「言語化」時代におけるコピーライティングについて考察し、実務に活かせるヒントをお届けする連載「コピー学習帳」。第五回目となる前回記事ではコピーはまず、『何を言うか』を決めるについてお届けしました。

基礎編・第六回のテーマは「広告の接点=ベネフィット(便益)の約束」についてです。
毎回、宿題(のようなもの)を出していく予定ですので、ぜひチャレンジしてみてください。

前回記事のテーマであった「どう言うか?の前に『何を言うか』を決める」は広告コピー制作の土台。ここを見誤ると、表現の精度をどれだけ高めても意味がなくなってしまいます。

この大事な「何を言うか」のポイントは、ノーヒントで探さねばならないのか?というと実はそうではありません。今回の記事では「何を言うか」を定める時の目印となる「生活者とブランドの接点」についてご紹介します。

生活者とブランドは「ベネフィット」でつながる

以前、「ブランドパーソナリティという言葉に表れているように、生活者とブランドの関係性は人間関係に喩えられることが多い」とお伝えしました。家族でない限り、人間関係の始まりには「きっかけ」が必要です。

生活者とブランドの間の関係性は、基本的に生活者の「困りごと」をブランドが提供するベネフィット(便益)によって「解決」するということが「きっかけ」となって始まります。

広告とは、ベネフィット(便益)の提供の約束

世の中に様々ある広告の定義のひとつに「広告とは、約束である」があります。では何を約束するかというと「いつでもどこでも誰にでも、このベネフィット(便益)を提供すること」を約束しているのです。

世の中で最も有名な広告コピー「そうだ 京都、いこう。」を例に考えてみましょう。日常会話にも頻出するほどのフレーズですが、一体何を約束しているのでしょうか。

それは「そうだ」という3文字に詰まっています。つまり「ふと思い立った時に、いつでも京都に行ける」ということ。極論ですが都心のオフィスで20時まで残業して「もう仕事はたくさんだ……そうだ 京都、行こう。」と思えばその日のうちに京都に行ける。

この広告に触れるたびに、広告主であるJR東海は生活者に対して「朝の始発から終電まで、365日いつでもお客様を京都にお連れします」という約束を交わし続けている。そう考えると、なんだかすごい気がしてきませんか?

広告による「素敵な約束」が織りなす豊かな社会

「そうだ 京都、行こう。」以外にも、数えきれないほどの広告メッセージが飛び交う現代社会。モノが溢れる世の中でついつい忘れがちですが、様々な企業があらゆる便益の提供を「約束」し続けています

「ちょっとしんどいけどあとちょっと頑張りたい!」という人のバックには頑張る元気を与えてくれるドリンクがついています。それを飲んで頑張った結果、もし熱が出てしまったら解熱剤も控えています。現代人は、広告によってそれらの分厚いバックアップを予め知っているから、安心して自分の人生を生きられるのです。

広告によって生活者とブランドの間に「素敵な約束」が織物のように緊密に結ばれている社会は、豊かな社会といえます。

「何を言うか」はベネフィットの付近を掘って見つける

さて、広告コピーの土台となる「何を言うか」を発見する際には、このベネフィット(便益)の近辺を掘ることが基本になります。

それを見定める時のコツは、まず「今回のコミュニケーションのターゲットとなる生活者は何に困っているのか?」を定義すること。その上で「それに対してブランドはどんな約束ができるのか?」を考えること。ここまで決まれば、「何を言うべきか」まではあと少しです。

宿題のようなもの ーCopy Drillsー

この連載では毎回、宿題(のようなもの)を出していますので、ぜひチャレンジしてみてください。また、今回から読者の皆さんからのコピー案も募集します。Twitterでハッシュタグ#ferretコピー学習帳】をつけて、投稿してみてください。優れたコピーは、次回解答例と併せてご紹介します。

今週のお題

喉のいがいがを解消してくれる薬のコピーを考えてみましょう。後書きの「3層のベネフィット」も参考に、ベネフィットを意識しながら考えてみてください。

解答例は次回に!

解答例は、次回の連載(2/3(金)予定)でお伝えします。

前回のお題の解答例

前回のお題だった「子育て用デジタル一眼カメラのコピー」の解答例はこちらです。

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▼コピーを作る前に!ブランドの魅力を整理するためのフォーマットをダウンロードできます

ブランドの魅力を整理する!広告訴求のためのフォーマット

ブランドの魅力を整理する!広告訴求のためのフォーマット(Excel形式)

後書きのようなもの

ベネフィットは「3層構造」になっている

「何を言うか」を発見する前に必要なのが、今回のコミュニケーションにおいて提示するベネフィットの再定義だ。その作業において有益なのが、ベネフィットを3層構造で捉えること。

これを整理したのがブランド論の大家デビッド・アーカーだ。彼はベネフィットを①機能ベネフィット②情緒ベネフィット③自己実現ベネフィットの3層に分類した。

最も分かりやすいのが①機能ベネフィット。「時間が無くて料理する暇がない…」という困りゴトには時短調理という機能ベネフィットで解決することを提案する。ただ、高度成長期ならまだしもモノやサービスが溢れる現代社会においては、あらゆる機能ベネフィットは提案し尽されていると考えていい。

そこでアングルを変えて、その機能を通して「どんな気分が手に入るのか?」まで翻訳したものが②情緒ベネフィット。さらに「どんな自分になれるのか?」まで展開すると③自己実現ベネフィットの提示になる。

前者なら例えば「ズボラ調理なのに外食レベルの満足感が得られる」とかは最近よく見かるアプローチだ。後者であれば「どんなに忙しくても、美味しい食事を家族に提供できるやりくり上手な私になれる」という理想像提示型のアプローチになる。

モノ消費からコト消費へ移ってきている消費文脈の中では、陳腐化した機能ベネフィット訴求ではなく、情緒や自己実現ベネフィットまで掘り下げて提示した方が伝わりやすい。表現的な差別化が図れるうえに便益を享受した時の「満足感」まで伝えきることができるからだ。

次回は言葉のフォーメーションによってメッセージ精度を上げる「広告コピーの基本構造」について。

では、また次回の連載(2/3(金)予定)でお会いしましょう。

連載

第1回 「言語化」時代のコピーライティングとは
第2回 広告の目的は「買ってもらうこと」ではない。生活者のお買い物ポリシーを書き換える広告コピーのアプローチ
第3回 「誰も読んでくれない」という前提から発想する。広告コピーの基本スタンス
第4回 広告コピーの「秘伝の修行法」とは
第5回 どう言うか?の前に「何を言うか?」を決める