国全体が働き方改革を進める中、副業を始めようと考えている方もいるかもしれません。
ですが、社会保険や所得税の手続きについて、ついつい面倒だからと調べないままにしていませんか?

今回は「労働契約法」や「所得税法」など副業を行う前に知っておくべき法律を紹介します。
「副業」として定義付けられている職種が業務内容はなく、また副業を専門で取り扱っている法律はありません。
そのため、副業を行う際には労働時間や税について定めた関連法を参考にする必要があります。

関連法の知識を知らないままにしておくと、気づかずに違法な行為に及んでしまいかねません。
ぜひ安心して副業を行うためにも、関連法や手続きの基本知識はおさえておきましょう。

参考:
[必ずチェック 副業するなら知っておきたい法律知識|NIKKEI STYLE] (https://style.nikkei.com/article/DGXNASFK2702T_X21C12A1000000?channel=DF280120166592&style=1)
副業する前に知っておきたい法律知識|日経ウーマンオンライン【副収入をラク~に稼ぐ】

就業規則の「副業禁止」は法律違反?〜労働契約法

入社のタイミングで渡されたり、社内規定の一部として閲覧したりと「就業規則」に触れたことがある方は多いでしょう。

就業規則は労働条件や社内の取り決めを定めたものです。
労働基準法第89条に記載されており、パートやアルバイトを含む労働者を常時10人以上の使用している事業所では、労働基準監督署への就業規則の届け出が義務付けられています。

企業によっては就業規則によって副業を禁止しており、副業を行う上では最大のネックとなる規則でしょう。

就業規則の法的効力

では、就業規則はどの程度の法的な効力を持つのでしょうか。
労働契約法では以下のように定められています。

第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

引用:労働契約法|e-Gov

このように就業規則に書いている労働条件で法的に認められるためには「合理的な労働条件が定められている就業規則」を「労働者に周知させている」ことが必要となります。

そのため、就業規則で副業が禁止されている場合、副業禁止が「合理的な労働条件」にあたるかが争点となるでしょう。

これに対して、兼業を理由にした解雇に対して元従業員が訴えを起こした小川建設事件では、東京地方裁判所が以下のように説明しています。

労働者は労働契約を通じて一日のうち一定の限られた時間のみ, 労務に服するのを原則とし, 就業時間外は本来労働者の自由な時間であることからして, 就業規則で兼業を全面的に禁止することは特別な場合を除き, 合理性を欠く
引用:[副業をめぐる法的規制と労働者の私生活の自由|労働制作研究・研修機構]
(http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2006/07/pdf/015-025.pdf)

つまり、就業時間外は労働者にとって自由な時間であるため、就業規則で副業を禁止することは合理的な労働条件ではないとしています。

一方で、就業規則における副業禁止の取り決めについて明確にした法律はなく、法的解釈は定まっていません。そのため自社の就業規則で副業が禁止されていた場合、それに従うのが無難でしょう。

参考:
[Q2.会社や従業員は就業規則の定めにしたがって行動することが要求されているのでしょうか。|労働政策研究・研修機構] (http://www.jil.go.jp/rodoqa/05_kisoku/05-Q02.html)
労働基準法関係|厚生労働省

副業は労働時間に入るの?〜労働基準法

本業の就業時間とは異なる時間に副業を行う場合、労働時間はどのように換算されるのでしょうか。それには労働基準法38条を参照する必要があります。

第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
引用:[労働基準法|e-Gov]
(http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049&openerCode=1)

つまり、副業であっても本業と同様に労働時間として換算されます。
そのため、本業と副業合わせて1日8時間・1週間で40時間以上働いた場合、時間外労働となり、時間外手当が発生します。

では、本業と副業の事業所どちらが時間外手当を払わなくてはならないのでしょうか。
この時、どちらの業務により多く時間を割いているかは関係なく、1日8時間以上になったタイミングで働いていた事業所に支払いの義務が発生します。

ちなみにフリーランスなどで業務委託として業務を請け負っている場合は、業務委託契約書の取り決めによるので注意してください。

参考:
「本業+副業」でも「残業代」が発生…政府の「副業」推進、知っておきたいポイント | 税理士ドットコム

副業を始めたら社会保険料が上がる?〜国民年金法

社会保険制度の一部である厚生年金保険は、労働者が高齢で働けなくなったり、何らかの病気やけがによって身体に障害が残ったりした時に保険給付を行う制度です。

一定の業種であり常時5人以上を雇用する個人事業所の場合、強制適用となり、労働者は必ず加入者となります。

2社以上に勤務し、それぞれ保険の適用基準を満たしている場合、2社の報酬を合算した額で事業所に届けなくてはいけません。

参考:
[社会保険の二重加入は可能か|給与計算の基礎知識] (https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/dual-contract-social-insurance/)

副業と本業で雇用保険はどちらに加入すればいい?〜雇用保険法

雇用保険は労働者が失業した場合に、生活の安定と就職の促進のための失業等給付を行う保険制度です。

雇用保険が適用される事業所は1つだけなので、本業と副業のどちらの事業所で加入するか決める必要があります。
基本的には「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係」の事業所、つまり収入を多く得ている本業で加入する必要があります。

参考:
[副業で思わぬ損を強いられた人から学ぶ教訓 | ワークスタイル | 東洋経済オンライン ] (http://toyokeizai.net/articles/-/164423)
[人を雇うときのルール|厚生労働省] (http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/koyou_rule.html)

副業で発生した所得にかかる税は?〜所得税法

先物取引での収益や先物取引での収益などの副業で得た収入は、所得税法の「雑所得」として換算されます。

では、雑所得に対して所得税はかかるのでしょうか。

所得税法第121条の一では以下のように定められています。

一 一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額」という。)が二十万円以下であるとき。
引用:所得税法 | e-Gov

つまり、雑所得が年間20万円以下の場合、課税はされず、確定申告も不要です。
一方で、雑所得が20万円を超えると、確定申告が必要であり、所得に応じた納税が必要となります。

なお、雑所得には副業で得た収入だけでなく、不動産売却によって得た収入や株式の配当金も合算されるので注意してください。

参考:
[サラリーマンの確定申告|雑所得が20万以上と20万以下の違いを教えて] (https://keiei.freee.co.jp/2014/12/08/salaryman-kakuteishinkoku/)

まとめ

副業を規制する法律はありませんが、実際に副業を始めるには現在勤めている企業の「就業規則」を参照する必要があります。

また、副業を行う前には、所得税法に取り決められている確定申告が必要がどうか、チェックしておくようにしましょう。確定申告で副業を含んだ正しい所得の金額を申告しないと、税の未納状態になってしまいます。

副業で年間20万円以上の収入がある方は、申告を忘れずに行うようにしましょう。