Z世代向けのマーケティングに取り組む企業が増える中、そのリアルな姿を捉えることに苦労している担当者は多いのではないでしょうか。

株式会社SHIBUYA109エンタテイメント・SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏に、2023年3月に出版された書籍『若者の「生の声」から創る SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』の内容を交えながら、彼らの価値観を理解するためのヒントを伺いました。

プロフィール

長田 麻衣氏
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長
総合マーケティング会社にて、主に化粧品等の商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPR サポートを経て、2017年に株式会社SHIBUYA109 エンタテイメントに入社。SHIBUYA109 マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018 年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。 現在は毎月200人のaround 20(15歳~24 歳の男女)と接する毎日を過ごしている。TBS『ひるおび!』コメンテーター・著書『生の声から創る SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』、その他メディア寄稿・掲載多数

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目次

  1. 「Z世代」は一括りにはできない
  2. 「界隈」を把握し、理解していく
  3. Z世代を理解するためのキーワード「不安」と「デジタル」
  4. Z世代の生の声を活かした、SHIBUYA109のマーケティング事例
  5. マーケターとして、リスペクトを忘れない

「Z世代」は一括りにはできない

ferret:
「Z世代は〇〇だ」と一括りにされることは多いですが、中には思い込みや偏った考え方が含まれているのではないかと思います。長田さんが感じる「Z世代についての誤解」について、これまでの経験からお話しいただけますか。

長田:
「Z世代」と言っても、価値観や好きなもの、商品を選ぶ軸、関心のあることは細分化・多様化しているため、一括りにはできないと感じています。

例えば、私たち「SHIBUYA109エンタテイメント」のマーケティング部門である「SHIBUYA109 lab.」のインタビューで集まったZ世代同士でも、それぞれがよく見ているYouTuberについて全く知らないということがあります。

Z世代だから〇〇が好きと一括りにはできないですし、マスのトレンドと言えるようなものもなく、「Z世代はこうである」とは言い切れません。

コンテンツが供給過多になっている中で、同じものを同じ熱量で見ることはなくなっているのだと思います。「呪術廻戦」や「鬼滅の刃」などのビッグコンテンツはありますが、そこに対する熱量の濃淡が激しいと感じます。

「界隈」を把握し、理解していく

ferret:
そうなると、マーケティングのやり方も細分化していきますね。「Z世代」というよりは、「自社の顧客のZ世代を理解していくことが重要ですね。

長田:
その通りだと思います。どういうことに共感してもらいたいか、参加してもらいたいか、という軸で考える必要があります。

Z世代の中には、高い熱量で同じことに共感して集まっている「緩いコミュニティ」のようなものが小粒に無数にあり、それらは「界隈かいわい)」と呼ばれています。

界隈(かいわい)
高い熱量で同じことに共感して集まっている「緩いコミュニティ」のようなもの

マーケティングにおいては、どんな「界隈」に自分たちの商品やサービスを受け入れてもらいたいかを考え、その界隈を捉え、施策を練っていくという取り組みが大切なのではないか、と思います。

ここ数年で共通言語になった「界隈」

ferret:
「界隈」という言葉は、いつ頃から使われ出したのでしょうか。

長田:
私は今32歳ですが、大学生の時に「界隈」という言葉自体は耳にしたことがありました。
ここ数年で、使う若者が増えてきたと感じます。

インタビューをしていると、例えば「K-POPが好きな子界隈だとこういうのが流行っていて…」というような言い方を聞く機会が増え、「界隈」という言葉が共通言語になっているのに気づきました。

「コミュニティ」という表現だと、かっちりとした枠がある印象を受けますが、「界隈」という表現には、もう少し緩い、グラデーションのようなニュアンスがあり、そこが言葉としてしっくりきて、よく使われるようになったのではないかと思います。

SNSを見ると、界隈が見えてくる

ferret:
事業会社のマーケティング担当者が、そのようなコミュニティ(界隈)にアプローチするには、どのような方法があるでしょうか。

長田:
SNSを見ると、界隈ごとに楽しんでいる様子が見えてくるのではないかと思います。

例えば、食のカテゴリーのマーケティングをされている方なら、食がどう楽しまれているかをSNSで一通り見て、そこから分類をして、どんな界隈があるのかの仮説を作っていく。そうすると、食の楽しみ方の全体像も見えてきますし、どこに自社の商品と親和性があるのかも何となくあてがつくのではないかと思います。

そうした分類を、SNSのデータでしていくといいのではないかでしょうか。

ferret:
その際に見るべきSNSは何になりますか。

長田:
Z世代は、好みの世界観は細分化していますが、コミュニケーションの基盤としてビジュアルを活用しているという共通点があります。そのため、写真や動画でコミュニケーションがたくさん生まれるプラットフォームをチェックするのがおすすめです。

TikTok、Instagram、Twitter、FacebookなどいろいろなSNSがある中では、主にInstagramが使われているので、まずはInstagramを見て界隈を捉えていくのが適切ではないでしょうか。

2021年にSHIBUYA109 lab.が実施した調査結果

情報収集の場としてのSNS

Z世代を理解するためのキーワード「不安」と「デジタル」

ferret:
Z世代向けのマーケティングを行う担当者は、彼らを理解するためにどういったことを前提として知っておくべきでしょうか。

長田:
彼らが生まれ育った環境が、価値観や消費行動に紐づいています。
キーワードとしては、「不安」と「デジタル」です。

キーワード➊「不安」

リーマンショックや東日本大震災、熊本や西日本の集中豪雨、そして新型コロナウイルス感染症など、小さいころから今まで、これほど多くの災難を経験した世代はなかなか例がありません。






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