厚生労働省が2018年に発表した「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」によると、監督指導を実施した25,676事業場のうち全体の70.3%にあたる18,061事業場で労働基準関係法令違反が確認されました。違反している事業所の中でも時間外・休日労働が月80時間を超える労働者がいる事業場は8,592もあり、対策が必要とされています。

参考:
厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」

業務分担やフローを見直すなど様々な対策がありますが、業務のIT化も有効な手段として注目したいところです。業務の効率化に役立つソフトは、営業管理、顧客管理、バックオフィス支援など様々な分野で展開しています。その中でも今回は労務管理に着目し、業務効率を大幅に向上できる労務管理ソフトを紹介します。

>>その前に、労務管理とは何かをおさらいしたい方はこちら

目次

  1. ソフト導入で効率化が期待できる労務管理
  2. 労務管理ソフトによる効率化が可能な業務とは
  3. 重要な情報をたくさん搭載するけれどセキュリティは?
  4. 業務負担を楽にする労務管理ソフトの紹介
  5. まとめ

ソフト導入で効率化が期待できる労務管理

ソフト導入で効率化が期待できる労務管理

労務管理は、入退社の際の手続きで社会保険や雇用保険の手続きのための書類作成や提出の作業が煩雑であり、会社の規模が大きくなるにつれて、マンパワーに頼った体制では業務運用が厳しくなります。労務管理システムによる自動書類作成や電子申請は、従業員数が多くなっても少数の労務人事担当で対応できるのが強みです。

厚生労働省が実施した「電子申請に関するアンケート調査結果(平成29年度)」によると、「行政機関へ出向く移動時間や待ち時間の節約になる」「24時間365日いつでも申請や届出ができる」といったメリットを回答している声があり、労務管理ソフトの活用に期待がかかるところです。

労務管理ソフトによる効率化が可能な業務とは

労務管理ソフトによる効率化が可能な業務とは

労務管理のために開発されたソフトウェアを導入すると、どのような業務を改善できるのかチェックしてみましょう。労務管理の仕事は幅広く、労務手続き、勤怠管理、給与計算などがあり、それぞれに特化したソフトが存在します。

ここでは、労務手続きにフォーカスして紹介します。

社会保険・雇用保険の作成および提出

会社に入社すると手続きが必要になる社会保険や雇用保険は、労務人事担当にとって手間のかかる業務の一つです。

新入社員の多い時期など、特定の時期に集中して業務が発生するケースも多いでしょう。各種手続き書類を作成し、ハローワークや年金事務所などの必要な窓口に提出しなければならず、社内だけで完結しないのが手続き業務の面倒なところです。

労務管理ソフトを利用する際の最も大きな醍醐味と言えるのが、この社会保険・雇用保険の書類作成と提出業務です。

従業員の登録情報を利用し自動的に必要書類を作成し、オンラインで提出まで可能な労務管理ソフトなら、作業に費やす時間を大きく削減できます。必要情報の入力も従業員にしてもらえれば、転記ミスも手間もなく最もスピーディーです。

年末調整

年末調整は一年に一度の面倒な作業として認識している方も少なくないでしょう。

特に従業員数の多い会社は、全社員の必要書類をあわせると、そのボリュームに驚くと思います。従業員に必要書類を渡し、記入してもらい回収するのも一苦労です。従業員から記入について質問される場合もあり、対応にも時間がかかります。

従業員それぞれが自分で必要情報をオンライン上で入力するだけで年末調整が可能な労務管理ソフトなら、労務人事担当の負担は大きく削減されます。オンライン上で完結するため、大量の紙を使う煩わしさからも解放されます。

従業員の人事情報の管理

労務管理ソフトは、各種書類の申請に必要なデータを蓄積するため、従業員に関する情報を搭載したデータベースでもあります。

扶養や婚姻をはじめ、マイナンバーなど取り扱う情報は幅広くあります。データベースにおいて大切な要素は情報のアップデートです。引っ越しによる住所変更などの際、従業員自身が自らの情報をアップデートできれば労務人事担当の手間をかけずに、最新の状態にデータを保てます。

モバイルに対応したクラウドソフトなら、操作する場所を選ばず便利です。

重要な情報をたくさん搭載するけれどセキュリティは?

