めるのにそれほど苦労はしないでしょう。
しかし、基準がもっと厳密で特定したものである場合は、事態はより複雑になってきます。

今回は、どのように採用基準を決めるべきか、どのようにして求めている被験者を集めるべきか、ユーザビリティテストの被験者を集めるときに気をつけておきたい5つの注意点について確認しましょう。

ユーザビリティテストの被験者を集める時に気をつけておきたいこと

1. ターゲットに当てはまるサンプルユーザーを集めよう

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効果的なユーザーリサーチを行いたいと考えているUXデザインチームは多いでしょう。
その場合、サービスやアプリケーションのターゲットユーザーかどうかは非常に重要です。

例えば、Airbnbがユーザーリサーチを行う場合には、おそらく「旅行好き」「旅好き」で、内向的というよりはどちらかといえば外向的でアクティブなユーザーが対象になるでしょう。
ユーザーリサーチのサンプルユーザーは世代、国籍、居住地などがバラバラであってもかまいませんが、そもそもターゲットとなるユーザーであるかどうかは非常に重要です。
先ほどのAirbnbのユーザーリサーチの例で言えば、サービスやプロダクトがどれだけよくても、「旅行は好きじゃないから」という理由だけで正しい評価やフィードバックを得られない可能性すらあるのです。

多くのプロダクトやサービスでは、さまざまなユーザー層を抱えていますが、適切なターゲットを見極めた上で、さまざまな範囲のユーザーを集めていきましょう
時間や予算が許せば、複数のユーザーグループを用意して、個別に分けてユーザビリティテストを行うのもいいでしょう。

企業によっては、ユーザーリサーチの被験者を集めることを専門に行っている企業(楽天リサーチマクロミルなど)にアウトソーシングする場合もあるでしょう。
こうした企業はクライアントの代わりに潜在的な被験者を大規模で集めてくれます。
場合によっては自社のリクルートチームが被験者を集めるよりもROI(投資対効果)が高くなる場合もあるので、被験者を集める前にこうしたサービスを活用するか検討してみてもよいでしょう。

2. リクルーティングの範囲を定めよう

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ターゲットグループとなるエンドユーザーを集めることが重要であることは、すでにお話した通りです。
しかしながら、ユーザーテストを行うターゲットユーザーは、思っているよりも広げていく必要があるでしょう。

というのも、見逃してはならないのは、アクセシビリティに関するユーザビリティテストも行う必要があるということです。
したがって、色弱の方や弱視の方などのディスアビリティを抱えているユーザーも、ユーザーリサーチに参加してもらうことが重要です。

ユーザビリティテストをはじめとする各種リサーチは、自社の中にいる別のプロダクトの開発メンバーが行う場合もありますが、あくまでも同僚を使ってユーザーリサーチを行っているので、ある程度バイアスがかかっているのは理解しておくべきでしょう。
他のチームの開発メンバーであっても、当然自分たちのことはお互いに知っているので、言っていないにしても肯定的な意見を言わなければならないと感じることがあります。
すると、本来見えるはずの課題も見えなくなってしまい、改善点を見失ってしまうのです。

また、このような場合には*「デフォマシオン・プロフェッショネル」(仏:déformation professionnelle)*と呼ばれる状況にも陥ってしまいます。
デフォマシオン・プロフェッショネルとは、職業的な専門性を帯びれば帯びるほど、ある特定の見方に偏ってしまい、バイアスがかかってしまう現象のことです。
この現象は、例えば医師向けのアプリやゲーム好きのためのアプリなど、完璧にニッチな分野にターゲットが絞られている場合には問題ではなくなるのですが、そうではなくターゲット層が比較的広い場合には、被験者の職業を絞れば絞るほどデフォマシオン・プロフェッショネルの罠にかかりやすいことを理解しておいてください。

3. 適切な採用基準を定めよう

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適切な採用基準を設けるのは、ユーザーテストを成功させるために必要不可欠です。
例えば、被験者のソーシャルメディアの利用を前提としているのであれば、ソーシャルメディアアカウントをすでに所有しているユーザーを集める必要が出てくるでしょう。

被験者を集める前に考えなければならないことは、プロジェクトに関連する採用基準でどんな基準が必要になるかということです。
年齢や居住地、職種やある種の経験(スマートフォンの利用年数など)といった、一般的なものだけで済む場合もあるでしょう。
一方で、アフィリエイト経験者や病院で治療を受けている人など、より特定的な場合もあるでしょう。
そうした項目を適切な数・適切な種類で決めることが、ユーザーリサーチの可否を決めていきます。

もしアプリケーションが「ほとんど誰もが使うことができる」汎用性の高いものである場合には、長い目で見ればユーザーを絞る必要はないかもしれませんが、ある程度のグループを絞って、それぞれのグループでどういう反応が出るかを調べるべきでしょう。

一方で、被験者を採用するには極端に難易度の高くなる採用基準は加える必要はありません。
基準が特定されていればいるほど、リクルートにかける時間や労力は一般的によりかかってくるので、必要絶対な量と種類を見極めて設定していきましょう。

4. リクルーティングを始めよう

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ユーザーリサーチの被験者を集める方法は、本当にさまざまです。
先ほどご紹介したように、ユーザーリサーチに特化したエージェンシーに採用基準や採用人数を伝えて代行してもらうというやり方もあります。
こうした方法は非常に効率的でもあるのですが、費用はそれなりにかかるのを覚悟しておいたほうがよいでしょう。

もしエージェンシーの利用が予算感に合わないという場合であれば、自分自身でリクルーティングを行うのが最も早いです。
自分たちの人脈をつたって集めていく方法もあれば、ソーシャルメディアを使って呼びかけていく方法もあります。
しかし、個人的に知っている人で、距離が近くなってしまえば、それだけバイアスがかかってしまうのも理解しておきましょう。

普段は届かないところにリーチさせたいのであれば、Facebookの特定のグループページインターネットのフォーラムを使っていくのも一つの手です。
また、indeedのような求人媒体を使って直接採用を行うのも、現在でも有効な手段です。

覚えておいて欲しいのは、ユーザーリサーチにかかる時間や、セッションを受ける場所、担当者や報酬などをできるだけ詳細に書いておいたほうが、被験者は集まりやすいということです。
通常の採用と同じように、必要な情報が書かれていないと、採用情報を見ているユーザーは不審に思って申し込みをためらってしまいます。
どんな情報が分かれば被験者に加わってくれそうか、ユーザー目線で考えていきますよう。

5. 予算を設定しよう

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基本的なことかもしれませんが、お金をかけずにユーザーリサーチを行うのは難しいと考えておきましょう。
お金やノベルティグッズ、ギフトカードなど、リサーチに参加した被験者には、なんらかの「見返り」をお礼として渡すのが一般的です。

こうした報酬はもちろん、リサーチにかかった時間や、場合によってはタスクをこなす難度に応じて変わってくるでしょう。
また、被験者がなんらかの特別なスキルを持った人であれば、報酬は高めに設定されるでしょう。
場合によっては、直接報酬を渡すよりも「抽選」形式で報酬を得る「チャンス」を渡した方が盛り上がる場合もあります(抽選で2名に50V型のテレビが当たるといったケースです)。

もちろん、リクルーティングエージェンシーを使う場合は、その企業に払うフィーとは別にユーザーに報酬を用意する必要があります。
どのような報酬形態にするのかも含め、適切な予算を設定していきましょう。