「経験は知識を上回る」マーケターとしての心得

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飯髙:
たしかにそうかもしれない。とある企業の社長と飲んでたときのことを思い出しました。その方って、経営者になる前はマーケターで知識で言えば僕よりも何倍も持っているんです。その方は「経験は知識を上回る」とおっしゃっていました。「飯髙くんは、いま現場で実践しているから、飯髙くんが言っていることの方が正しい」と言ってくれるんです。

知識は持っておいたほうが良いにきまっているけれど、やるっていう行為を続けられるのが良いマーケターだなと思って。体験でわかっているからこそ、一見すると「わざわざやる必要ある?」ということも取り組める。

少し話が変わるんだけど、清水さんが新卒時代に最年少マネージャーになった時の話がありましたよね。社長にプレゼンしにいっても簡単には進まず、チーム作りも上手く行かず、結構苦しんだって話だったと思う。でも、その結果って絶対今に活きてますよね。

清水 氏:
できるかどうかというより、苦しんだけどそこにチャレンジしたことが大事だなって当時を振り返っても思いますね。下っ端のまま働き続けても、マネージャーの考え方がわからないですからね。マネジメントを理解するには「マネージャーをやってみる」のが1番手っ取り早いです。

僕が新卒時代の会社で最年少マネージャーを任せてもらった時、自分のチームを初めて持って、上手くできなかったという経験があるからこそ、いま理解できています。

マーケティングの話でいえば知識を沢山インプットしたからって、マーケターにはなれませんよね。一旦やってみて経験を積んでみるのがとても大事だなと思いました。

飯髙:
本当にそう思う。組織ではメンバーがマネージャーの位置に居ると錯覚を起こす瞬間っていうのがあるんですよ。マネージャーよりも自分のほうが優れていると思ってしまう。そもそも、マネージャーとメンバーでは役割が違うから、そういうメンバーをいきなりマネージャーに引き上げても失敗することがあるんですよね。

意図的に機会を与えて引き上げるっていうのは面白いんだけど、そう簡単に上手くいかないんですよね。そして、失敗してみても本当にマネージャーになれる人っていうのは、何回でもチャレンジしようとしてくる。

だからこそ、沢山打席に立って他人よりも手を動かして、その時間でどれだけ良いアウトプットを出せるかが大事。

清水 氏:
そうそう。僕は新卒時代に勤めていた会社と平行してTABIPPOがあったことが大きな経験かもしれないです。自分でマーケティングを実践できる場所なんですよね。新卒は代理店で働いていたので、あくまでクライアントのマーケティングをサポートする役割でした。だからこそ、自分が主体としてマーケティングができるTABIPPOという場所っていうのはとても貴重だったんです。

勉強したことをTABIPPOで試してみようとか、そういった機会が沢山ありました。イベントを開催するってなった時も、どうやって参加者を集めるかっていうところもすでにマーケティングなわけですから。その結果、「4P分析ってこういうことだったんだ」という気付きが生まれます。

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飯髙:
僕も、今でもそういった体験をしますよ。「えいや!」と実践してしまうタイプなんだけど、成功する時もあれば、失敗する時もある。でも、この経験が積み重なって、仕組みとか知識に当てはめて考えられるようになるんです。

清水 氏:
学生とか若手社会人向けに講演をやる時にも「行動すること」は強調して伝えています。僕がこんなに世界一周について語れるのも、実際に世界一周しているからです。それに、今僕が経営者をやれているのも、経営者になったからなんですよね。すごい単純な話なんですけどとても大事なことです。

飯髙:
実際にやってみることは、やっぱり大事。体験を経てできるようになる。でも、体験は施策とか現場の感覚を身につけることはできても、「市場の感覚」とか「土地勘」のような全体の感覚を身につけるにはどうしたら良いと思いますか?

清水 氏:
ターゲットとなるユーザーに会うことや、サービスを実際に使うことに集約されると思います。本を読んでも、インターネットで記事を読んでも、市場にいるお客さんたちが何を思っているのかわからないですからね。

例えば、Airbnbって日本上陸当初は否定的な意見が結構ありましたよね。でも、僕は流行って当然だって思っていました。なぜなら、海外ですでに沢山利用していたし、その時の盛り上がり方を知っているからです。一見すると「ぶっ飛んだサービス」のように見えるけれど、実際とても便利だという感覚がありました。

飯髙:
サービスが流行るかどうかっていうのは感覚としてわかることがあるけれど、それが正しいか正しくないかっていうのはわからないことがありますよね。

Airbnbのような新規性の高いサービスを立ち上げて、不確定要素の多い中でどのようにマーケティングしていけば良いと思いますか?場合によっては、上長のストップによって新規事業にもならないかもしれないことがありますよね。

清水 氏:
それは会社によるかもしれないですが、経営者視点で言えば熱量のある人がやるって言うのであればやったら良いって思いますね。逆にアイデアだけ出しても、熱量が無いのであればやらなくても良い。結局のところ、新規事業はやり遂げられる人が大事だったりしますからね。

飯髙:
アイデアはあっても実現できない理由を述べる人とかもね。そこにチャンスがあると思うんですよね。メルカリとかも、ヤフオク!とか近いサービスが色々ある中で、何がすごかったのかってスマートフォンに特化したことじゃないですか。そこに対して、出品者と購入者の母数を一気に増やしたから大成功した。突き詰めるとシンプルに考えられる。

Airbnbに否定的な空気が当初あったっていう話が挙がったけれど、日本人って凝り固まっているのかもしれない。

清水 氏:
受け入れる力というのかな、そういうのが弱い気はしますね。例えば日本では、LGBTへの許容に関して統計を取ってみると、やはり世界的にみても「許容している人」の割合が少ないんですよね。島国で、日本人が圧倒的に多いから異なる価値観を受け入れ難いというのがあるかもしれません。

でも、10数人に1人っていう割合でLGBTの方々はいるわけですよ。マーケティングって考えた時、市場として結構大きい。こういった方々に理解を示さずマーケティングするっていうのは、ダメだなって思います。稀に、LGBTに関連したプロモーションで炎上することがありますよね。それはLGBTではない人にとって気づきにくい繊細なところだったりします。なので、マーケティングするにしても受け入れて理解示すことは本当に大切です。