「言語化」時代におけるコピーライティングについて考察し、実務に活かせるヒントをお届けする連載「コピー学習帳」。第二回目となる前回記事では広告の目的=態度変容についてお届けしました。

導入編・第三回のテーマは「広告のスタンス=コピーは無視される前提で書く」です。
毎回、宿題(のようなもの)を出していく予定ですので、ぜひチャレンジしてみてください。

「ブランドパーソナリティ」という言葉があるように、生活者とブランド(商品)は人間関係の比喩で捉えられることがあります。またその両者のメディアを介したやりとりのことは「コミュニケーション」と呼ばれます。

人間同士のコミュニケーションと同様に、生活者とブランドのコミュニケーションにおいても「どのような立ち位置・目線で語りかけるか」は重要です。妙に上から目線で語りかけたり、逆に過剰にへりくだったコミュニケーションは意味をなさないどころか、マイナスの印象を与えてしまいます。

広告における適切なスタンスとは

メディアコミュニケーションといっても、記事や番組などで取り上げられる場合もあれば、広告枠の中でメッセージを語りかける場合もあります。

たとえばテレビの視聴者の場合、CMを目当てに番組を観る人はほぼいません。目当ての番組を観るためにチャンネルを合わせ、画面に向かっているわけです。CM枠を使ったコミュニケーションとは、その視聴を15秒や30秒の間遮って自分の伝えたいことを語りかける行為。

広告とは「邪魔者」である

つまり、広告とは基本的に「邪魔者」なのです。視聴者の観たいものを我慢させて、自分の言いたいことを言う。だから基本的に、視聴者は広告を無視します。

広告枠からのメッセージングとは、基本的に逆風にさらされた足場から語りかける行為。だからこそ各企業は、人気の女優さんにキツネの耳をつけたり、お菓子を持って躍らせたりして、少しでも視聴者に喜んでもらえる「芸」を披露しながら、何とかついでにメッセージを憶えてもらおうとするわけです。

「情報洪水」というもう一つの壁

「テレビCMが効かなくなった」と言われ始め、ネット社会における新しい広告コミュニケーションの枠組みが議論され始めた2000年代。この頃発行された広告関連の話題の書で必ず触れられるデータがありました。それが総務省の「情報流通センサス報告書」。

2008年に刊行され、大きな話題となった佐藤尚之氏の「明日の広告」(発行:アスキー新書)によれば「ここ10年でヒトが処理できる情報量は変わっていないのに、流通している情報量は410倍になった=99%の情報は処理不能」であることが紹介されました。続編となる2011年刊行の「明日のコミュニケーション」ではこの情報量が637倍にまで膨れ上がり......そして今はその10年後です。

広告はおろか、記事や番組自体も基本的には無視される(せざるを得ない)という社会環境なのです。

「0.1%に入るためには?」というスタンスで、コピーを発想する

広告コピーを考える際も、基本的に邪魔者扱いされて無視される上に、そもそも現代社会においては99.9%の情報は無視されるもの、という前提を踏まえる必要があります。

逆に言えば、残りの「0.1%に入るためには?」という発想を持つということです。一方的な機能訴求のメッセージや「こだわりの味」などといった手垢のついた表現で0.1%の「狭き意識の門」に入れるかどうか?それは考えるまでもありません。

宿題のようなもの ーCopy Drillsー

この連載では毎回、宿題(のようなもの)を出していく予定ですので、ぜひチャレンジしてみてください。今回は、迫りくる年の瀬にふさわしいお題です。

今週のお題

あなたのもとに、女性向けの上品なシンプルライフメディアに掲載する広告表現の相談がきました。広告主が考える新商品の特徴はズラリ8つ。しかし直近の情報流通センサス調査の結果を見てしまったあなたは、全部を伝えるわけにはいかないと考えています。では、どのような打ち出し方・表現を提案しますか?

