エンジニアやデザイナーなど制作業務が多い職種の方の中には、人前で喋ることに苦手意識を持っている方もいるのではないでしょうか。制作業務とはいえ、クライアントへの提案や社内会議など、人前でプレゼンテーションを行う機会があります。

そこで、発表するテーマの勉強や丁寧なスライド作りなどを心がけているものの、トークに関しては苦手意識が課題となり思うように上達しないと感じることもあるでしょう。

マイクロソフトで卓越したプレゼンテーションを行った社員に送られる「Chairman's Award」を、日本人エンジニアとして初めて受賞した、澤円氏によると日常的な心構えや練習でプレゼンテーションは見違えるほど上達するそうです。

今回は、2017年8月28日に渋谷 BOOK LAB TOKYOで開催された澤氏登壇イベント「【AUTHOR'S TALK #00】マイクロソフト伝説マネジャーの 世界NO.1プレゼン術」からプレゼンテーション上達の極意を学んでみましょう。

登壇者プロフィール

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澤 円(さわ・まどか)

日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」がある。プレゼンを年100回以上こなし、ビル・ゲイツが卓越した社員のみに授与する「Chairman's Award」を日本人エンジニアとしてはじめて受賞した経歴を持つ。

【AUTHOR’S TALK #00】マイクロソフト伝説マネジャーの 世界NO.1プレゼン術より抜粋

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モデレーター/西村創一朗(BOOK LAB TOKYO CEO)

1988年生まれ。当時19歳の頃に長男が誕生し、学生パパとなる。その後、2009年よりNPO法人ファザーリングジャパンに参画し、現在は最年少理事を務める。

大学卒業後、2011年に新卒でリクルートキャリアに入社。MVP受賞歴多数。本業の傍ら2015年に株式会社HARESを創業し、仕事、子育て、社外活動などパラレルキャリアの実践者として活動を続けた後、第三子となる長女の誕生を機に「通勤をなくす」ことを決め、2017年1月に独立。独立後は「週休3日」で家族と過ごす時間を倍増させながら、複業研究家として、働き方改革の専門家として個人・企業・政府向けにコンサルティングを行う。講演・セミナー実績多数。2017年9月より「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(経産省)の委員を務める。2017年8月よりBOOK LAB TOKYO CEOに就任。

「製品が主語」のプレゼンテーションは失敗する

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西村氏:
プレゼンテーションの講演というと、いかに資料を作り込むかとか、要点をまとめるスキルとか、「小手先のテクニック」が語られることが多いと思うのですが。澤さんの講演は、ご自身の経験が何千回とある中の「気づき」から展開されますよね。

澤氏:
そうですね。僕の場合は、自分自身の経験と、数多くの失敗事例を見てきたという経験があります。マイクロソフト社ってコーポレートイベントが年に4回くらいあって、全て数千人規模で開催されます。複数の部屋にわけてセッションを行うのですが、例えば2日間で180コマとか行われるわけです。全てのセッションは、オーディエンスの満足度などからスコア化されてランキングになるんです。トップからビリまですべて貼り出されます。

そこで、ランキング下位の人に注目すると共通点が見えてきます。「製品やテクノロジーが主語」でプレゼンテーションしているんですよね。
製品が主語だと自己アピールになってしまうんです。残念ながら点数は絶対によくならないんですよね。

オーディエンスが聞きたい話と真逆になりますから。なぜ彼らが上手くいかないのかを「言語化」すると、失敗しないプレゼンテーションをするには何をすればいいのかが見えてきます。

西村さんのおっしゃる通り、小手先のテクニックで取れるスコアは全体の20%くらい。残りの80%は、テーマ選定とかオーディエンスのプロファイリングとかそういったところで決まるんです。なので、ステージに上がる前に8割勝負が決まっています。

