8月4日(火)、東京・目黒にある目黒雅叙園にてイベント、「昇る人生の課外授業 〜祇園から学ぶ日本人の心得〜」が開催されました。

このイベントでは、元 祗園甲部の芸妓であり、“伝説の芸妓”と呼ばれる岩崎究香氏が、Hondaの創業者である、本田宗一郎氏をはじめ、各界の巨匠を贔屓筋に持った芸妓時代の体験から、優秀な人材を指す「昇る人」の特徴を語ります。

岩崎氏の言葉からは、全てのビジネスパーソンに通じる「人生訓」が学べます。

立身出世をするために心がけることや、「日本のビジネスパーソン」として知っておくべき「伝統」について、イベントの様子とともにご紹介します。

登壇者プロフィール

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©️昇る人生の課外授業

岩崎究香(いわさきみねこ) *旧名:岩崎峰子

作家であり、元祗園甲部の芸妓。5歳から祇園に住み、6歳で井上流(日本舞踊の流派の1つ)を習い始め、「都をどり」で初舞台を踏む。15歳で舞妓として店出しを行い、1971年に芸妓となった。

贔屓筋には、本田宗一郎をはじめ、塚本幸一、千宗室(15代)、佐治敬三、谷川徹三、勝新太郎などがおり、名実共に「100年に1人の名姑」と言われた。

作家としては、自伝『芸妓峰子の花いくさ』、『祇園の教訓 昇る人、昇りきらずに終わる人』『祇園の課外授業』などがあり、花柳界の伝統や文化、後進を国内外に向けて発信している。

優秀なビジネスパーソン“昇る人”に共通する特徴とは?

岩崎究香氏は、芸妓時代に贔屓筋として本田宗一郎を始め、各界の巨匠が名を連ねていました。各分野の「一流」と呼ばれる彼らをおもてなしする上で、成功を収める「昇る人」の共通点を見出しました。

岩崎氏がおもてなしをした「昇る人」たちから垣間見える、人生の教訓や日本人としての振る舞い方についてご紹介します。

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「昇る人」に共通するのは「好奇心」と「探究心」

「昇る人」について、私が感じたことをお話します。まず、「昇る人」には、共通点があるんです。それは、「好奇心」があること。そして、好奇心を持ったことは、さらに深く知りたいという「探究心」を持っている方が多いのです。彼らは、祇園のお座敷にも、その気持で遊びに来てくれていました。

芸妓さん、舞妓さんのお座敷によくお見えになる方の中には、学者さんが意外と多いんです。“その道”の勉強をしている人なので、深く物事を聞いたりお話してくれる。

例えば、あるお客さんから聞いたお話を、そういった(好奇心のある)お客さんにお話をすると「それは、どういうことなの?」と聞いてくれたりします。

昇る方は、好奇心と探究心が旺盛で、「お座敷遊び」という遊びも楽しみながら追求したいと思ってくださるんです。また、「遊び」と聞くと(仕事などと比べて)「ムダ」と感じられることもありますでしょう?

でも、この「ムダ」というのは決してムダではなく「宝」なんです。「こんなことしたらムダやな」と思うことはある。でも、好奇心を持ってみると「ムダ」と思えるものの中にも、「これは重要だな」と感じられることもあるんですよ。
  

本田宗一郎は好奇心が旺盛な人だった

だいたいお座敷に見える方は、遊ぶことが大好きなのですが、本田宗一郎さんも遊び心があって「好奇心」が旺盛な人でした。

本田宗一郎さんには、面白い話がありまして......。

本田宗一郎さんはハゲてらっしゃったんですね。それを見て私は「本田さんって、昔からずっとハゲとるんですか?」と聞いてみたんです。そしたら(楽しそうに)「そうや」と言うんです。

なので、次回お見えになった際、“ぼてかずら”(紙と漆で作ったカツラ)を用意してみたんです。実際にカツラを被せてみたら本田さんは大喜びしちゃって、皆で盛り上がったんです。著名人とはいえ、純粋に楽しんでくださりました。

そもそも、お座敷は立場の有無は全く関係なく、皆が平等に遊べる空間を提供しています。なので、偉い人が見得たさかいて舞妓さんや芸妓さんが特別扱いすることはあらしまへんし、一般の方と全く同じおもてなしをさして貰て楽しむんですよ。

最近は、若い人がお座敷に遊びに来られることもありますけど、みんなお行儀が良過すぎますね。良い格好せんと、「遊び」なんやからもっと楽しみましょう!
  

「昇る人」のお金の使い方

お金の使い方についても「昇る人」には特徴があります。成功者といえば、お金持ちで色々なことにお金を使うと感じる方がお出でになると思いますけど、実は倹約家な人が多いんです。

でも、「ここぞ」というところに、もの凄く綺麗にお金を使わはるんです。地域に音楽堂を建てたり、美術館を建てたり、そういう文化的なところにお金を使われています。綺麗にお金を使われる方と、単に出し渋るケチな人とは人間的な格が違いますよね。

例えば、舞妓さんが「お稽古」をしますでしょう。人に物を習うと月謝を払いますが、「月謝を払わずに済んだら得をした」と考える人は、芸が身につかないんです。タダより高いものはありません。
  

人生の「早咲き」か「遅咲き」の差はどこにある?

