ビジネスシーンにおけるコミュニケーションが占める割合は60%以上と言われており、今も昔も重要度は変わっていません。かつて電話がメインだったビジネスコミュニケーションはすぐにメールが主役になりました。

メールの文化が根づいて早いもので10年以上が経過。現在はリアルタイムで即効性があり、より双方向なやり取りが実現できる「ビジネスチャット」に注目が集まっています。

この連載は「ビジネスチャットが変えるワークスタイル」を掲げ、ビジネスチャットがもつ特徴を踏まえつつ、それが既存ビジネスシーンにどのような影響を与えていくのか、またどのようなメリットをもたらすのかを実例を交えてご紹介していきます。第4回目となる今回のテーマは、「ビジネスチャットを導入して具体的に変わってしまった業務」です。
  

ビジネスチャット(社内SNS)とは

8699_013.jpg

この記事を読んでいる方の中でも「ビジネスチャットってメールと何が違うの?」「具体的にどんな運用をしているの?」というシンプルな疑問を持っている方も多いはずです。

ビジネスチャットは基本的には”業務連絡”の一部を代替するサービスと考えてもらって問題はないのですが、具体的にどのような業務がどう効率化されるのかという点があまり認知されていない状況があります。

そこで今回はビジネスチャットの最大の特徴である「非同期型コミュニケーション」の特性を踏まえつつ、過去業務と知恵を絞ってやっていたことが実際にビジネスチャットを導入した後にどのように変化したのか、というのを具体的にご紹介します。
  

非同期コミュニケーションについて - メリット・デメリット -

8699_014.jpg

非同期コミュニケーションとは

まずはビジネスチャットが主に担う業務連絡の特徴である「非同期型コミュニケーション」について説明します。

コミュニケーションには「同期型コミュニケーション」と「非同期型コミュニケーション」という概念があることはご存知でしょうか。

簡単にいえば「同期型コミュニケーション」はお互いがお互いの時間を共有してやりとりし、「非同期型コミュニケーション」はお互いが異なる時間でコミュニケーションを成立させるものになります。

例えば、日常の中でいうと家族に買い忘れたもののお使いを頼むシチュエーションでは、すぐに「電話」して品目を伝えて頼むのは「同期型コミュニケーション」にあたり、冷蔵庫に買い物リストを貼っておいてあとで確認して時間がある時に買いに行ってもらうのが「非同期型コミュニケーション」になります。

ビジネスの世界でも「電話」「会議」は代表的な同期型コミュニケーションであり、「メール」が代表的な非同期型のコミュニケーションになります。
  

非同期コミュニケーションのメリット・デメリットについて

続いて、ここからは「同期型コミュニケーション」と「非同期型コミュニケーション」、それぞれのメリットとデメリットについてご紹介していきます。

まず押さえておきたいポイントは、「同期型のコミュニケーション」の最大のデメリットが「連絡をした後、相手の返答を待たないと次の仕事が始められない」という点だということです。

情報を発信する側としては、情報を受け取る側に早く返してもらうために工夫が必要となります。そのため、確かなやりとりになるように"優先度が高い"というアピールを行う必要がありました。しかし、これは受け取る側としては"プレッシャー"として伝わるケースが多く、それが故に簡単な返答になってしまったり、上手く伝わらなかったりなど、結局はその瞬間の受け手側の仕事やパフォーマンスによってコミュニケーションの質に大きな影響が出てしまうことが珍しくありません。

その理由は、ビジネスにおける「同期型のコミュニケーション」の代表例である”電話”と”会議”において不満が出るケースが多く見られます。仕事は継続して行うものなので、受け手側としては今実行している仕事を中断しなければならないため、お互いの時間を消費しながら行うことで、よりコストを意識した動きが求められます。つまり、一般的には「同期型のコミュニケーション」は発信側が有利なコミュニケーションと言えます。

ただ、「非同期型コミュニケーション」は異なるタイミングでのコミュニケーションになるので、仕事は中断せず時間的にも割り込まれません。そのため、自分で優先度やタイミングを制御できるので時間の使い方を受け手側の自分がコントロールできます。仕事を中断させてもいいし、自分にとってより高い優先度の仕事を先に終わらせてから対応する、ということも可能です。

また、”考える時間”を取りやすいのも隠れたメリットです。「同期型コミュニケーション」は同じ時間を共有するのでフィードバックをすぐ貰いやすいですが、検討する時間が限られ、また自分が検討している間もほかの参加者の時間を消費するので効率がよくありません。

同期型コミュニケーションにもメリットは存在

とはいえ、「同期型のコミュニケーション」においてもメリットは存在します。時間と時には場所を同じくして、コミュニケーションを取ることで参加者全員が問題に関与するシチュエーションや、迅速に答えを出さなくてはならない時に「同期型のコミュニケーション」は最適です。

具体的に、どのようなシーンを指しているのかというと、例えば、セキュリティインシデントが発生した時やシステム障害対応などが発生した場合がそれに該当します。このような場合、「非同期型コミュニケーション」で対応しようとすると問題解決に連携ミスや多大な時間を要したり、マイナスの影響につながってしまいます。

「非同期型のコミュニケーション」はやり取りしなくてはならない人が多ければ多いほど、細かい対応が求められることになります。さらに相手の顔や反応がすぐにはわからないので、自分の意図したとおりに伝わったかがわかりにくい場合が多いです。その点、「同期型のコミュニケーション」は同じ時間を共有しているので無駄なく全て同時に伝えることができます。

●同期型のコミュニケーション

・メリット:
迅速な対応が求められる時に早くフィードバックが出来る
関係者全員に即座に情報共有が出来る
時と場所を同じくすることで問題があればすぐに指摘し、相手のフォローが出来る

・デメリット:
今行っている他の作業を中断しなくてはならない
参加者全員の時間を消費するのでコストを特に意識する必要がある
検討する時間があまりとれない(とると全員に影響してしまう)
その時のパフォーマンスや他の作業が影響してしまう

●非同期型のコミュニケーション

・メリット:
自分のタイミングで返答できるので、作業時間がコントロールしやすい
作業が中断されない
”考える時間”が取りやすいのでその時のパフォーマンスの影響を受けづらい

・デメリット:
関係者が多い時に細かい対応を求められる
迅速な対応と意思決定が不得意
自分が意図したとおりに伝わったかがわかりづらい