ferretをご覧の皆さん、こんにちは。谷口マサトです。

「ぼやぼやしないで!」と子供を怒っていませんか?
実はそれが子どもの創造性を殺している可能性があります。

考えている時に比べ、考えてない時の方の脳が20倍動いていることが脳科学で計測されており「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれています。脳のニューロンが広範囲にわたり発火(電気が通る)しているのです。

反対に考えている時のニューロンは冒頭の図のように局所的に発火しています。考えていると賢く思えますが、実は脳の活動を抑制しバカになっているのです。

▼前回の記事はこちら▼
Lesson3「おもしろい言い訳をしよう!」 - 1億総作り手時代に"子どもがクリエイターになる練習ドリル" -

アイデアは考えると出なくなる

アイデアが出るのはいつも“他のこと”をしている時

「アイデアは考えると出なくなる」ことは経験則として、多くのクリエイターが実感しています。例えばクリエイティブ集団を抱える面白法人カヤック代表の柳澤大輔さんは『アイデアは考えるな。』(日経BP社)というそのままなタイトルの本を出しています。

一方で、「アイデアが出やすくなる状況」として古典では中国の「三上」が有名です。

「鞍上(あんじょう/馬の上)」「枕上(ちんじょう/布団の中)」「廁上(しじょう/トイレ)のことですが、いずれも他の事をしていてアイデアについて考えてないことが共通しています。

現代日本のクリエイター達に聞いても「歩いている時、お風呂、サウナ、シャワーを浴びている時、ボーッとしている時、車を運転している時」など様々な答えがかえってきますが、やはり考えてない状況なのです。

ではなぜそうなのでしょう?

「考える」=記憶から最適解を探しているだけ

まずは「考える」「アイデアを出す」とはどういう状態なのかを整理してみましょう。どちらにしても対象となる課題があるわけですが、その課題が既知か未知かで脳の処理は変わってきます。

課題が「既知」だと判断した場合、脳は記憶から最適解を探して参照します。これだと記憶のごく一部を使うだけで良いので省エネです。「考える」といっても単に答えを選んでいるだけの場合が多いのです。

課題が「未知」だった場合、過去の正解がないため、複数の記憶を組み合わせて答えを新たに創造する必要があります。組み合わせるためには広い範囲で記憶を探る必要があるため、脳の発火範囲が広くなるのではないでしょうか。

前者が「考える」後者が「アイデアを出す」ことですが、学校の教育ではほぼ前者を鍛えます。正解を学び、テストではどの解答を選ぶのが最適かという記憶テストを繰り返します。

「最適解」を探し続けても“アイデア”は出せない

怖いのは、「考える」ことに慣れた人は、アイデアまで考えようとしてしまい、アイデアが出ないことに苦しむのです。元々この二つが根本的に異なることだと知っていれば大丈夫なのですが、それを学校ではあまり教えてくれません。

「高学歴なのに仕事ができない」と言われる人がいますが、実は「高学歴だから仕事ができない」場合があります。最適解を探す方法を極めた結果、新しい状況ではアイデアが出せなくなっているのです。

仕事ができるかどうかについて、DeNA取締役会長・南場智子さんは「会議で“正解”を探す人はいらない」と話しています。採用面接で応募者に質問があるか聞いた時に「その状況でどういう質問をすれば良いか」と最適解を探す人は面接で落とすようにしているという話です。

DeNAはIT系のベンチャー企業ですので、仕事にはアイデアが求められます。私もIT系に勤めているので分かりますが、IT系は状況の変化が早すぎるのです。そのため出てくる課題の多くが未知であり、過去問では間に合わないのです。

さらに言えば、人工知能(AI)は最適解を探すことにかけては人間より遥かに能力が高いため、人間は今後の仕事でよりアイデアを求められる役割を期待されていくことになると思います。

参考:
DeNA南場氏「会議で“正解”を探す人はいらない」就活生に語った、デキる人材になる方法 - ログミー