人の人生には「早咲き」「遅咲き」と成功するタイミングは様々ですよね。これは、「昇る人」に限らず、誰にでもあることなんです。芸事もそうですけど、うんと積み重ねていかないと力を発揮できない人もいる。

これは飲み込みの早さもありますが、私は個人的に時間や育った環境も関係していると思っています。ただ、「早咲き」は時間や環境に恵まれているかもしれませんが、大事なのは「早咲き」か「遅咲き」かではなく、目指すところへ努力して「ここで咲きたい」と感じたところで成就することが大切な事なんです。

「昇る人」を間近で見ていて、「咲いた!」というタイミングが明確にわかります。それは、目の色の違いで、本当にキラキラとしていて、以前お会いした時とは全く違っていました。

伝説の芸妓、岩崎究香氏から学ぶ「祇園で得た人生の教訓」

上記では、岩崎究香氏が芸妓時代に実際に関わった方々から「昇る人」の共通点や特徴を明らかにしました。次に、岩崎究香氏が自分自身の経験から得た教訓をご紹介します。

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©️昇る人生の課外授業

岩崎究香氏がナンバーワンになったキッカケ

私は、もともと「ナンバーワン」になろうと思っていたわけではありませんでした。でも、毎日お稽古帰りにそのまま帰るのはもったいないと思ったので、営業をしていたんです。お茶屋さん(宴会をする場所)に「おはようさんどす、峰子どす。今日お座敷あったら声を掛けてください」と挨拶していました。今は違うかもしれませんが、当時は誰もそんな事していなかったんですよ。

そして、家に帰ったらお茶屋さんから置屋(舞妓たちが共同生活をする家)に電話がかかってくるんです。「ほんまに峰子さん空いたはんのどすか?」って。10分でも15分でも時間が空いてたら、お座敷に出てましたね。時間がなくても、ちょっとだけでも、ご挨拶に行く。これだけでも(周りの印象が)全然違いました。これは一年だけでもと決めて続けました。

宴会でも、お客さんを楽しませるために工夫を沢山していました。ご贔屓にしてくれはるお客さんやと、宴会で舞っても、ただ喋ってもつまらないですよね。なので、小咄やら“ちゃり舞”をして場を楽しませてました。どんな小咄をしたら楽しんでもらえるのかと考えるのも楽しかったんですよぉ。

すると、知らん内にナンバーワンになってたんです。なので、目指してた訳と違って、結果的になってたってことです。
  

「個性を消すお稽古」をすることで「本当の個性」が垣間見える

私がお稽古を通して学んだ「個性」についてもお話します。舞妓さんや芸妓さんの「お稽古」は舞踊や振る舞いのお稽古をするのですが、「個性を消すためのお稽古」でもあるんです。それは、流派ごとに“型”があるからです。それぞれ流派があって、お師匠さんやお母さん(置屋の女将)に言われたことは絶対に守らないといけない。

例えば、歌舞伎を観に行って「カッコええな」と感じても、それをお稽古に出したら「あきまへん!」って叱られます。かといって、何もしないと「何を見てきたんえ!」って叱られますけどね(笑)。でも、こうやってお稽古を通して「個性」を消していくんです。

そして面白いことに、流派の教えを守って“型”をしっかりと身に付けると、自然と個性が出てくるんです。素直に“型”を受け入れて毎日お稽古に励むと、本当の個性が見えてきます。なので、「個性を作る」なんてもってのほか、個性は自然に出てきます。
  

お稽古には「素直さ」が大切

芸事のお稽古を始めるのは、今ですと15歳くらいからになると思います。でも、私の時代はもっと小さなころからお稽古をしていました。なので、個性を消すことに苦労はなかったんです。

お師匠さんが教えて下さることはなんでも素直に受け入れることができました。15歳くらいの多感な時期だとまたちょっと感じ方も違うと思いますけれど、素直でいることが最も大切なことです。

舞妓さんや芸妓さんは、毎日お稽古をしてからお座敷に出る生活をしています。お稽古が全てなので余計なことを考える暇もないのです。お稽古が当たり前の暮らしなので、辛いとか逃げ出したいとか思うこともなく、純粋に楽しんでお稽古をしていました。
  

「日本の伝統を語る」ことの大切さ

近年、外国のお客さんが祇園にいらっしゃることも増えましたし、日本から海外へ行く方も多くなりました。そこで、外国の方々と交流することがありますよね。海外の方は母国の歴史を大切にしているので、日本の伝統や文化について質問されることがあると思います。その時、日本について語れますか?意外と難しいものですよね。

もし外国からいらっしゃるお客さんであれば、伝統的な町並みに触れてもらっても良いと思いますし、お座敷に案内しても良いと思います。でも、自分自身が日本の伝統文化を語れることが大切です。

そのためには、まずご自身のルーツを辿ってみてください。過去帳をみたり、代々受け継がれている物事などを親に聞いてみると良いでしょう。自然と歴史を振り返ることになるので、日本の伝統を知るキッカケにもなります。自分のルーツから語るのであれば、人に伝えることもできるでしょう?

このイベントも、伝統や文化に触れてほしいという想いがあります。楽しんでいただきながら、学んでいただければ良いなと思っています。
  

まとめ

「お座敷遊び」と聞くと、日本の伝統的なエンターテイメントという印象がありますが、そこにはビジネスにおけるヒントが散りばめられています。

伝説の芸妓、岩崎究香氏が見てきた「昇る人」に共通しているのは「好奇心」や「探究心」でした。一見「ムダ」に思えるような「遊び」にも強く関心を持ち、深く突き詰めることで、結果として成功に繋がったと言えます。

また、「昇る人」のお金の使い方からもわかるように、倹約家であっても「お金の使いどころ」を見極め大きく使うなど、明確な「判断基準」を持って行動することも大切です。

そして、「昇る人」たちの特徴だけでなく、彼らを惹きつける、芸妓・舞妓の生き方から学ぶ「日本人としての振る舞い」からも得られることがあります。人生をより良く生きるためにも、参考にしてみてはいかがでしょうか。