多くの組織では、目標を達成するために個々の役割があります。

例えば、私が勤めている東京電機大学では、事務部の中にも学生厚生担当、教務担当などの役割があります。学生厚生担当の中にも役割が細分化され、学生の課外活動(部活やサークル)関連を担当している人、就職サポート関連を担当している人などがいます。

会社組織にも人事や経理といった担当があり、その中でも役割が細分化されていることがほとんどです。

組織内で役割があることは当然と感じるかもしれませんが、今回は役割分担のメリット・デメリットについて改めて整理してみましょう。
  

メリットとデメリットを理解した上で役割分担を行う

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やるべきことが明確、責任の所在も明確、エネルギーを注ぎやすい、専門性を活かせる、など、組織内で役割分担を行うことのメリットはたくさん挙げられます。

ちなみに、皆さんは役割分担を行うことでのデメリットについて考えたことはありますか?
おそらく無いという方が多いのではないでしょうか。

本当に分担すれば上手く機能するのでしょうか。そもそも、何故、役割を分担する必要があるのでしょうか。その理由は、目標を効率よく達成するためにほかなりません。

しかし、実はここに落とし穴があるのです。
  

役割を明確にすることで姿を現すデメリットの正体

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どんな企業でも、目標の1つとして「利潤追求」があります。それを効率よく達成するために役割分担を採用しているはずです。

例えば、なかなか製品が売れないとします。
分担があることによって部署間で壁ができてしまうと、「俺たちは頑張っているけれど、営業が努力をしていないからではないだろうか」「そもそも開発がいい製品を生み出していないから売れるわけがない」と仲間割れや責任転嫁が生じることもあります。

本当は1つの会社として一丸となって解決していくべき問題ですが、部署ごとの争いになり、ただの個人主義、成果主義になりかねません。

ライバル企業と差を付けて、業界をリードしていく上で本来戦う対象は「外」にいるはずですが、役割を分担することによって内部分裂の危機となり、お互いを批判し合うなど、戦う対象が「内」に向いてしまうのです。

そんな風に内輪で争って、お互いを陰で批判し合ったり、文句を言い合ったりしているチームが強いはずがありません。

つまり、分担にも意外なデメリットがあることを知った上で、上手に活用しなければなりません。分担は決して万能ではないのです。
  

責任の所在を明確にすることでのメリット・デメリット

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メリットを改めて整理すると、役割分担を取り入れると責任の所在がハッキリすることです。

サボりを抑止することもできるでしょう。役割と責任が明確なので、一点集中でエネルギーを注ぎやすいという特長があります。そして何より、専門性が活かしやすいのが大きなメリットです。

入社したばかりの新入社員など、まだ能力が高くない人にも「これだけは確実にやってね」と言って任せやすいのもメリットです。

ただし、もちろん、ここにもデメリットは存在します。

責任の所在がはっきりしているからこそ、「自分にもしもミスがあったらチーム全員に迷惑をかけてしまう……」「まだ1人でできる自信が持てない……」など、必要以上にプレッシャーを感じてしまい、力を発揮できないということもあり得ます。

逆に、「これだけやっておけばいいんだ」という安心感から、役割以外の仕事に無関心になり、分担を越えて(+αの)仕事をしなくなります。

つまり、与えられた役割以外のことはやらなくなります。また、役割分担に頼り切っている中で、誰か1人でも分担を果たせなくなると、チーム全体が一気に機能不全に陥る、という大きな危険性をはらんでいるのも事実です。
  

部活動におけるミスが起こりやすい状況とは

例えば、私の大学サッカー部の場合は、チームビルディングの手法を用いて学生主体でチーム運営をしています。試合や練習の予定を組むスケジュール係が、うっかり練習試合を組み忘れたとしたら、公式戦直前で練習試合をしたくてもできなくなってしまうわけです。