無茶振りな講演依頼でも「とりあえず受けてみる」ことで得られるインプットの重要性

アウトプットを先に行うことで多面的にインプットが得られる

西村氏:
オーディエンスに刺さるテーマや、彼らのプロファイリングが大切なんですね。実はプレゼンテーションは、マーケティングに近いのかもしれないですね。

澤氏:
そうですね。マーケティングというのは「コミュニケーション」そのものだったりします。マーケティングというと、僕の非常に親しい人たちの中に、ローソンエンターメディアの元社長である野林徳行さんという方がいるんですね。

いまFiNCという会社のCMO(マーケティング最高責任者)をやってる方なのですが、彼は出先で10分でも余裕があれば目の前に見える全てのコンビニに足を運ぶそうです。

陳列されている商品からレジの混雑具合までチェックしている。マーケティングは派手に広告を打ったりするイメージもありますが、本質的にはマーケットの需要がどこにあるのかを知らなければならない。

その点、プレゼンテーションもマーケティング的な要素を持っていると言えるでしょう。自分からアンテナを立ててインプットしていく。

本を読んだりしてインプットするんですが、僕は先にアウトプットするようにしているんです。なにかアウトプットすると、多方面からフィードバックが返ってくる。本は1種類の情報ですが、アウトプットを先にすることで、全然異なる視点から複数のフィードバックが得られるので学びが大きいんですね。そうすると質の高いインプットができると思います。

西村氏:
僕の持論なんですけれど「アウトプットとは、インプットの自動化である」と(講演や執筆などで)言っています。1人で頑張って読むとかじゃなくて、何かアウトプットしてそれに対するフィードバックで学ぶ。

また、「こういうことに興味があるんだね」と、人を紹介してもらえるなど、貴重なソースがアウトプットしただけで勝手にやってくるんです。澤さんは、ちなみにどのようなアウトプットをされているんですか?

澤氏:
そうですね。ありとあらゆることをやっているんですが、わりとTwitterとかFacebookとか、SNSを使うことがあります。これは、心がけていることなんですが、プレゼンテーションを頼まれた時、テーマが専門外であれ“あえて”受けちゃうんです。
それで、「やりますよ」と依頼を受けたあと、TwitterやFacebookで「このテーマで話するからなにか情報をちょうだい」とかつぶやくんです。

すると、その道に詳しい人間からフィードバックをいただいたり人を紹介してくれたりする。「(講演をするうちに)あなたがこのテーマで話すのに興味がある」とプロフェッショナル自ら教えに来てくれる。良い意味でお節介をしてくれる人が沢山いて、効率よくインプットができる。

無謀だと思われることもいるでしょう。「正しくない情報をプレゼンテーションすることになるのではないか?」という質問を受けることがあるのですが、そういうときは潔く誤ります。または、「僕はこう思う」と「自分を主語」にして言い切るようにしていて、そのかわり自分が全責任を取るんですけどね。

高齢者向けの市民講座で澤氏が得たもの

西村氏:
例えば、具体的にどんなオーダーがありましたか?

澤氏:
最も刺激的だなと感じた依頼が、中高年向けに新聞で集客した「ITをわかりやすく説明する市民講座」ですね。一番若くても60代、上は何歳かわからないくらい。(笑)その人たちに最新のテクノロジーについて話してくれという依頼でした。

そのときのテーマは「この方々が、お孫さんと電気屋さんに行ったときヒーローになる方法」という観点でプレゼンテーションしたら、かなり好評でした。そこで、面白かったのが、僕よりもITに詳しい人がいらっしゃったんです。それもまた質疑応答が楽しくて、僕自身のインプットになりました。

西村氏:
60代とか70代の方々にお話をされる際、「どんなことを伝えたら刺さるかな」と考えると思いますが、具体的にどのような準備をされたんですか?

