【検証】AIの言葉は人のココロを動かせるのか?ChatGPTのコピーを添削
「言語化」時代におけるコピーライティングについて考察し、実務に活かせるヒントをお届けする連載「コピー学習帳」。第10回目となる前回記事ではボディコピーの書き方についてお届けしました。
第11回となる今回は特別編「ChatGPTのコピーを添削する」です。
毎回、宿題(のようなもの)を出していく予定ですので、ぜひチャレンジしてみてください。
ChatGPTのリリースをきっかけに、今年に入って耳にしない日はないというくらいに注目度が高まっている生成型AI。メールの返信文面や要約を含めた議事録作成などの一般的な文章化作業においては非常に高い精度を誇っているといわれています。
では、現状のAIで「広告コピー」はどこまで書けるのか?今回は、以前宿題として出したQビーフのお題に対してChatGPTが考えたコピー案を添削してみる企画です。私の「解」は前回のボディコピー編でフル原稿が見られますので気になる方は併せてご確認ください。
これまでの連載でご紹介してきた数々のポイントも出てきますので、基礎編の総仕上げとして今一度コピーの基本をおさらいしてみてください。
生成型AIが考えたコピー案を添削する
ferret編集長・清水の質問に対して、ChatGPTがコピー案を3案出してくれました。パッと見た感じですが、なんとなく「よく見る感じ」のコピーが並んでいますね。では、一つずつ添削していきます。
コピー案①:極上の味わい、Qビーフ
最初から添削しがいのある案が出てきました。これは奇しくも第1回目の連載後書きで触れた下記「やってはいけないコピー」の典型ですね。
仮に「最高におもしろい!」と言っておもしろさが伝わるのであれば、スーパーに並ぶ食品パッケージには全て「究極の味」か「至高の味」と書いておけば万事オーケーだ(私も明日から転職活動を開始しなければならない)。
つまり「極上の味わい」ということをどう伝えるのか?を考えるのがコピーライティングという仕事なので、これでは仕事をしたことにはなりませんね。
コピー案②:本物の味わいを追求したQビーフ
これも上記同様の理由でNGです。極上や究極、本物といった巷に溢れ返った陳腐な言葉が表現することは「この商品はどこにでもある、ありふれた商品です」と言っているのと同じ。それなら何も言わない(=コピーなしの広告原稿)の方がまだマシといえるでしょう。
コピー案③:一口食べれば、Qビーフの違いがわかる
これもよく見かける表現ですが、そもそも忙しい生活者は「Qビーフの違いを知りたい」と思って生活しているわけではない、という前提が抜けています。第3回目の連載で紹介した広告の基本スタンスである「そもそも受け手は商品に興味などない、という前提でコミュニケーションをとる」ということを忘れてはいけませんね。
この表現はいじわるな言い方をすれば「一口食べなければ美味しさが伝えられない」と言っているようなもので、コピーによる価値伝達を放棄してしまっています。制作意図には「直感的でわかりやすい表現である」と書いてありますが、実際は直感として何もわからないコピーです。コピーの役割は実際に購買して体験する前に言葉によって「一口食べてみようかな」と思わせることです。
ChatGPTの「代案コピー」を添削する
ちょっと今のままだとあまりにも手垢のついたよくあるコピー案ばかりなので、もう少しオリジナリティを求めて代案を出してもらいましょう。
AIはへこたれないところがいいですね。一方で潔く謝る割には、あまり反省していないという困った性格も匂ってくる回答ですが……とにかく見ていきましょう。
コピー案④:口に広がる、極上の牛肉体験。Qビーフ
これも「極上」がまずダメですが、それ以外の論点で語ってみます。この案の特徴は「口に広がる」と体験に言及している点ですね。しかし体験に言及すればポイントアップ、というわけではありません。何かモノを食べればその味わいや香りが口に広がるのは当たり前です。ガムでもクッキーでも同じです。
広告とは「他のモノゴトと差別化するため」に打たれるもの。よって、他でも言える当たり前すぎる表現はNGです。
またもう一つ問題が、制作意図を見ると「熟練の技術で仕上げられた美味しさが特徴」と書かれていますが、そんなことはオリエンには一言も入っていませんね。エイジング加工などを売りにしたレストランのコピーならまだしも、ブランド牛の訴求としては違和感があります。
コピー案⑤:品質にこだわり、自信を持ってお届けする。Qビーフ
これが「オリジナリティ」と言われるとさすがにつらいものがありますね。これも先ほどの案と同じく当たり前のことを言っています。世の中のあらゆる生産者が品質にこだわっているでしょうし、自信を持って提供してくれているはずですよね。
このように「Qビーフ」をその他の「〇〇ビーフ」に差し替えても全く問題なく通用する表現はよくありません。広告の世界では「何も言ってない表現」として真っ先に切り捨てられます。
コピー案⑥:あなたの味覚を、最高峰へと導く。Qビーフ
このあたりになるとちょっと錯乱してきていますね。一部のグルメ評論を生業にしている人は別として、人は自らの味覚を最高峰に導くために牛肉を食するわけではありませんよね。第5回目の連載で紹介した「まずWhat to Say?を決めてから、How to Say?を考える」という原則を忘れてはいけません。
あとそもそもここで言っていることは「嘘」ではないでしょうか。牛肉をひと口食べたくらいで味覚が最高峰まで導かれる、なんてことはとてもありそうに思えませんね。広告だってあからさまな嘘はいけません。
生成と「創造」の違い
既存の膨大な解の中から「それっぽい答え」を生成するAIでは、コピーライティングなどの価値創造の部分までは現状まだまだ難しそうです。なぜならマーケターやコピーライターに求められている役割は今も昔も「これまでにない答え」を創出するところにあるからです。
マーケティングの仕事は今までに世の中になかった新たな価値を生みだし、それを必要とする人々に提供すること。そして広告コピーの役割はその必要性を認識させるための新たな視点や気づきの提供です。
そしてこの部分こそ、AIではなく「感情と意志」を持つ人間が担う役割でしょう。
宿題のようなもの ーCopy Drillsー
この連載では毎回、宿題(のようなもの)を出していますので、ぜひチャレンジしてみてください。また読者の皆さんからのコピー案も募集しています。Twitterでハッシュタグ【#ferretコピー学習帳】をつけて、投稿してみてください。優れたコピーは、次回解答例と併せてご紹介します。
今週のお題
QビーフのコピーをChatGPTにさらに再考させたところ、下記のコピー案をあげてきました。さて、あなたはOKを出しますか?NGの場合はどのように添削するでしょうか。
コピー案⑦:甘味と旨味の"Q極"のマリアージュ。Qビーフ
解答例は次回に!
