一般的に、「笑顔が映っているとエンゲージメント率が高い」傾向にあると言われていますが、なぜ笑顔があるだけでエンゲージメント率が高くなるのか理解できているでしょうか。

Webマーケティングは、数値によって科学的に説明できるものと、人間の感情に左右される心理学的なアプローチの両方が必要とされます。
Web担当者であれば、数字を分析する能力だけでなく、心理的な効果も理解しておくとより良い施策を行えます。

今回は、画像に人の顔を入れることでエンゲージメントが上がる理由と効果的な使い方を解説します。

笑顔がもたらす効果

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画像引用元:pexels.com

例えば、以下のような状況を想像してみてください。
今日、会社に行ったら、上司がとてもイライラしており、怒鳴り散らしていたら──
そのような状況下で働いていたら、チームのメンバーも朝からいい気分ではないでしょう。

オハイオ大学やハワイ大学の研究によれば、チームや一緒に過ごしている知人同士で会話をしていたり仕事をしているときに、人の感情が波動のように共鳴し、似たような感情になるといいます(これを*「感情接触感染」(emotional contagion)*といいます)。

ある人の感情に起因する現象・またはある人の感情が直接的なトリガーとなって、自分の心理がそれを自動的・無意識的に真似をしてしまう、これが感情接触感染が起こる仕組みです。

感情が感染する、という事実は、セールスや実学の世界でも実践されており、1937年にナポレオン・ヒルが著した『思考は現実化する』(Think and Grow Rich)でも、「積極的心構え」(Positive Mental Attitude)を持つことが成功に不可欠だと書かれています。

また、さらに遡れば、ローマ皇帝でストア派の哲学者でもあったマルクス・アウレリウス帝も『自省録』(Ta eis heauton)で、「ある出来事が起こっても、解釈次第で、笑顔にもなれば、心が痛みもする。だからこそ、心のレンズを調整して笑顔になり、人間関係を修復しよう」という趣旨の内容が書かれており、笑顔の持つ効果が描写されています。

モノよりも人の顔の方がエンゲージメントが高くなる?

人間は、相手の目を見てその人の感情を読み取ろうとする「クセ」があるので、人間がホームページ上の画面に登場するとつい見てしまうのです。

人の写真を入れるだけで、その人物と視線が合い、その情報があたかも自分と関係があるかのように思えます。
そのため、アイキャッチ画像をはじめとするさまざまな画像で人の画像、特に笑顔を入れると効果が高くなる傾向にあるのです。

男性の人物の写真は誠実・信頼感を表現し、女性の人物の写真は柔らかく、安心感を与える効果があると言われています。

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画像引用元:pexels.com

もっとも効果的なのは**「赤ちゃんの笑顔」**です。
丸い目・丸い顔・丸い鼻など、あらゆる特徴を「丸み」で説明できるように、視線が合えば、どんな性別・年齢層であっても「癒し」を与えます。
モノを売るという行為において、最も大きな敵は緊張であると言っても過言ではないので、癒しや安心感を与える赤ちゃんの写真は自己啓発書を中心として書籍などでも表紙になったりしています。

ただ、どんな場合でもとりあえず「赤ちゃん」の写真を使えばいい、というわけではありません。
ターゲットやニーズに応じて、ケースバイケースで人物の写真を使い分けるようにしましょう。

人の笑顔を活用する効果

それでは、人の笑顔の写った写真を使って効果的にエンゲージメントを上げるには、どのようにすればいいのでしょうか。
ここでは、4つのシチュエーションに分けて、笑顔の写真を効果的に使いこなす方法をご紹介します。

1. ユーザーとの繋がりを生み出す

無機質になりがちなWebサービスやWebメディアですが、サービスの作り手側を覗くことができれば、愛着を持つことができます

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スクリーンショット:2017年10月

ferret [フェレット] の場合は、メンバー紹介というページで製作側の写真を掲載しています。
多くのメディアが情報に付加的に著者名が掲載されるに留まる一方、書いている人(ライター)・製作している人(マーケター・デザイナー・エンジニア)の顔が見えるだけでも、親近感が湧くのではないでしょうか。

2. 感情に訴える

人の顔には*「表情」*という情報が自然と加わっています。
目の前の人が不安そうな顔をしているとこちらも不安になり、目の前の人が怒っているとこちらも不愉快になるでしょう。
その一方で、笑顔が咲き誇っている人を見て、不愉快になる人は少ないと思います。
それどころか、気分が良くなるのではないでしょうか。

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スクリーンショット:2017年10月

忙しいビジネスマンのためにオンラインアシスタントを提供しているサービスCasterBiz(キャスタービズ)では、多くの写真で笑顔の女性が写り込んでおり、相談しやすいように問い合わせ障壁を下げようとしています。
問い合わせをするのは敷居が高いように感じますが、笑顔を見せることで*「気軽に相談してもいい」*と思わせることができるのです。

3. 信頼を構築する

多くの海外のWebサイトが、Webサービスなどを立ち上げるときに*「テスティモニアル」*(Testimonial=「表彰状・推薦状」の意味)と呼ばれる推薦文を掲載しています。
これは、第三者によるレコメンデーションを読むことによって、そのサービスが信頼に足るものであると、ユーザーを説得させる効果があります。

しかし、顔写真のないテスティモニアルは、かえって説得力を欠いてしまうことがあります。
文字だけだとその人物が本当に推薦しているという様子が想像できないからです。

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Invisionのテスティモニアル / スクリーンショット:2017年10月

一方で、笑顔の写真が載っているテスティモニアルは、本当にその人物が推薦しているように思えてしまうので、ユーザーと強い信頼関係を結ぶことができます。

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ソフトバンクの社長メッセージ / スクリーンショット:2017年10月

コーポレートサイトでも、社長の挨拶文だけが掲載されているページよりも、社長の笑顔の顔写真にサインまでつけていくことで、その企業が信頼に足るとユーザーが判断しやすくなります。

4. 想像力を喚起する

金融や法務、デジタルなど、「お堅い」イメージがあるものほど、笑顔が効果的に働く場合があります。

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スクリーンショット:2017年10月

例えば、GMOペパボ株式会社の2018年新卒採用ページは、多くの社員が、笑顔で集合しています。
仕事と言えば「大変そう」「難しそう」そんなイメージを抱きやすいですが、笑顔を見ることで、和気あいあいとして働きやすそう、社員同士の仲が良さそうなイメージを与えます。

また、あまり想像力が湧かないものこそ、笑顔の写真を使うチャンスです。

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スクリーンショット:2017年10月

新宿でVRを体験できるVR ZONE SHINJUKUのホームページでは、多くの来訪者がVR体験をして笑顔になっている写真をカルーセルで連続で見せています。
こうした写真を集めることで、*「VRって、なんだか楽しそう」「なんだか面白そう」*というイメージを見ているひとに与えることができるのです。

まとめ

エンゲージメント率の低さが課題になっているのであれば、ぜひ一度笑顔の写真を使ってみるといいでしょう。
効果的に利用すれば、コンバージョンやエンゲージメントも上がるでしょう。