従業員に、いかにやりがいを持って働いてもらうかは、企業にとって重要な課題のひとつです。近年はストレスチェックの義務化やメンタルヘルス関係のサービスが普及しており、顧客だけでなく従業員の満足度も重視する傾向にあります。

従業員の満足度は、給与や労働時間など、一般的には職場環境に対する評価が基準となります。一方で、近年は従業員の主観的な評価も含めた「働く幸福度」にも注目が集まっています。

前者は「ES(従業員満足度)」、後者は「EH(従業員幸福度)」といいます。EHは、社員個人の主観的な評価を数値化できるものとして、徐々に実用化され始めています。

今回は、EHに着目し、ESとの違いや最新のサービス事例を解説します。

EH(従業員幸福度)とは

EHとは「Employee Happiness」の略で、従業員幸福度を指します。従業員の仕事における幸福度という、主観的な評価を数値化する取り組みです。

ES(従業員満足度)との違い

EHと似た「ES」という言葉があります。ESとは「Employee Satisfaction」の略で、従業員満足度を指します。給与や労働時間などの待遇や、人間関係などの職場環境に対する評価を数値化します。

ESは待遇や職場環境といった労働環境の充実度EHは働く個人としての幸福度を図ります。この2つは一見相関関係がありそうに思えますが、実際は反比例することもあります。

例えば、仕事内容に辛さを感じていても、人間関係は良好であったり待遇が良かったりすると、EHは低くてもESは高くなる可能性があります。2つの指標をバランス良く検証し、周囲の環境も個人の内面も健全な状況を維持することが重要です。

EHの指標は「主観的幸福」と「客観的幸福」

「幸福学」という学問を築いた慶應義塾大学大学院の前野教授は、幸福度を図るための指標は2点あると述べています。

1点目は、個人の主観的な幸福度を客観的に測る「主観的幸福」です。2点目は、収入や健康、脳波などから測る「客観的幸福」です。現在は、「主観的幸福」の方が信頼性が高いといわれているようです。

参考:
従業員の幸福度を高めるワークショップ~人事が知るべき「幸せの四つの因子」とは?~|日本の人事部HRカンファレンス

幸福度を数値化するためには心理学、社会学、神経学、行動科学など様々な分野の知見を統合して調査が行われます。

アメリカで活躍するCHO

アメリカでは、従業員の幸福度の向上を目指す役職も存在しています。

CHOとは、「Chief Happiness Officer(チーフ・ハピネス・オフィサー)」の略で、従業員の幸福度の向上に務める役職のことです。従業員の幸福度の現状を把握し、研究に基づいた科学的なアプローチで職場環境の改善を図ります。

Googleを始めとしてシリコンバレーの企業が次々と導入しており、注目を集めるようになりました。アメリカでは、CHOの役職を設けてから売上が伸びたり、従業員の定着率が90%まで向上したりという成果を残している企業もあるようです。

参考:
「CHOとは?」|日本の人事部

EHのサービス事例

様々な視点から行う従業員幸福度調査

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従業員(EH)幸福度調査

株式会社イマージョンは、2014年から「従業員幸福度調査」のサービスを提供しています。研究を重ね、2017年からは内容を強化したサービスを本格的に開始しました。

従業員幸福度調査では、アンケートやインタビュー、職場観察など様々な視点から従業員の幸福度を調査します。

企業の規模や業種に応じて、他の類似した組織と比較することも可能です。EHの高い組織の事例も蓄積しています。調査後も結果の報告だけでなく、実例に基づいた具体的な改善策の提案も行っています。

ヒューマネージ

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ハピネス適性検査 P8

株式会社ヒューマネージは、「ポジティブ・サイコロジー」という心理学に基いて開発されたハピネス適性検査「P8」を提供しています。ポジティブ・サイコロジーとは、心のポジティブな面に着目した心理学のことです。

仕事に対して幸福感を抱く人は長期的に高いパフォーマンスを発揮するといわれています。「P8」はコンピテンシー適性検査やコーピング適性検査など様々な検査が組み合わされており、従業員のものごとの捉え方や特性を多角的に調査することが可能です。