頼り合うことで+αの力が生まれる

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仮に、誰かを頼らずに自分の力でやり遂げようとした場合、ぞれぞれ「3」のことしかできない2人がいるとします。しかし、先ほどの秋田さんと奥野さんの例のように、お互いが効果的に頼り合えば、弱みを補い合うことはもちろんのこと、強みも最大化させることができ、両者が「10」になるようになる関係性もあるわけです。これがWIN-WINの関係です。

これはスポーツだけに留まらず、すべての分野に共通することだと思いませんか。ビジネスにおいても、自分の強み弱みを理解したうえで、さらに上のステージに上るために誰かを頼ろうと考え、自ら一歩踏み出すことも1つの自立の姿なのかもしれません。

個人の能力差はあるにせよ、人は皆、1人では大きなことを成し遂げるのは困難です。だからこそチームの環境を整えて、もっともっとメンバーの能力を引き出すのが私の役割だと認識しています。

「なんでも1人でやること」が自立ではない

ここまで触れてきたことは、シンクロナイズドスイミング(アーティスティックスイミング)で著名な井村雅代コーチの著書「結果を出す力」の中で書かれていた「もっとコーチを頼りなさい」という言葉とも重なると思っています。

井村さんは指導者として日本に山ほどのメダルをもたらしてくれました。また、2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックでは中国代表コーチとして活躍され、日本以外の国のメダル獲得にも貢献されました。さらに、日本代表コーチに復帰した2016年リオデジャネイロオリンピックでは日本を12年ぶりのメダル獲得に導きました。もはや、だれもが知っている説明不要の名コーチです。

その井村さんの著書によれば、今の若い人たちは「自主性」を勘違いしている、何でもかんでも1人でやらなければならないと思っていると話しています。自分の考えだけでやり続けてもやがて壁にぶつかり、そこを突破することができない、そのためにコーチがいる。だからこそ、「もっとコーチを頼りなさい」とおっしゃっているわけです。

特徴の違うチームメイトと高度な依存関係を作り出す

繰り返しになりますが、完璧な人はこの世にいません。何かが得意で何かが苦手、そんな人が集まってチームを形成し、1つの目標に向かっています。なのであれば、お互いの強みをうまく組み合わせ、またお互いの弱みを補完し合うことによって、1人では成し遂げられないような大きなことにもチャレンジできる。これがチームなのです。

私なりの解釈をすると、チームの中で個人が自立するということは、「強みと弱みをしっかりと自己認識し、そのうえで特徴の違うチームメイトと高度な依存関係を構築することで、自らの強みを最大化し自己実現を果たしていくこと」ではないかと考えています。

また、そんなメンバーが集まって1つの目標に向かえば、おのずと良いチームができる気がします。人の成長・能力の開発・可能性の拡大に繋がる高度な関係性か、それともつながらない低レベルな関係性か、ひとことで「頼る」と言っても正反対の性質を持っていることに気づかされます。

まとめ:「自立」とは仲間を頼り自己実現に向かうこと

ビジネスでは当たり前に使われている「WIN-WIN」という言葉。なんとなく理解していたかもしれませんが、今回は「自立」という切り口から改めて整理してみました。

それは決して、お互いがぬるま湯に浸るということではありません。それぞれの武器を尖らせる努力をした上で、補完関係が重要だということです。

自分には強みもあるけれどできないこともたくさんある、という謙虚な姿勢のもと、真に自立した人間たちの高度な依存関係によって、お互いが自己実現に向かっている状態を「WIN-WIN」と呼ぶのではないでしょうか。

皆さんの職場にも当てはめてみてください。一緒に働くメンバー、クライアント、地域など、WIN-WINの関係を築けるとその職場はまちがいなく発展することでしょう。

また、WIN-WINの関係と似た言葉として、「共存共栄」「GIVE&TAKE」「持ちつ持たれつ」などがあります。いずれも、お互いの成長を大切にしながら使いたい言葉です。