澤氏:
先程ちらっと「プロファイリング」とお話しましたけど、これを丁寧に行いました。60代や70代の知り合いは僕にもいる。「高齢者」っていうざっくりとしたイメージではなくて、男女とかITに詳しいかどうかとか、色々なタイプを頭で思い浮かべます。

その一人一人にどんな話をするのかというストーリーを細かく作っていくわけです。それを足して割ったものが最終的なプレゼンテーションのコンテンツになります。偏ってしまうと、特定の人にしか響かなくなってしまうので、それぞれに対して相応の形でコンテンツ化することが大切です。

プロファイリングは、なるべく素早く行っています。プレゼンテーションの経験を積むほどに速く短時間で済むようになってきていますね。その代わり、脳内がずっとプレゼンテーション。人に対して何かを伝えるにはどうしたら良いのかを考えています。

「自分で言語化できるか」が理解度の基準になる

「脳内バックグラウンドタスク」でインプットを自動化

西村氏:
常にアンテナが立っているような状態ですね。

澤氏:
さっき西村さんが「インプットの自動化」とおっしゃっていましたけど、まさに自動化なんですね。IT的な視点でいうと「脳内バックグラウンドタスク」と呼んでいます。PCってバックグラウンドで常駐しているソフトウェアがあるじゃないですか。

通知がきたらプッシュするメールソフトとか。脳の中に同じようにバックグラウンドで、アンテナを張っておくんです。生活しているだけで自動的に情報がインプットされるようになります。すると、プレゼンテーションでのアウトプットの形が自然と決まってきます。

西村氏:
澤さんの場合は、脳内バックグラウンドタスクがプレゼンテーションなわけですね。自分自身で特定のなにかテーマを持っておくというのは大事なのかもしれません。

澤氏:
そうですね。もう1つあるのですが、皆さん「好きなもの」「欲しいもの」とかありますよね?時計とか自転車とかアイドルとか色々あると思います。

すると、たとえば「あの時計がほしいな」と特定の時計をイメージして、街を歩くとショウウィンドウにある時計が気になったり、道行く人の時計がきになったり、やたら目に入ってくるわけですね。

これって、マーケットがあなたに合わせて、多めに出してるわけではなく、勝手にアンテナが立ってるだけなんです。

「なんとなく知っている」「完全に理解できる」の違い

澤氏:
さきほどの話に繋がりますけど、無茶振りの依頼を受けた時、そのテーマのプライオリティを高くしておくんです。そうすると信じられないような情報が入ってくるようになるので、それをとにかく「言語化」していく。この言語化っていうのは、すごく大事なプロセスで、「なんとなく知っている」と「完全に理解できる」って凄くギャップがあるんです。

皆さん漢字で「バラ」と書けますか?手元に紙があれば書いてみてください。

書ける人ってほとんどいないと思うんですよ。でも、なんとなく読めるはずなんですよね。「薔薇」は草冠に「土」を書いて中に「人人」で下に「回」で「薔」になります。説明できましたよね。これが、理解する。要するに「言語化」できる人は理解して説明できるんです。そして、ちゃんと理解して説明すると人を行動させることができるんです。

プレゼンテーションはただ喋っただけで終わりではなくて、具体的にどう行動すればいいのかというところまで話してあげる。行動を引き出すと、連続性が生まれるんですよね。話を聞いて会場を出て終わりではなく、会場をでて行動する。これが先程のマーケティングの話とも重なりますね。

「問いかけ」からアイスブレイクを行いオーディエンスのプロファイリングをする

「あなたはどう思いますか?」に答えられますか?

