ERPの導入手順とは?選び方のポイントとあわせて解説!
経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を一元管理し、適切に活用できる「ERP」(Enterprise Resource Planning)。日本語では「統合基幹業務システム」と呼ばれており、企業経営の効率化や、全社的な情報共有を目的に導入を検討する企業が増えてきました。
しかし、具体的にどのように導入を進めれば良いのか、どのような製品を選べば良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ERPを導入する流れと、製品を選ぶ際のポイントについて紹介します。ERPを導入するためには、システムの統合や業務プロセスの変更などが必要であり、その影響は広範囲にわたります。その分慎重に進めていくことが求められますので、この記事で導入までの手順をしっかりとつかんでおきましょう。
▼そもそもERPとは?▼
経営判断を加速化!ERPの基本とメリット・デメリット
目次
ERPの導入の流れ
ERPの導入は、大きく次のような段階に分けることができます。
1.導入目的の明確化
2.製品とベンダーの選定
3.契約・キックオフ
4.要件定義
5.設計・開発
6.テスト
7.リリース準備
8.リリース・運用
一つひとつの手順について、詳しく見ていきましょう。
導入目的の明確化
まずはじめに、ERPを導入する目的や得たい成果を明確にします。、企業経営における中長期的な計画と現状を照らし合わせ、自社が抱える課題を分析・抽出しましょう。
課題から導き出される導入目的には以下のようなものがあります。
・企業経営における意思決定を迅速にしたい
・全社的な情報共有を効率化させたい
・部門ごとに異なる管理システムを統合したい
・内部体制によるコンプライアンス対応を強化したい
ただし、時間やコストの制約がある中、すべての実現を目指すことはあまり現実的ではありません。何がマストで何がベターなのかを検討し、優先順位をつけて目的を整理しましょう。それにより、ERP製品の選定や適用範囲、その後の社内体制などが大きく異なってきます。
また、この段階で導入プロジェクトの大まかなスケジュールや、ERP導入によって改善したい経営指標もある程度明らかにしておきましょう。この企画段階はその後の展開に大きく影響するため、全プロセスの中でも特に重要度が高く、ERP導入の成否がかかっているといっても過言ではありません。
製品とベンダーの選定
解決したい課題や導入目的が明らかになったら、次はそれらに適合するERP製品や導入形態、ベンダー(導入委託先)を選定します。目的によっては自社だけで導入できる場合もありますが、基本的にはベンダーと共に選定を進める場合がほとんどです。
まずは製品の比較サイトなどを参考にし、各ベンダーの情報を収集しましょう。そして興味のあるベンダーには、導入目的などを明記したRFI(情報提供依頼)を発行し、製品カタログやパンフレット、事例集などを請求します。
ベンダー候補をある程度絞り込めたら、次はRFP(提案依頼書)を発行し、ベンダーにシステムの内容について提案してもらいます。RFPには予算規模やスケジュール、適用範囲、業務フローなどの記述が必要です。
これらの情報が曖昧だと、ベンダーも具体的な提案ができなくなり、要件定義をする際にも見積もりが大幅に膨れ上がるおそれがあります。本格的な分析はこの時点では必要ありませんが、ある程度全体像や業務分析の結果を明らかにしておきましょう。
契約・キックオフ
その後は必要に応じて各ベンダーにプレゼンテーションを依頼し、提案書を吟味して導入製品やベンダーを決定します。導入や運用にはベンダーの適切なサポートが必須なので、自社のことを十分理解したうえで、信頼の置けるベンダーを選びましょう。
契約後は目標やスケジュールなどを確認して認識をすり合わせるために、社内の関係者やベンダーを集め、キックオフミーティングを開きます。そこで経営のトップだけでなく、実際の現場を仕切るリーダーやシステム管理者も同席のうえ強いプロジェクト体制を組むことが、導入を成功させる上で大事な点です。
