目標や理想自己(=なりたい自分)を明確に描けていることが大前提

3つ目に、ポジティブな思考も大切な要素です。単に能天気でいればいいわけではありません。目に前で起こっている事実に対してプラスの(意味のある)解釈をするのです。人はほとんどのことを自分の価値観(フィルター)を通して解釈します。

サッカー選手を例に取ってみましょう。朝起きたら、風雨が強かったとします。「最悪な天気だ」と捉える人がほとんどでしょう。目の前で起こっている事実にネガティブな色を付けてしまう、そんな人間の習性によってイライラしたり、不安になったり、モチベーションを下げたりして、パフォーマンスを落とす人はたくさんいます。

しかし、プラスに解釈する力を持っている人は、「雨のときはボールのバウンドが変わるから、普段ではできない練習が今日はできるぞ」「真剣に取り組めば雨の試合で役立つはずだ」「強い風は起こそう思って起こせるものではないから、今日しかできない特別な練習ができるぞ」と意味づけし、プラスに解釈するのです。

最悪な天気の日にもブレずに全力プレーをする選手を「メンタルが強い」の一言で片づけてしまう、これまた短絡的です。その背景には、成長を軸としたプラスの解釈力が働いているのです。

メジャーリーグヤンキースなどで活躍した野球の松井秀喜氏やサッカー日本代表の本田圭佑選手も、「大ケガをしてよかった」という趣旨の発言をしているのを耳にしたことがあります。本田選手は膝の大ケガを負ったとき、「リハビリを通して苦手(瞬発力)を克服できる」と言っています。

ここまでは、強いメンタルの正体について考えてきました。

しかし、それ以前に目標や理想自己(=なりたい自分)を明確に描けていることが大前提となります。また、現実自己の立ち位置もしっかりと把握しなければなりません。そのうえで、現実自己と理想自己のギャップを埋めるための階段設定をしっかりと行うことが大切です。

企業では、年に1回の健康診断に加えてストレスチェックなども行われていると思います。このストレス社会にどう対処するか、メンタルが強い人が生き残るのだと思いますが、そこを掘り下げれば、このように色々な要素が含まれていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

そして、今日ご提案した3点を意識すれば、多少なりとも自分でストレスを軽減させることができるということです。

まとめ

今回はメンタルという漠然とした言葉を少し掘り下げ、「好きであること」「評価より成長に関心をもつこと」「できごとにプラスの解釈をすること」をご提案しました。

尊敬を集めるスポーツ選手は、この3つを満たしていると思いませんか?大ケガをチャンスと捉えて成長につなげる本田選手のように、困難が降りかかったとしてもそれに左右されずに高い志を持ち続けるメンバーが揃ったとき、初めて強いチームが作られるはずです。

結局のところ、チームは個人の集合体なので、まずは1人1人が心身ともに健康で、常にイキイキと前向きな気持ちで職務に向き合うところからスタートします。個々を束ねてチームになるわけですから、そのために高い水準で安定したメンタルを保つことが何より大切なのです。

ぜひ、ビジネスの現場でも参考にしていただければと思います。そもそも、ほとんどの人はその業種が「好き」で、自らの意思で今の会社の門を叩いたはずです。

今の仕事の何が好きだったのか、これを機に初心を思い出し、原点回帰するのも良いのではないでしょうか。