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澤氏:
言語化という話をもう少ししますと、僕には「教育」というライフテーマがあるんです。現在の日本の教育を変えたいなと思っていて、このままだとまずいなって課題を感じています。それは、「考える事」を省いていることなんですね。考えなくても「正解はこれだ」と覚えたり、覚えられたら褒められたり。そういった教育を小学校から大学までやるんです。

大学はまだゼミとかあるから幾分マシですが。絶対の正解がある上で逆算する教育ばかりなんです。だから、「あなたはどう思いますか?」という質問をあまり受けたことがないと思うんですよね。

欧米では「What do you think?」というのが当たり前に行われています。日本では、「太郎はこのとき何を考えているか述べよ」なんて問題もありますよね。そんなの知るかよって話なんです。「僕はそうじゃないし」と思う。(笑)

そんな文章を読んだだけで“太郎”が考えていることなんてわからないですよ。「お腹空いている」だけかもしれないし。なにが正解かを探すのじゃなくて、「自分はどう思うのか」っていうのを考える。

アイスブレイクで行うコミュニケーション

澤氏:
考えるプロセスが大切です。ちなみに、この問いかけは、テクニックの話になるんですけどプレゼンテーションの「アイスブレイク」で使えますね。

たとえば、このあと会社に行く方は手を上げてみてください。(会場の殆どが挙手)

ありがとうございます。こういうことなんです。問いかけられたから何かしら答えなければならないんです。
アイスブレイクでの問いかけは、コミュニケーションできるわけですよ。ですので、そっけない対応、投げっぱなしでは、あまり良くないですね。

質問したら「ありがとうございます」と言う。オーディエンスに答えさせたからには、必ず反応するという義務がこちらに発生します。

無茶振りの依頼の話に関連するんですが、僕のプレゼンテーションは「誰でも歓迎」なんです。
60代であろうと70代であろうと大丈夫。本日のイベントもオーディエンスがどんな人たちかわからない状態なので、それを踏まえて誰にでも問いかけられるように、反応できるように心構えを作っておくことが大切です。

人は「共感」と「脅迫」で動く

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澤氏:
自分ごとにできるものって2種類しかないんです。それが「共感」と「脅迫」です。脅迫は瞬間的な効果があります。深夜のテレビショッピングなんかを見ていると「これが無いと、こんな不便になります」とかそういうのが脅迫です。

でも、脅迫はやりすぎると、逆効果になります。継続性がない。たとえば、「銃を突きつけられて金を出せ」と言われたら、殺されるかもしれないのでお金を払いますよね。でも、次の日に同じ人に遭遇したら「殺される前にお金を払わないと!」とはなりませんよね。通報しますよね。アクションにギャップが生じるんです。

一方で、プレゼンテーションをして「あなたの話が面白かったからお金を払います。また聞かせてください」となります。これが「共感」です。「また聞きたい」継続性があって、自動化している。その一番典型的な例が「ファン心理」です。

歌手とか俳優とか、アイドルとか、頼まれてファンになった方は居ないですよね?音楽を聞いたりテレビや映画を見たりしてファンになる。ファンというのは行動が自動化されているので、さらにCDを買ったりするようになります。ファンを作ることは共感で人を動かすために非常に重要な要素です。

ただ、ファンを作るということは、責任を伴います。アイドルであれば恋愛禁止のように。普段の生活を清廉潔白にしないと、期待に答えないと、ファンは離れていくんです。あるいは、凄まじく叩いてしまうことになる。ファンを作るにあたって腹をくくることが必要です。

人と「時間と空間」を共有したらそれはすべてプレゼンテーションという意識を持つ

プレゼンテーションでオーディエンスに持ち帰ってもらうもの

澤氏:
プレゼンテーションは、「プレゼント」が語源です。なので、オーディエンスに対してお土産を持って帰ってもらうことを考えましょう。「時間と空間」を共有するっていうのは世の中で最もコストがかかる行為なんです。それが無意味な状態であったり、価値がない状態っていうのは避けたいところです。この場をいかに価値のある状態にするのか、「何をお土産に持って帰ってもらおうか。喜んでもらえるのか」オーディエンスを主体に考えましょう。

プレゼンテーションが苦手な人って、「どうやって喋ろうか」「つまらないと思われたらどうしよう」と考えてしまうんです。でも、これってオーディエンス主体で考えられてないのです。無責任な思考なんですね。つまらないと思われたら、それはあなた次第でオーディエンスの責任じゃないから。だからこそ、何を持って帰ってもらうかを考えることがすごく大切なんです。