さらに、ミスが起こりがちなのは分担の境界線だということです。例えば、バレーボールは守備時に6人の選手が各自のエリアを守りますが、エリアの境界線にボールが飛んできたとき、お互いにと譲り合ってしまい失点することがあります。

野球も、二遊間、三遊間など守備範囲の境界線でヒットが生まれます。
  

ビジネスシーンにおけるミスが起こりやすい状況とは

ビジネスシーンに置き換えても同じです。
「ここまでが私の仕事、ここから先は関係ない」では困ります。

何か小さな問題に気付いていても、「これは私たちの担当ではないから……」「きっとあっちの部署がやるだろう……」となっていまいます。そして、ミスが表面化した時に責任転嫁や身内批判が始まるようではチームとして機能するはずがありません。

あくまで、チームの目的を効率よく達成させる手段として役割分担を採用していることを忘れてはいけません。
  

スポーツにおける役割分担の重要性を考える2つの例

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例1. サッカー|ゴールキーパーとチームメートの関係

サッカーならば、わかりやすいのはゴールキーパーです。

「ゴールキーパーの役割は何ですか?」と聞けば、おそらく多くの人が「ゴールを守ること」と答えるでしょう。しかし、そもそもチームは試合に勝つことを目指しています。そこから11人にポジションと役割が与えられます。

ゴールキーパーというポジションは「主にゴールを守る」という役割を担うだけであり、全てはチームの勝利に意識が向いていなければなりません。

つまり、「失点されていないから俺は満足」ではなく、状況によってはゴールキーパーが攻めていくこともあるのです。負けているチームのゴールキーパーが、試合終了直前に自陣のゴールを捨てて相手のゴール前まで攻め上がり、勝利を目指す姿を見たことがあるのではないでしょうか。

つまり、「チームの目標を意識しながら役割を果たす」ことが何より大切なのです。
  

例2. サッカー|コーチと選手のコミュニケーション

スポーツの事例をもう1つご紹介します。

いい事例ではないので固有名詞は出せませんが、あるJリーグのフィジカルコーチと他愛のない会話をしていた時のことです。

「お久しぶりです。最近、チームの様子はどうですか?」

「あんまり良くないですね。僕としてはこうした方が勝てると思うのだけど、フィジカルコーチだから戦術的なことには口出せないんだよね……」

とあるチームでフィジカルコーチを務めている方との何気なく会話のワンシーンです。

プロサッカーの世界では監督だけではなく、ヘッドコーチ、コーチ、ゴールキーパーコーチ、フィジカルコーチなどのコーチングスタッフと、ドクターやトレーナーなどのメディカルスタッフなど、たくさんの現場スタッフで構成されています。

先ほどの会話で疑問に感じたのは、「このフィジカルコーチは確かに専門性を活かして仕事をしているものの、チームの勝利のために仕事をしているのか」という点です。

前述のとおり、「チームの目標を意識しながら役割を果たす」ことで、役割分担のメリットが最大化されます。

ただ、このままでは役割を果たすことで満足し、成果を挙げられないチームになってしまいます。

もちろん、リーダーである監督のマインドがチームに大きな影響を与えていることは言うまでもありません。役割分担の壁を超えて、気付いたことは何でも共有できる民主的な風土を作り上げることは大前提です。それぞれの専門性を存分に発揮し、誇りを持って役割を果たし、その上でほかの役割と調和してこそ、チームワークが発揮されることでしょう。
  

まとめ

スポーツに限らず、職場でも同じことが言えます。自分の部署だけに関心を寄せるのではなくて、会社としての目標に意識を向けることが大切です。

あなたの部署やあなた自身が機能していることと同時に、会社が機能しているかどうかにも関心を持たなければなりません。

役割分担が責任転嫁や内部分裂の要因にならないために、リーダーは仕事の実務に関わりすぎず、全体の調整や連携、役割の境界線の部分を意識的に観察し、全体を俯瞰するゆとりも大切です。