  去年までなかった新しいカタチの年賀状である
  折ったらおまもりになる
  年賀状なのに、持ち歩いてもらえる
  翌年は戌年なので、カワイイ犬のイラスト付き
  インスタ映え要素もバッチリ
  カスタマイズ性もバッチリ
  折る楽しみもある
  メッセージは「〇〇できますように」というお祈りのフォーマット

解答例は次回に!

解答例は、次回の連載(12/23(金)予定)でお伝えします。

前回のお題の解答例

前回のお題だった「直近の態度変容」において、私個人の態度変容体験について言語化してみました。

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後書きのようなもの

情報の受け取り手である生活者がどのような文脈・状況で接触するかを考え尽くしてメッセージを発信すること。これは広告コピーに限らず、記事コンテンツにもいえること。

筆者(神保)は広告業界からWebメディアへ移って記事広告制作を数多く手がけたが、まず疑問を持ったのはその文字数だ。「Webメディアの文字数とはだいたいこんなもの」ということで、平均して3,000-4,000文字を書き連ねるのが普通だった。書けば書くほど伝わるのならいいが、現実はそうではない。

これが妥当かどうかはすぐわかる。調べてみると、科学的に人間が1分間に読める文字数は400文字、一方でWebメディアにおける1記事の閲読時間はだいたい1-2分。速読の達人専門のメディアであれば話は別だが、あいにく私の担当メディアの読者は普通の主婦層だった。

SEO記事ならそもそも読者も「知りたいこと」が明確にあるので大胆に読み飛ばすことも想定できないことはないが、「態度変容」を目的とする記事広告において読者によって受け取る情報がマチマチになるのは致命的だ。記事広告の場合は読後の態度変容から伏線-回収構造を逆算して記事を構成していくのだが、そもそも4,000文字もの情報量になれば計算して書くのは不可能だ。

記事広告において求める結果(=記事からのアクション)を出すために行ったことは、1-2分で読める範囲内(800文字)でコンテンツのコア・メッセージを伝えきること。その上で、態度変容した読者はその後の詳細を読み込んでくれるだろう、という狙いだ。

文字数を絞ることは、情報量の減少を意味しない。無駄な「つなぎ」の文章を全て排除した上で、ブランドベネフィットへのハラオチ感につながる読者への「新たな視点・気づき」の分量を圧倒的に増やす。というか、それだけで文章を作る。結果、記事アクションは3-5倍に跳ね上がった。

このコピー講座も、基本的な構成の考え方は同じだ。各記事の主題はだいたい最初の800文字でまとめ、それ以降は態度変容=実践したくなった人、今回でいうと「0.1%のコピーを書きたい!」と思った人のための「おまけ」だ。記事広告の場合はここに製品・サービスの踏み込んだ説明が入ってくるが、そのかわりに実践練習(Copy Drills)や補足解説(後書き)を付けている。

たとえば、オウンドメディアで「メッセージ型の記事」などを作りたいと考えている場合は、この構成の考え方がひとつの参考になるかもしれない。

次回のテーマは「広告コピーの修行法」について。

では、また次回の連載(12/23(金)予定)でお会いしましょう。

次回の記事はこちら

新年の構想を練る前に要チェック。広告コピーの「秘伝の修行法」とは

新年の構想を練る前に要チェック。広告コピーの「秘伝の修行法」とは

導入編・第四回のテーマは「広告コピーの秘伝の修行法」です。広告業界でメジャーな「写経」と「リバースエンジニアリング」という2つのトレーニング法について、筆者の経験も交えながらお伝えします。

連載

第1回 「言語化」時代のコピーライティングとは
第2回 広告の目的は「買ってもらうこと」ではない。生活者のお買い物ポリシーを書き換える広告コピーのアプローチ
第3回 「誰も読んでくれない」という前提から発想する。広告コピーの基本スタンス(本記事)
第4回 広告コピーの「秘伝の修行法」とは
第5回 どう言うか?の前に「何を言うか?」を決める