解答例は、次回の連載(5/12(金)予定)でお伝えします。
前回のお題の解答例
前回のお題だったスーパーのコピーの添削例はこちらです。よく見かけるコピーですが、ほぼ全文がNGです。
▼コピーを作る前に!ブランドの魅力を整理するためのフォーマットをダウンロードできます
ブランドの魅力を整理する!広告訴求のためのフォーマット(Excel形式)
後書きのようなもの
コピーには「過去」に答えはない
AIの能力を最大限発揮させるには、適切な「問い」をインプットする必要があるといわれる。たしかに今回の例題でも、さらに踏み込んだディレクション(つまりWhat to Say?の明示)を加えれば違った解答が得られたかもしれない。
しかし、それこそコピーライティングの仕事そのものであって、What to Say?が決まれば仕事は9割以上終わっており、ここにAIの出番はない。画づくりは別として、コピーにおいてHow to Say?で悩むことはほぼないのが実際のところだ。
コピーの基本は、あらゆる文脈を踏まえた上で「今」何を言うべきか?を導き出すことであり、過去問の解答から「それっぽい答え」を生成するAIではそれは不可能だろう。
無限ともいえる広大な意味空間の中からWhat to Say?の一点を定める作業には意味の座標を認識するコンパスが不可欠だ。中でも最も大事な計器は人間の意志や感情(経験)であり、それを持たないAIには難しいだろう。
残念ながら今回AIが生成したようなコピーは巷に溢れ返っている。それはAIが人間並の仕事をしているのではなく、人間が「それっぽい」コピーをそれこそコピー(模倣)し合っているからであって、それは本来の役割を果たす広告コピーではない。
世に出ているコピーの9割以上がそのようなレベルのシロモノなので、いくらそれを分析して生成したところで何も生まれないのは自明である。
現状でもAIが生成できるレベルの仕事は人間がやる必要がなくなるので、生成ではなく「創造」という人間にしかできない仕事に取り組む良いきっかけとしたいものだ。
次回は「広告コピーのトレンド変化」について。
では、また次回の連載(5/12(金)予定)でお会いしましょう。
連載
第1回 「言語化」時代のコピーライティングとは
第2回 広告の目的は「買ってもらうこと」ではない。生活者のお買い物ポリシーを書き換える広告コピーのアプローチ
第3回 「誰も読んでくれない」という前提から発想する。広告コピーの基本スタンス
第4回 広告コピーの「秘伝の修行法」とは
第5回 どう言うか?の前に「何を言うか?」を決める
第6回 生活者とブランドの接点=ベネフィット(便益)の約束
第7回 広告のメッセージ精度を上げる「言葉のフォーメーション」
第8回 広告の「基点」愛され続けるタグラインの書き方
第9回 1/1000の狭きココロの門に入るキャッチコピーの書き方
第10回 ブランドの「認識」を醸成するボディコピーの書き方
第11回 【特別編】ChatGPTのコピーを添削する
第12回 広告コピーのトレンド変化
第13回 ブランドが紡ぐ小さな物語
第14回 アイデアの作り方 ~インプット編~
第15回 アイデアの作り方 ~アウトプット編~
第16回 顧客理解のためのヒアリング
第17回 広告企画のプレゼンテーション
第18回 X世代の心象風景:80年-95年の広告とカルチャー
第19回 ミレニアル世代(Y世代)の心象風景:95年-09年の広告とカルチャー
- 広告
- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
- 広告
- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
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- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
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- マーケティング
- マーケティングとは、ビジネスの仕組みや手法を駆使し商品展開や販売戦略などを展開することによって、売上が成立する市場を作ることです。駆使する媒体や技術、仕組みや規則性などと組み合わせて「XXマーケティング」などと使います。たとえば、電話を使った「テレマーケティング」やインターネットを使った「ネットマーケティング」などがあります。また、専門的でマニアックな市場でビジネス展開をしていくことを「ニッチマーケティング」と呼びます。
- 広告
- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
- Twitterとは140文字以内の短文でコミュニケーションを取り合うコミュニティサービスです。そもそもTwitterとは、「小鳥のさえずり」を意味する単語ですが、同時に「ぺちゃくちゃと喋る」、「口数多く早口で話す」などの意味もあります。この意味のように、Twitterは利用者が思いついたことをたくさん話すことのできるサービスです。
- タグ
- タグとは、原義では「モノを分類するために付ける小さな札」のことです。英語の「tag」を意味するものであり、荷札、付箋といった意味を持っています。特にインターネットに関する用語としてのタグは、本文以外の情報を付与するときに用いられます。
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- 広告とは販売のための告知活動を指します。ただし、広告を掲載するための媒体、メッセージがあること、広告を出している広告主が明示されているなどの3要素を含む場合を指すことが多いようです。
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