Facebookの成長鈍化と困難な道

一方で、Facebookの暴落の原因とされている主たる要素は、まずユーザー数の伸びが明らかに鈍化していることです。

2Q(4-6月)の1日あたりのユーザー数(DAU)は14億7100万人・前期比1.5%増、月間ユーザー数(MAU)は22億3400万人で前期比1.7%増となりました。

Facebookのユーザー前期比はこれまで3%前後で推移してきていますので、1%台という数字は2012年にFacebookが上場を果たしてから最低の数字です。売上高も前年同期比42%増の132億ドル、純利益は31%増の51億ドルでしたが、売上高は市場予測の133億ドルに達しませんでした。

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画像引用元:株価暴落とフェイク対策、フェイスブックの迷走はソーシャルメディアの潮目か

さらにFacebookには相次いで逆風が押し寄せています。3月に発覚したケンブリッジ・アナリティカによるユーザーデータ大量流出事件の影響からようやく株価が回復したところで、マーク・ザッカーバーグCEOが米国メディアRecordの取材で、ホロコースト否定論に味方するかのような発言を行ったことから、米英のユダヤ人団体が非難声明を出す事態になりました。

参考:
Facebook「ホロコースト否定論」投稿への見解、ユダヤ人のザッカーバーグCEOが言及

ザッカーバーグ自身がユダヤ人であることから、余計にこの問題は大きくなったようです。ホロコーストを否定する団体の投稿を削除することをザッカーバーグが拒んでいることに激しい抗議が寄せられたために、ホロコーストを否認する考えを是認しているわけではないことを強調する発言をせざるを得なくなりました。

また特定の集団の中で起こる暴力や憎悪を認めるような「一線を越えた」投稿は削除されるとしましたが、これでは不十分と考える人たちの抗議は続いています。Facebookでは不適切な内容を含む可能性のあるコンテンツをチェックするため、世界中で何千人ものモデレーターが人工知能の力を使って監視を行っています。

ザッカーバーグを含む経営幹部は、同社が「真実の仲裁人」になることは控えたいと主張してユーザーに「自己判断」を求めており、ザッカーバーグの発言もこの方針に沿ったものと思われますが、月間アクティブユーザー数20億人とも言われる巨大な世界メディアであるFacebookの姿勢としてそれで済むのかどうか。難しい局面に立たされています。

GDPRとFacebook

ヨーロッパのデータ保護規制「GDPR」もFacebookを悩ませる一因と言えるでしょう。

2018年5月25日にEU諸国で適用開始されたこの規則は、これまでユーザーの個人情報を牧歌的に扱って来たFacebookを直撃することになりました。GDPRはEU圏内の個人情報を扱う全世界の企業が対象となり、またその個人情報の取り扱いに関して違反を行ったと見なされる場合に課せられる高額な制裁金が企業を震え上がらせています。

欧州委員会の弁護士ベルンハルト・スキマ(Bernhard Schima)はGDPRが施行されると同時にFacebookを提訴。さらにプライバシー保護のための非営利団体noybのマックス・シュレムス氏は発表文で「Facebookはこれまで、同意しないユーザーのアカウントを強制ブロックさえしてきた。つまり、最終的にユーザーはアカウントを削除するか、同意ボタンを押すかを選ばなければならなかった。それは自由な選択とはいえず、北朝鮮の選挙プロセスを思わせるようなものだ」と痛烈に批判しました。

参考:
GDPR施行、“同意の強制”でさっそくFacebookとGoogleに対し初の提訴 | TechCrunch Japan

GDPRを遵守しなかった場合には、最大で歳入の4%の罰金が課されることになります。市場はFacebookがGDPRによって個人情報を自由に行使できなくなり、新法の遵守を確実にするために弁護士を雇う費用を追加した場合、広告利益を減少させる可能性があると見ているようです。

参考:
EUで施行されるGDPRとは?日本の企業も知らなきゃ損するホームページのプライバシー保護|ferret [フェレット]