要件定義
ERP製品を導入するにあたり、業務を変更する必要がないもの(フィット)とあるもの(ギャップ)を洗い出し、それらの対応をどのように進めていくかを検討します。これを「フィット&ギャップ分析」といいます。
国産のERP製品であれば、日本の商習慣に合わせた標準機能が搭載されていますが、100%フィットするわけではありません。ギャップがある業務については、機能を追加(アドオン開発)する、あるいは製品に業務を合わせるなど、重要度に応じて対応策を判断します。
このように業務分析の結果を踏まえながら、導入に必要なシステムの要件を詰めていきます。
設計・開発
要件が固まったら、ベンダー企業がシステムの設計や開発を行い、製品を最終的な形へと近づけていきます。また、アドオン開発や他システムとのインターフェース開発が必要であれば、それらも並行して行います。
開発の最中は、新たな業務のマニュアル作成やシステムトレーニング、移行における社内調整などを自社で進めます。ベンダーとコミュニケーションを取りながら進捗を確認し、問題や疑問点があればベンダーに相談しましょう。
テスト
設計・開発を終えたら、次はテストフェーズに移ります。テストの種類は大きく分けて3つあります。
・単体テスト
その機能が単体で正しく動作するかを検証します。
・結合テスト
それぞれの機能が連携して動いているか、データの受け渡しに問題がないかをチェックします。
・総合テスト
本番の運用に近い形で、新しい業務システムが問題なく動作するか検証します。既存システムを利用する場合は、並行して稼働させます。
それぞれの機能が正常に動くのを確認したら、ピーク時の状況でも問題がないかを確認するために負荷テストを行います。問題があればソフトウェアをチューニングするなど、必要な措置を取ります。
リリース準備
テストが完了したら、本番環境へのデータ移行やユーザー教育など、リリースに向けて必要な準備を行います。
特にリリース直後は、これまでの慣れたシステムと勝手が違うため、ストレスを感じるユーザー(社員)も多く、操作方法に関するトラブルも頻発しがちです。そのような事態を最小限に抑えるため、リリース前には操作マニュアルの配布や説明会の開催などを徹底して行いましょう。
また、システムや操作方法に関する問い合わせ窓口を整備・周知しておくと、ユーザーの不安を和らげることができます。
リリース・運用
すべての準備が完了したら、いよいよシステムをリリースします。大きな障害が起きていないか、正常に運用できているかなどを確認し、問題があれば対応します。システムが落ち着いて稼働するまでには時間がかかるので、引き続きベンダーの支援を受けながら運用を行いましょう。
また、リリース後は関係者を集めて、ERP導入の振り返りと評価をします。ERPの導入は長期間にわたることが多く、いつの間にか導入することが目的になってしまうケースが少なくありません。あらかじめ設定した目的・目標に対して成果が上がっているかを確認し、改善を進めていきましょう。
ERP製品の選び方のポイント
ERPの製品には様々な機能や導入形態があり、その中から自社に最適なものを選ぶことが大切です。そこで、ERP製品を選ぶためのポイントをいくつか紹介します。
目的にあった機能があるか
導入の流れでも述べましたが、まずは達成したい目的を定め、そのために必要な機能があるかを基準に製品を選定しましょう。
機能要件に合った製品がなかなか見つからない場合は、設定した要件が多く、厳しいことがほとんどです。あれもこれもと欲張りすぎると、全てを叶えるためにコストやスケジュールがどんどん膨らんでしまいます。多機能すぎるとかえって使いこなせない場合もあるため、何を重視するかを事前に整理しておきましょう。
また、ERP導入の目的によって、導入すべきERPのソフトの種類も変わります。自社に必要な機能や適用範囲を検討し、最適なソフトは何かを見極めましょう。
オールインワン型
企業経営における一連の業務を、トータルで改善できます。あらゆる業務をカバーできるため、部門間の連携強化や業務内容を一新したい場合に効果的です。
業務ソフト型