たとえば、結婚式の引き出物ってありますよね。いまはカタログギフトを貰うことが多いのですが、ぶっちゃけありがたくないですか?昔は食器などを貰っていたんですね。でも、二次会で持ち運ぶの大変だし、転んだら割れてしまう。持ち帰ってもらうというプロセスが抜けていたわけです。昔からの風習だからということで行われていた。

でもカタログギフトって、持って帰るのに苦にならないし、持って帰ったあとカタログを眺めるのも楽しい。そして、期限が迫ると「あの人から貰ったカタログそろそろ申し込まなきゃ」と結婚式を思い出してもらえる。味気ないと言う人もいると思うんですけど、僕からすれば、その後のお客さんのことを考えたら結構ベストなソリューションなんじゃないかなと思うわけです。

日常の些細な行動もプレゼンテーションの練習になる

澤氏:
オーディエンスの人が会場からでた後を考えないとプレゼンテーションは上手くいかない。今回は、プレゼンテーションがテーマのイベントなので、このあと皆さんがプレゼンテーションすることをイメージしてお話しています。このあと、会場を出てから時間と空間を共有して誰かと話すとなったら全部プレゼンテーションと思ってください。

毎回誰かと話している時間がプレゼンテーションの練習になります。僕は、コーヒーショップに入った時、コンビニのお会計すべてをプレゼンテーションと思っています。べつにそこで「私が千円札で支払う理由」を語るわけじゃないですよ!(笑)

お金の受け渡しとか、商品を受け取ったときの会釈とかアイコンタクトとかでも十分なんです。そうすると、「ありがとう」という癖がついたり丁寧に振る舞う習慣が身につきます。毎日こういった機会が訪れるわけですから、毎日練習に当ててみるのはいかがですか?という提案です。

西村氏:
世の中には「お客さんとして良く振る舞うことって何のメリットがあるの?」という方もいるわけですよね。それは違うと。良いプレゼンテーションをするためにプレゼントの仕方が大事だって考えると、自然とやってみようと思えますね。

歴史人物に学ぶプレゼンテーション術

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澤氏:
突然なのですが、アウグストゥス、チンギスハン、ナポレオンと世界を統治した人たちがいます。僕は、この歴史人物のプレゼンテーションに思いを馳せることがあるんですね。この3人はどうやって、何十万人の人々を動かしたのだろうって。だって、当時はマイクもスピーカーもなければ、ラジオもテレビもネットもない。マイクロソフトのPowerPointだってリリース前ですよ。(会場笑)

そう考えると、メディアは使えないわけです。チンギスハンがいくら声が大きかったとしても20万人とかに届くわけがないですから。それで、どうしたかというと「伝言ゲーム」なんです。伝言ゲームを制するものは世界を制する。一般的に伝言ゲームは、伝言した最初と最後でズレが生じるのを楽しむゲームですよね。でも、世界を制するわけですから、最初と最後が全く同じ状態。単に言葉だけでなく熱量も含めてなんですよ。

たぶん、チンギスハンにしろナポレオンにしろ、目の前にいる家臣とかに「俺、そろそろ世界統治しちゃおうかな。どう思う?」とか言うじゃないですか。家臣は「良いっすね!」とかそんな感じでやりとりするわけですよ。

その時の熱量が、民衆にまで伝わっていかなければならない。これは、脅迫だけではうまくいかないわけですよね。「言うこと聞かないと殺すぞ」と言ったもんなら、逆に家臣が仲間を集めて反逆されてしまいますから。

だから、「我々の生活をもっと良くして民衆を喜ばせよう。だから領土を広げよう」ということで、だんだん伝わっていき、兵士たちが動くというわけです。これがリーダーシップと呼ばれるものです。リーダーシップというのは優れたプレゼンテーションから出てくるものです。

