2020年代に活躍するニューエリートに求められる4つの条件
これからの時代は、どの仕事もどの企業も、いつまで存続するかわかりません。極端ではありますが、いつ今の仕事がなくなってしまうかはわからないのです。未来を生き抜くビジネスパーソンになるためには、なにかが起きたときに対処できるだけの力をつけておかなければなりません。
Googleで人材育成分野を担当したピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、組織開発や人材育成、働き方改革のコンサルティングのプロフェッショナル。彼は2020年代の成功者となる「ニューエリート」の条件を分析しています。
今回は、そのなかからすぐに実践できる4つの条件を紹介します。
参考:
ピョートル・フェリークス・グジバチ著(2018).「ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち」大和書房
FacebookやGoogleで活躍する「ニューエリート」とは
従来のエリートは、固定化された地位の上に君臨していました。有名大学を出て、大手企業など地位のある肩書きを手にし、その世界にいる限りはエリートとして君臨し続けられるシステムが生きていたのです。しかし、その一方で伸びしろがなく、それ以上の成功が見込めないケースも多くあります。
日本では「有名大学を卒業し、大手企業に就職し、順調に出世コースに乗っている人」をエリートとする傾向があります。実際にエリート街道を歩むのは、入社5年目までにコアメンバーに昇格できた人だけです。本来、持続的に成長する人こそ優秀な人材でありエリートとされるべきなのに、あまりにも偏った道しか用意されていません。
しかし、ピョートル氏によれば従来の資本主義は少しずつ形を変えており、今は新しい働き方をする人々がFacebookやGoogleなどの企業で活躍しています。新しいエリート像が誕生しつつあるのです。その新しいエリートたちのなかでは、「世界を変える」という大義名分と「楽しいからやる」というモチベーションが両立しています。
ピョートル氏の会社では、ビジネスパーソンを分類した際に「社会に魔法をかけ、変革を起こす影響力を実際に持っている」ビジネスパーソンを「変革層」と定義しています。この変革層に入っているビジネスパーソンこそ、ニューエリートになれるのです。
ニューエリートが持つ4つの特徴
これからの時代をリードするニューエリートが持つ4つの特徴について、ピョートル氏の分析をもとにひとつずつ紹介していきます。
1.利他主義
これまでのエリートが強欲だったのに対して、ニューエリートは利他主義です。現在の日本はとても豊かな社会に成長したので、昔に比べて「もっとお金が欲しい」「車が欲しい」といった金銭欲や物欲のために仕事に熱中できる人は少なくなっています。
現在のビジネスパーソンの多くは、自己実現のために仕事に取り組んでいます。自己実現するためには、自己表現を通じて周囲の人になんらかの価値を与える必要があります。例えば有益なサービスを営業として紹介したり、今までになかったアプリをエンジニアとして開発したりと、自身の強みを活かして世の中に価値を提供するということです。
こうした活動を「自己実現」とだけ考えると利他主義につながらないように感じますが、世の中に価値を提供する自己実現は他者貢献でもあります。自己実現は自分ひとりでできるものではなく、他者との関わりのなかで達成するものでもあるからです。
*利他主義な行動をとるために、まずは自分がどんなビジョンを持っていて、それを実現するためにはどんなミッションがあるのかを具体的にイメージしましょう。*そこから行動していけば、自然と利他主義な活動ができ、社会に求められる存在になります。
2.学習主義
ニューエリートの行動は計画主義ではなく、学習主義です。社会人になってからも常に学び続ける意識があり、アップデートを絶やしません。仕事以外の活動によって学びを得ることももちろん大切ですが、本業である仕事自体に学びを絡めた方が伸びしろが大きくなります。
また、学びたいときは独学だけに頼るのではなく、その道のプロに会うことも大切です。そのためにお金を使うのが、上達のための一番の近道だと言えます。
質問するべきことは
・その人の価値観
・これまでの人生の歩み
・成功した理由
・成功しそうで失敗した理由
の4点です。上記を中心に深堀りしていきましょう。
その際に気を付けるべきことは、相手もなんらかの学びを得られるように工夫すること。そして、学んだ情報はできるだけ周囲にシェアし、紹介してもらったら自分からも人を紹介することです。人との縁をつなげていくと、自然と新しい縁が集まるようになります。
3.オープンな人間関係
ニューエリートは、クローズドな人間関係ではなくオープンな人間関係を築きます。日本人は師匠やメンターなど特定の人間と深く関わる傾向があり、同じ会社内での飲み会を大事にするなど内輪での狭く深いコミュニケーションを好みがちです。しかし自分の視野と可能性を広げていくには、より広い人間関係を築くことも大切です。
師匠は必ずしもひとりに限定する必要はありません。たったひとりの師匠を自分のロールモデルにしてしまうと、気づかないうちに自分の行動パターンが限定されてしまいます。選択肢が少ない方が人は悩む回数が減るため、安心しやすい環境になります。ロールモデルをひとりに限ることは、楽な選択だとも言えるのです。しかし、楽な選択は難しい未来につながります。ロールモデルとなる師匠を限定せず、すべての人を学びの対象だと捉えましょう。
また、ニューエリートはチームも固定化せず、流動化する傾向があります。Googleではチームをピラミッド型の縦割りにせず、プロジェクトごとに人が集まり、プロジェクトが完了したら解散します。そのプロジェクトに興味を持った人が集まるので、意欲的な取り組みができる点がメリットです。魅力的なプロジェクトであれば有能な人材が複数集まるため、人的資源も豊富になり、プロジェクトの成功率も上がります。
4.新しい原則を作る
これから活躍するニューエリートは、0から1の価値を生み出せる人材です。そのためには、リーダーシップと自分の専門外の分野でもプロジェクトを達成できるだけの手腕が求められます。
しかし、専門スキル以外のプロジェクトでは成果が出ないリーダーの方が多いのが現状です。従来はリーダーの専門分野とチームの仕事の内容が一致していることが一般的で、それが最も効率的なやり方だとして好まれていたため、当然の結果でもあります。
*専門外の分野でもリーダーシップを発揮し、プロジェクトを成功に導くリーダーになるには「いかにエキスパートをチームに迎い入れて成果を出すかが問われる」*とピョートル氏は述べます。次期リーダーとなるニューエリートは、人とつながり、巻き込む力を持っている人材なのです。
チームがプロジェクトを成功させるには、チーム内のコミュニケーションを円滑に行う必要があります。その際に重要なのは、チームメイト同士が得意な情報を持ち寄り、必要な情報を交換することです。Web会議が盛んなGoogleにおいても、重要なプロジェクトを進める際には合宿などで長時間いっしょに過ごしながらアウトプット重視のコミュニケーションを行っています。
アウトプット重視の会議を行うコツは、会議の目的を明確にしておくことです。アウトプットが見えないまま会議を行うと、なかなか話が進まず時間ばかりかかってしまうのであまり成果が得られません。ニューエリートとなるリーダーは、会議前に目標を提示し、チームメイトが会議で積極的にアウトプットできる状態へ導きます。
- Googleとは、世界最大の検索エンジンであるGoogleを展開する米国の企業です。1998年に創業され急激に成長しました。その検索エンジンであるGoogleは、現在日本でも展開していて、日本のYahoo!Japanにも検索結果のデータを提供するなど、検索市場において圧倒的な地位を築いています。
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