オープンイノベーションの2つの方向性

オープンイノベーションには、大きく分けて2つの方向性があります。

インバウンド型

1つ目が、インバウンド型のオープンイノベーションです。
オープンイノベーションという言葉を聞いた時に多くの人が連想する、スタンダードなタイプです。社外のリソースを社内に取り入れることでイノベーションを促進します。

技術開発に必要な技術や知識のうち、自社に足りないものを外部から補完することによって、開発を加速させるイメージです。予め事業の構想があるが、足りない要素がある場合にこのタイプが検討されます。そのため、技術探索型などとも称されます。

具体的には、金銭の移動を伴い、他社が持つ特許権などを自社に導入するライセンス・インや、大学などの教育・研究機関と連携する産学連携がこれに当たります。

アウトバウンド型

もう1つが、アウトバウンド型のオープンイノベーションです。
社内の知識や技術を外部に開放し、アイデアを募集することで、新たな用途を開拓するなどを目的としています。

今の時代においては、新しいニーズの発見や創出が求められるために、開発に入る前のアイデアの段階で行き詰まる企業が多いのも事実です。

そのため、自社として今まで蓄積してきたものの、使い道に悩むような技術などを公開することで、外部から革新的なアイデアが生まれることを狙います。

具体的には、自社の知見を他社に売却するライセンスアウトや、プラットフォームを用いたユーザーとの共同開発などもこのタイプです。

自社の知見を外部に公開することで、既存事業への影響が懸念される場合もあるため、インバウンド型と比べて、活用へ慎重になる企業が多い傾向にあります。

実施する際の課題

実際にオープンイノベーションを実施する場合、どのような課題が想定されるのでしょうか。
オープンイノベーション協議会と、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構がとりまとめた『オープンイノベーション白書』によれば、下記のような課題があるとされています。

目的に対する理解

まず前提として必要なことが、オープンイノベーションが重視されている背景を、経営に関わる人達が正しく理解していることです。

前述したような背景によってオープンイノベーションが重視されているという状況を把握していることが大切です。用いる企業が増えているからという理由だけで実行を決定してしまうと、予期しない課題に直面したり、事業に混乱を招く恐れがあります。

本当にオープンイノベーションが必要なのかという部分も含め、しっかりと検討する必要があるでしょう。

取り組むための組織体制の構築

次に重要なことが、取り組むための組織体制が十分に構築されていることです。
オープンイノベーションを推進する専門的な組織を設置することや、他部門と連携して適切に機能するための仕組みづくりが求められます。

ただ部門を配置するだけでは、形骸化してしまうことも想定されます。
オープンイノベーションを推進する専門組織に求められることは、社内外のアイデアを結びつけ、マネジメントする役割です。

全社を巻き込み、オープンイノベーションへの意識を高めていくような活動が求められるため、社内を幅広く見渡せる組織であることが重要です。

また、小規模の組織として立ち上げることがポイントとも言われています。
いきなり大きな組織として成果を求めてしまうと、プレッシャーとなり、適切な意思決定が行えない可能性があるためです。

参考:
オープンイノベーションを推進するための組織体制

外部から獲得すべき経営資源と、外部で活用すべき経営資源の把握

顧客に対して、自社が提供するべき価値を正しく認識したうえで、そのために必要な資源について整理することが重要です。

提供したい商品やサービスに関する経営資源の不足に対し、自社で解決すべきものなのか、外部から取り入れることによって解決するかを考えます。

また、自社ではなく、外部に活用してもらうことが適切であると考えられる経営資源についても考慮します。

連携先の探索

外部から獲得する経営資源や、自社として外部に提供する経営資源が明確になったら、その獲得や提供における連携先を考えます。

外部企業や研究機関、消費者など様々な関係構築のパターンが予想されるため、実現可能性を考慮したうえで慎重に検討することが必要です。

連携先との関係構築

連携先の候補が見つかったら、連携の交渉など、関係の構築を図っていきます。
単に技術や知識的な部分での利害関係を越えて、コミュニケーション上の課題感なども考慮した上で、お互いがWinWinの関係性を築く事ができることが理想です。

参考:
オープンイノベーション白書 初版(概要版)