それは、単に喋りがうまいとかじゃなくて、オーディエンスの心をどうやって掴むかという点が大事。プレゼンテーションの根幹ですね。ハッピーになるのは自分ではなく、民衆。皆のために誘うから、人々が動くわけですよね。

「情報」ではなく「体験」を伝える

澤氏:
有名な経済学者にピーター・ドラッカーという方がいます。この人は何十年も昔に、「物を売るな、体験を売れ」と言っています。体験(エクスペリエンス)という言葉は、いまでもITのの世界でしょっちゅう出てくるキーワードなんですけど、体験を伝えるというのはオーディエンスに追体験してもらうことでもあります。

「ミシュランの星付きのレストランに行かない?」と言われるよりも「昨日行ったお店が本当に美味しかったからこんど一緒に行かない?」の方が魅力的に感じませんか?文字だけの情報を見せられるより、熱量を持った体験の共有を語られる方がよっぽど行きたいという気持ちになるんです。体験は人を動かします。

今すぐプレゼンテーション力アップに使えるテクニック

澤氏:
ここからは、プレゼンテーション力向上に使えるテクニックの話になります。僕がよくやっているのが「画像検索」です。たとえば、「Security」と検索すると、カギやパスワード、盾やガードマンが出てきます。あくまでこの画像をスライドに使うわけではなくて、ここから連想する脳のトレーニングになるのです。

「セキュリティのプレゼンテーションをするから、ガードマンを例え話に使ってみようかな」とかストーリーのヒントになります。そして、最終的に画像をスライドに使う。関係ない写真は視覚的なノイズになるので良くないです。オーディエンスの思考が止まってしまいます。

あと、皆さんは自分の動画を撮影したことがありますか?(会場 半数近く挙手)

意外といらっしゃるんですね。では、現実の自分とのギャップに落ち込んだことがある人挙手!(会場爆笑)

実は、自分のことって動画でみないとわからないものなんですよね。自信があってもプレゼンテーションがうまくない人って自分の姿を見ていないんです。喋りに酔ってるんですね。自分の姿にフィードバックを行う上でのチェックポイントとしては、立ち方・手の位置・頭です。

また、最後の決めゼリフも決めてください。たとえば、スティーブ・ジョブズの「Stay Hungry, Stay Foolish」という言葉がありますよね。最後にセリフをきちっと決めるとオーディエンスの満足度があがります。僕は、プレゼンテーションの最後に駆け上がるようなイメージで「ありがとうございました!」と言っています。「ご清聴ありがとうございました」と良く聞きますが、説明的で締りが悪いので、「ありがとうございました!」です。

また、知人が言っていた話なのですが、自分の横に「情熱大陸」のカメラが回ってると思えって。(笑)そうすると、ちょっとした仕草にも注意が行き渡るようになるので、それを意識していれば、人前に出た時恥ずかしいことが起きる確率がどんどん減っていくので、それが良いんじゃないかなと思います。取材を受けてると思って生活してみてください。

ありがとうございました!

西村氏:
澤さん、ありがとうございました!

まとめ

プレゼンテーションと聞くと、スライド作りや声の出し方など「テクニック」を最重視するイメージを持ってしまいがちです。しかし、日本マイクロソフトのプレゼンの名手、澤氏によると実はプレゼンテーションを磨く上で大切なのは「日常がプレゼンテーション」と考えて行動することなのだそうです。

誰かと「時間と空間」を共有する機会は全てプレゼンテーションという意識の徹底を行うことで、「小手先のテクニック」ではなく「人を動かすプレゼン力」を身につけることができるでしょう。

一般的なプレゼンノウハウと異なる澤氏のプレゼンテーションへの考え方は、喋ることに苦手意識を持っている方にとって非常に学べることがあります。コーヒーショップやコンビニなど、ちょっとした会話の機会を活かし、プレゼンテーションが得意になる習慣をみにつけてみてはいかがでしょうか。