チーム内の誰かにストレスが集中していないかをケアする必要性

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色々なことが言い合える関係性が築けたとしても、チームが大勢の集合体である以上、全員がストレスを感じずに行動するということはとても難しいことです。

ストレスは水と同じで、高いところから低いところへと流れていくものです。つまり、チーム内では自然と序列の低い方へとストレスは吐き出されていくのです。立場が上の方ほど、無自覚なことが多いので気を付けなければなりません。

もし今、職場が「快適だ」「居心地がいい」「ストレスがない」「特に不満はない」と思って働けているとしたら、チームメイトの誰かがそのストレスを一手に引き受けているかもしれない、ということを気にかけましょう。
  

要注意!ストレスをケアするにはどうしたらよいのか!

では、どうやって解決すればいいのでしょうか。

「仕事そのものが大変なわけではないが、相談もなく押し付けられることにストレスを感じた」

そんな経験はありませんか。つまり、私たちは「我慢や苦労を誰にも気付いてもらえないことにストレスを抱える」傾向があります。「相談する時間もなく、面倒な仕事を押し付けてしまって本当に申し訳ないね、いつもありがとう」という一言をもらえるだけで、ストレスは半減します。チーム内でストレスがどこに吐き出されやすいか、そんなことにも気を配ると皆が働きやすくなります。それは普段のビジネスシーンにおいても同様で、気付かないうちに私たちはストレスを与えているかもしれません。

例えば、社屋の清掃をしてくれている方々にも対しても同じことが言えます。ゴミの出し方のマナーやトイレの汚れなど、思い当たる節はあるはずです。「掃除をするのが仕事だろ」という横柄な態度ではなく、「いつも清掃ありがとうございます。私たちに何か要望があれば気軽に言ってくださいね」という一言は大事だと思いませんか。

また、これは知人の男性看護師から聞いた話ですが、病院の看護師という職業柄、どうしても女性の多い職場になるそうです。そうなると本人としては(勝手に)肩身が狭い思いをしてしまうそうです。もちろん、女性看護師が意図的にそういう雰囲気を作り出していることはないはずですが、女性がほとんどを占めるなかで男性の肩身が狭いのは何となくうなずけます。

職場で高い所の電球が切れた時、その男性看護師は「今回も俺が電球を取り替えたほうがいいのかな」と思うそうです。逆の例もあります。男性が多い職場では、「これは女性の私がやるべきことかな」と(いう無言の圧力を勝手に)感じることがあるそうです。肩書によってヒエラルキーがはっきりしがちなビジネスの世界では、特に気を付けたいポイントの1つです。
  

2002年日韓W杯こそヒエラルキーを上の立場から崩した成功事例

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ここからは、そのヒエラルキーを上の立場の人から崩していくことで成功した事例を紹介します。

サッカー日本代表が世界舞台で好成績を残している時、ある1つの共通点があります。それは、抜群のキャリアと影響力を持つベテラン選手が決まって控えメンバーに入ってチームを支えているという点です。

2002年日韓共催ワールドカップベスト16進出は最たる例です。
その時は、日本がワールドカップに初出場した1998年フランス大会を経験している中山 雅史さんや秋田 豊さんが控えメンバーでベンチにいました。2人の大ベテランは、控えメンバーに課される辛いサーキットトレーニング等をいつも先頭に立って全力で取り組み、チームを鼓舞していました。

秋田さんは2002年のできことを回想しながら、私に次のように話してくれました。

「初戦のベルギー戦、スタメン出場の森岡(隆三)選手がケガした際、同じポジションなので自分が出場するつもりでいたけど、宮本(恒靖)選手が途中投入された。その時に俺は完全にバックアップ要員なんだと自覚した。一晩じっくり考えて、気持ちを切り替えるスピード感が大事だと思い、翌日から違う役割を率先して引き受けた。控え組のモチベーションをどう維持するかが一番大切だから、中山さんと話し合って全力で盛り上げた」

ここで中山さんと秋田さんが真逆の行動を取っていたら、その影響力の大きさがマイナスに働き、チームを壊すことになっていたはずです。若手へのアドバイスや控え組の鼓舞など、全力でプラスの働きかけをしたことがチームの大躍進を支えていたのです。

そのほか、中国で苦闘の末に優勝した2004年アジアカップ、ワールドカップベスト16進出を果たした2010年の南アフリカ大会なども同じです。

2010年南アフリカワールドカップでは、川口能活 選手や中村俊輔 選手などがベンチを温めましたが、それだけのキャリアを持つ選手が、出場する選手のために率先して動いたという話があります。リーダー的存在が自らの影響力を自覚し、チーム優先の精神で後方支援をし続けたことが、日本の活躍の原動力なのだと思います。大ベテランも試合に出たい気持ちは変わりません。

このように、弱い立場にストレスが吐き出されないための気遣い、若手が存分に実力発揮できる環境づくり、ベテラン組が先頭に立ってチームのあるべき姿を示そうとする誇り、チームの勝利を優先した行動がチームワークを生むのです。