生産や営業・会計など、特定の業務を最適化させる単独システムです。改善したい分野が限定的な場合、または関連部署が少ない中小企業などが多く導入しています。
コンポーネント型
既存の業務システムに新たなシステムの追加・拡張ができるERPです。必要となる機能を後付けできるため、最も自由度が高く、これまでのシステムとの連携にも優れています。
費用は予算に合うか
自社内でシステムを構築する「オンプレミス型」だと、ハードウェア費用やソフトウェアライセンス費用、導入サポート費用、追加開発費用などの費用が発生し、トータルで3,000万円以上の金額になることも珍しくありません。一方でネットワーク経由で利用する「クラウド型」は、大きな初期費用はかからないので100万円以下での運用も可能です。
セキュリティ面を重視するならオンプレミス型に軍配が上がりますが、コストを抑えるならクラウド型がおすすめです。限られた予算の中で、機能面とコスト面を天秤にかけながら、自社に適した製品を選びましょう。
以下に2つの導入形態の特徴を簡単にまとめたので、ぜひ参考にしてください。
オンプレミス型(パッケージ型)の特徴
自社サーバを用意し、社内で運用やシステム管理を行います。そのため、外部への情報漏えいなどのリスクを低減でき、安全面において非常に優れています。
また、これまで利用してきた既存システムと融合させることで、資産を有効活用できます。デメリットとしては、システムを構築・運用するためのコストが高く、導入期間も長期にわたることが挙げられます。
クラウド型の特徴
インターネットを介してシステムを起動させ、運用・管理を行います。社内にシステムを構築する必要がないため、導入コスト・期間を大幅にカットできます。運用・保守に人員をさく不要もありません。
しかし、社内でなくクラウド上にデータを保管するため、セキュリティ面においては不安が残ります。また、インターネット回線が不安定になった場合、システムが止まり業務に大きな支障が出ることがあります。
便利な特色があるか
特定の業界や業務を対象にした、特色のあるERP製品も中には存在します。
例えば以下のようなものです。
・販売・EC業の場合
株式会社ニューレボの「ロジクラ」は、商品の受注から発送までの作業をクラウドで一元管理し、業務を大幅に効率化できます。
・建設・工事業の場合
株式会社内田洋行ITソリューションズの「PROCES.S」は、建設業や工事業の基幹業務をすべて網羅しており、トータルのサポートが可能です。
・バックオフィス業務の場合
freee株式会社の「クラウドERP freee」は、会計や人事労務のバックオフィス業務を一元管理し、業務効率化や生産性向上を実現させます。
このように、製品によって特色は様々なので、自社と特色がフィットするものを選ぶとより良いでしょう。
シェアは高いか
ERP製品を選ぶ際には、機能面・コスト面に加えてシェアの高さも吟味した方が良いでしょう。
シェアが高いと、その分サービスや問い合わせ対応がしっかりしていることが期待できます。また、他社が過去に同製品を導入した事例を参考に、どのように進めていけば良いか、注意すべきポイントは何かを確認できます。問題が発生した場合でも、知識や経験が豊富なベンダーであることが多く、非常に頼りになるでしょう。
導入目的に製品が十分合っていれば、シェアは低くても問題はないかもしれませんが、シェアが高いことで得られるメリットも視野に入れたうえで検討していきましょう。
まとめ
ERP製品の導入には、多大な費用と時間、そして労力を必要とします。
しかし、目的を見誤ったり、製品の選定が適切でなかったりすると、せっかくの苦労も水の泡になりかねません。そうならないよう、はじめの企画段階で導入目的をしっかり定め、その達成に向けて導入の手順を踏んでいきましょう。
また、ERP製品を選ぶ際には、必要な機能・適用範囲・コストなど総合的な視点から検討することが大切です。様々なソフトの種類や導入形態があるので、ベンダーから情報を収集しつつ、現場の声にも耳を傾けながら、自社に適切なものを選びましょう。
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