取り扱う情報が実にデリケートなのが労務管理の仕事です。

社員の個人情報を登録する労務管理ソフトのセキュリティ対策はとても気になるところです。データの暗号化やログインの際の二段階認証、権限付与機能といった部分のほか、クラウドソフトの場合はデータセンターの管理体制なども把握しておきましょう。

業務負担を楽にする労務管理ソフトの紹介

数ある労務管理ソフトの中から優れた機能を持ち、業務効率化に貢献するものをピックアップしました。労務管理ソフトの選定を検討する際、お役立ていただければ幸いです。

OFFICESTATION

FFICESTATION
引用:OFFICESTATION

97種類の帳票に対応している労務管理ソフトです。

従業員の情報は、本人にマイページから入力してもらえます。デバイスはパソコンのみではなく、スマートフォンにも対応しており、社外からでも時間があるときに登録してもらえるため、労務人事担当者の作業負担を軽減できます。

従業員は、結婚などのライフイベントが発生した場合、申請書類を選択し、画面をスクロールしながら情報を登録するだけでシンプルに手続きができます。登録情報を元にソフトが書類を自動作成してくれて電子申請までできる効率の良さが特徴です。

jinjer労務

jinjer労務
引用:jinjer労務

jinjer労務は、入退社の手続きをオンラインで手軽に完了できます。

厚生年金や健康保険の手続きのために提出窓口を訪問する時間のロスをなくします。業務効率を格段にアップできる機能を搭載しつつも、従業員一人あたり300円という安価で利用できるコストパフォーマンスの高さが魅力です。

社労士に依頼するコストも削減できます。jinjerシリーズには人事管理など、他にも便利なサービスがあります。

イージアZero

イージアZero
引用:イージアZero

自社で社会保険の手続きを手軽に行える労務管理ソフトです。

すでに会社で使用している給与計算ソフトと連携できます。複雑な操作を行わなくても誰にでも簡単に電子申請ができるのが魅力です。社員が入社する際、自分で登録情報を入力してもらいデータを生成するため、転載によるミス発生や作業時間の負担がありません。

社会保険労務士とのコンタクトや検索も可能です。

SmartHR

SmartHR
引用:SmartHR

SmartHRは、毎月1,000社以上が導入している、登録企業数No.1のクラウド労務管理ソフトです。

労務手続きにかかる作業を大きく効率化できます。各種提出書類の作成にあたり、従業員本人から直接情報を収集し、登録データから社会保険や雇用保険の提出書類を自動作成できます。給与明細、雇用契約、年末調整をすべてオンラインで実施でき、ペーパーレス化を実現できます。

従業員の情報管理にあたり、自社にとって必要な項目の追加や権限設定が手軽にできる使い勝手の良さも特徴の一つです。

人事労務 freee

人事労務 freee
引用:人事労務 freee

人事労務 freeeは、10万事業所で利用されています。

給与計算から労務管理まで労務担当の仕事を効率化できます。勤怠や従業員に関する情報をもとに給与を自動計算し給与明細作成も可能です。年末調整や労働保険の更新も効率的に進められます。書類作成時の記載ミスや残業代の計算など、アナログ作業によるミスを防止、労務リスクを減少できます。

スタートアップから中堅企業まで、幅広く使用できます。

社労夢 Company Edition

社労夢 Company Edition
引用:社労夢 Company Edition

中堅大手企業に向けて開発された社会保険・労務管理の申請手続きと進捗を管理できるソフトです。

人事管理システムと給与計算システムとの連携も可能で、必要なデータを使用して手続きを行えます。申請期日遅れを通知するアラート昨日など、担当者にとって便利な機能を多数搭載しています。電子申請はe-Gov一括電子申請に対応し、多数の手続きでも時間をかけずにスムーズに進められます。

クラウドとオンプレミスの2種類の形式で提供しています。

ジョブカン労務管理

jobcan.png

引用:ジョブカン労務管理

ジョブカン労務管理は、クラウドを利用し労務に関する業務を効率化できます。

従業員の社会保険や労働保険の手続きを帳票作成から提出までワンストップで実行します。従業員は申請に必要なデータをマイページから登録します。そのため、労務担当に負担をかけることなく、従業員情報を一元管理できます。手続き案内機能など、操作をスムーズに行えるように配慮されているため、ソフトの操作が苦手な社員でも安心です。

30日間の無料お試し期間があるため、実際に使い勝手を確認してから導入できて安心です。

まとめ

今回紹介したように、労務管理を効率化できるソフトはたくさんありますが、自社のニーズに合ったものを選ぶのはなかなか難しいことです。

積極的に無料体験に申し込んだり、問い合わせをするなどアクションをすると良いでしょう。ITがあまり得意ではない方は、労務管理にソフトを使用するのは敷居が高いと感じるかもしれません。しかし、アナログな労務管理は、パフォーマンスが担当者の能力やコンディションに依存するため、精度に不安が残ります。

企業が成長する過程には、色々な業務が重なり、突然仕事が進まなくなってしまうという事態が突如訪れます。ハードルが高く感じても、日頃より労務管理ソフトをはじめとしたITツールを導入しておくのが理想的です。

ITが苦手な方は、労務管理ソフトの選定時に、インターフェースやサポート体制に注目すると良いでしょう。操作しやすく、万が一困っても助けてもらえることほど、心強いことはありません。「ユーザー想い」を感じる労務管理ソフトであるのかチェックしてみましょう。