「プレゼンで“つまらないと思われたらどうしよう”と思うのは、自分本位な思考」マイクロソフト澤円氏が語るプレゼンの極意
人は「共感」と「脅迫」で動く
澤氏:
自分ごとにできるものって2種類しかないんです。それが「共感」と「脅迫」です。脅迫は瞬間的な効果があります。深夜のテレビショッピングなんかを見ていると「これが無いと、こんな不便になります」とかそういうのが脅迫です。
でも、脅迫はやりすぎると、逆効果になります。継続性がない。たとえば、「銃を突きつけられて金を出せ」と言われたら、殺されるかもしれないのでお金を払いますよね。でも、次の日に同じ人に遭遇したら「殺される前にお金を払わないと!」とはなりませんよね。通報しますよね。アクションにギャップが生じるんです。
一方で、プレゼンテーションをして「あなたの話が面白かったからお金を払います。また聞かせてください」となります。これが「共感」です。「また聞きたい」継続性があって、自動化している。その一番典型的な例が「ファン心理」です。
歌手とか俳優とか、アイドルとか、頼まれてファンになった方は居ないですよね?音楽を聞いたりテレビや映画を見たりしてファンになる。ファンというのは行動が自動化されているので、さらにCDを買ったりするようになります。ファンを作ることは共感で人を動かすために非常に重要な要素です。
ただ、ファンを作るということは、責任を伴います。アイドルであれば恋愛禁止のように。普段の生活を清廉潔白にしないと、期待に答えないと、ファンは離れていくんです。あるいは、凄まじく叩いてしまうことになる。ファンを作るにあたって腹をくくることが必要です。
人と「時間と空間」を共有したらそれはすべてプレゼンテーションという意識を持つ
プレゼンテーションでオーディエンスに持ち帰ってもらうもの
澤氏:
プレゼンテーションは、「プレゼント」が語源です。なので、オーディエンスに対してお土産を持って帰ってもらうことを考えましょう。「時間と空間」を共有するっていうのは世の中で最もコストがかかる行為なんです。それが無意味な状態であったり、価値がない状態っていうのは避けたいところです。この場をいかに価値のある状態にするのか、「何をお土産に持って帰ってもらおうか。喜んでもらえるのか」オーディエンスを主体に考えましょう。
プレゼンテーションが苦手な人って、「どうやって喋ろうか」「つまらないと思われたらどうしよう」と考えてしまうんです。でも、これってオーディエンス主体で考えられてないのです。無責任な思考なんですね。つまらないと思われたら、それはあなた次第でオーディエンスの責任じゃないから。だからこそ、何を持って帰ってもらうかを考えることがすごく大切なんです。
たとえば、結婚式の引き出物ってありますよね。いまはカタログギフトを貰うことが多いのですが、ぶっちゃけありがたくないですか?昔は食器などを貰っていたんですね。でも、二次会で持ち運ぶの大変だし、転んだら割れてしまう。持ち帰ってもらうというプロセスが抜けていたわけです。昔からの風習だからということで行われていた。
でもカタログギフトって、持って帰るのに苦にならないし、持って帰ったあとカタログを眺めるのも楽しい。そして、期限が迫ると「あの人から貰ったカタログそろそろ申し込まなきゃ」と結婚式を思い出してもらえる。味気ないと言う人もいると思うんですけど、僕からすれば、その後のお客さんのことを考えたら結構ベストなソリューションなんじゃないかなと思うわけです。
日常の些細な行動もプレゼンテーションの練習になる
澤氏:
オーディエンスの人が会場からでた後を考えないとプレゼンテーションは上手くいかない。今回は、プレゼンテーションがテーマのイベントなので、このあと皆さんがプレゼンテーションすることをイメージしてお話しています。このあと、会場を出てから時間と空間を共有して誰かと話すとなったら全部プレゼンテーションと思ってください。
毎回誰かと話している時間がプレゼンテーションの練習になります。僕は、コーヒーショップに入った時、コンビニのお会計すべてをプレゼンテーションと思っています。べつにそこで「私が千円札で支払う理由」を語るわけじゃないですよ!(笑)
お金の受け渡しとか、商品を受け取ったときの会釈とかアイコンタクトとかでも十分なんです。そうすると、「ありがとう」という癖がついたり丁寧に振る舞う習慣が身につきます。毎日こういった機会が訪れるわけですから、毎日練習に当ててみるのはいかがですか?という提案です。
西村氏:
世の中には「お客さんとして良く振る舞うことって何のメリットがあるの?」という方もいるわけですよね。それは違うと。良いプレゼンテーションをするためにプレゼントの仕方が大事だって考えると、自然とやってみようと思えますね。
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