毎年の訪日外国人の増加に伴い、新しいサービスを展開する企業が増えています。国としてもビザの取得要件を緩和するなど受け入れを強化していることから、今はまだ導入していなくとも、積極的に検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、訪日外国人をターゲットにしたサービスで成功したり、話題を集めたりしている事例をご紹介します。自社で参考にできそうなポイントを探してみましょう。

訪日外国人の現状とニーズ

訪日外国人は年々増加しています。特に*アジア圏からの流入が多くの割合を占めています。*これは、アジア圏の経済成長によって、娯楽として海外旅行に出かける人が増えていること、日本の政策により、アジア圏を中心としたビザの取得要件の緩和策が実施され、日本に訪れやすくなっていることなどが要因です。

訪日の目的も、ビジネスではなく観光目的の旅行者が増えています。日本食や温泉など、日本独特の文化を楽しみたいと考えているようです。

好調な経済成長にともなってか、一度の旅行での支出額は増えています。2020年の東京オリンピックに向けて今後も日本経済への影響は大きくなっていくと予想できるので、サービスを提供する企業への恩恵も期待できそうです。

モノ消費からコト消費へ

2012年頃から「爆買い」という言葉が流行するなど、訪日外国人の消費量と金額はたびたび話題になっています。

今後もしばらく勢いは止まらないといわれていますが、消費の中身が変わってきているようです。

参考:
最近の訪日外国人消費~旅行者増で消費額増。中国人の「爆買い」は中身が変わるも消費意欲は変わらず。今後はコト消費拡大が鍵。1泊増で+0.4兆円。|ニッセイ基礎研究所

今後は、モノ(商品など有形のサービス)よりもコト(経験など無形のサービス)が求められると予想されています。このような現状とニーズを把握し、ターゲットとなる訪日外国人に喜ばれるサービスを考案してみましょう。

詳しい数値やグラフは下記記事にまとめています。参考にしてみてください。

参考:
観光?買い物?訪日外国人のニーズ最新状況を解説|ferret[フェレット]

訪日外国人向けサービスの事例

観光支援:手ぶら観光支援

2018年1月から、JTBとパナソニック、ヤマトホールディングスが、訪日外国人が手ぶらで観光できるサービス「ラゲージ・フリー・トラベル」を開始します。

「ラゲージ・フリー・トラベル」では多言語に対応した専用サイトで予約すると、重い荷物を空港からホテル、違うホテル間で配送してもらうことができます。
日本語で送り状を記入する必要がないため、気軽に利用できます。

参考:
JTBなど手ぶら観光支援サービス 来年から開始|毎日新聞

翻訳:多言語音声翻訳サービス

2018年11月から、NECが「多言語音声翻訳サービス」を開始します。観光で使う会話向けの高精度翻訳エンジンを利用し、日本語・英語・中国語・韓国語に対応しています。
1台で双方向からの会話を翻訳することができます。

タブレットやスマートフォン版のアプリも提供しているため、業務の場面に応じた端末を利用できます。また、商品名などの固有の単語も登録できます。

参考:
NEC、訪日外国人観光客への接客を支援する「多言語音声翻訳サービス」|マイナビニュース

外食:ターゲットを明確にしたサービス

関西の飲食関連企業が、訪日外国人向けのサービスを次々と展開しています。

「がんこ寿司」を運営するがんこフードサービスは、寿司や天ぷらなど、訪日外国人に人気の料理を組み合わせてセットメニューを提供しています。

日本語が話せなくても注文しやすく、視覚的にもイメージが伝わりやすくなるよう、サンプルを店頭に並べています。

ホテルグランヴィア京都は、「LGBT(性的少数者)」の訪日宿泊客に小冊子を配布しています。小冊子では、了承を得た京都市内の飲食店を紹介しています。

お好み焼きチェーンの「千房」は、台湾のブロガーを通して情報発信し、売上が増加しています。訪日外国人のインフルエンサーを活用した戦略が成功につながっています。

参考:
訪日客に「細やかおもてなし」…関西の外食企業など、さまざまサービスで“競演”|産経WEST

旅館:強みを活かした戦略で客数が36倍に

兵庫県にある城崎温泉は、大阪から電車で3時間かかる不便な立地です。それにも関わらず、訪日外国人の客数は直近5年で36倍にも増えています。

城崎温泉には大型ホテルが少なく、小規模な家族経営がほとんどです。団体で訪日するアジア圏からの観光客を狙えない代わりに、個人で訪日する欧州・北米・オーストラリアからの観光客をターゲットにしたサービスを展開しています。

欧米のホテル予約サイトと連携したり、城崎温泉に関する英語の観光情報サイト「Visit Kinosaki」を立ち上げたりと施策を講じ、個人客の取り込みに成功しています。また、自治体や日本企業との連携も深め、交通網も整備しています。

訪日外国人の実情を分析した上で、自サービスの強みを活かした戦略が成功の秘訣となっています。

参考:
外国人観光客が5年で36倍、城崎温泉の戦略とは|日経トレンディネット

住宅:ホテル・民泊に代わる滞在サービス

楽天が出資するシンガポールの不動産関連会社メトロレジデンスは、長期滞在する訪日外国人向けに、ホテル機能を持つ賃貸住宅「サービスアパートメント」の仲介を始めました。

利用者は、英語と日本語に対応する利用申込みサイトで物件を検索します。賃貸住宅ではあるものの、家具家電は完備されており、室内清掃サービスもあるため、ホテル並みの環境で過ごすことができます。

現在は、ビジネス客や富裕層の利用が多いようです。ホテルや民泊に代わる新しい滞在方法として、注目を浴びています。

参考:
訪日旅行、民泊だけじゃない 長期なら「賃貸住宅」も|NIKKEI STYLE

まとめ

訪日外国人には日本と違う文化や思想があるため、私たちが良かれと思うアイディアでも心に響かないことがあります。サービス開発の前にターゲットの価値観やライフスタイルを細かく分析することは、マーケティングにおいて重要な要素です。

国境を越えて喜ばれるサービスを提供できる企業になるために、自社の強みを活かしてできることを考えてみてはいかがでしょうか。