スマートフォンの普及にともない、アプリによってさまざまなサービスが提供されるようになりました。その数は多く、また新しいものが次から次へと発信されていくため、アプリ運営にはプロモーションが不可欠です。

新規インストールの獲得を目的とした施策はもちろんのこと、近年では、既存ユーザーの定着・復帰を目的としたリテンション施策が注目されています。

そのリテンション施策に取り組むにあたり、ポイントとなるのが「イベント」です。
イベントとは、ゲームアプリであれば「チュートリアル突破」、月額系アプリであれば「有料ユーザー登録完了」といったような、「アプリ内においてユーザーによる行動の節目となる部分」に設置するものです。
また、広告効果測定ツール(adjustやAppsFlyerといったSDK)への登録・アプリ内への実装を行うことで計測できるようになります。

この記事では、アプリマーケティングのD2C Rが、「イベント」によってどのような分析が可能となるのか、どういったリテンション施策ができるのかについて紹介していきます。

目次

  1. イベントについて
  2. ゲームアプリにおける基本のイベント
    1. ゲームアプリでの分析例
  3. ゲーム以外のアプリのイベント
    1. ゲーム以外のアプリでの分析例
  4. まとめ

イベントについて

イベントを設定する際には、それぞれのアプリの特徴にあった地点、今後分析していきたい地点を見極めることが重要です。

アプリ毎にイベントを設置する箇所は異なりますが、今回はその中でも「押さえておくべき基本のイベント設置地点」をご紹介いたします。

ゲームアプリにおける基本のイベント

ゲームアプリでは、下記のようなイベントが分析で多く活用されています。

・チュートリアル突破
・課金(細かく見る場合は課金額ごと、アイテムごとに)
・特定機能の初利用
・レベル
・クエスト突破
   …

とくに、チュートリアルはほとんどのゲームアプリで実装されている機能なので、ユーザーを定着させる第一関門とも言えるでしょう。現に、チュートリアルで飽きて離脱してしまうユーザーも少なくありません。実際にそのような経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

また、ゲームアプリの運営を行っていく上で、開発費用の回収という視点でも「課金」のイベントは欠かせません。どういったユーザーが課金しているのか、ユーザーの課金傾向を探ることにより、その後のリテンション施策にもつなげていくことが可能です。

ゲームアプリでの分析例

DMPでは、説明したようなアプリ内イベントに関するデータを集約し、そのデータを蓄積していくことができます。D2C Rでは、プライベートDMP「ART DMP」を用いて蓄積したデータをもとに分析を行います。

▼DMPとは?▼
DMPって何なの?気になる基礎知識とこれからの活用法を解説

例として、「チュートリアル突破」のイベントを設置した場合の分析をしてみます。

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※数値はイメージです。

2つのアプリにてチュートリアル突破数の傾向を見てみました。

アプリAでは、インストール数は多いもののチュートリアル突破数がかなり少なく、離脱ユーザーが多いという課題が見えてきます。この課題の解決策として、「チュートリアル自体を簡潔でわかりやすいものにする」といったアプリ内改善策のほか、「チュートリアル突破したタイミングでインセンティブを付与する」「その旨を伝えるような広告を打ち出す」といったリテンション施策が考えられます。

アプリBでは、インストール数よりもチュートリアル突破数の方が多いという結果になりました。実際には起こるはずがないことですので、チュートリアル突破数をユーザーがもつIDごとに抽出したところ、約3分の1のユーザーにてIDの重複が見られ、同じユーザーが何度もチュートリアルを突破していることがわかりました。ここから、アプリBにおいては、ユーザーによるリセットマラソンが多い可能性がある、といった傾向が見えてきました。

このように、「チュートリアル突破」という1つのイベントを設置するだけで、アプリによってこのような課題・傾向がみえてきます。

もちろん、チュートリアル突破したあともユーザーは離脱していきます。
イベント地点を細かく設置することで、ユーザーがどこで離脱したのかを詳しく把握できます。
あるアプリにて、クエスト毎のイベント突破数を見てみました。

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上記の分析結果から、クエスト②→③にうつる際に大きくユーザーが減少していることがわかります。要因としては、クエスト③で難易度が上がり、離脱してしまうユーザーが多いといった可能性が考えられます。課題解決策としては、クエスト③を突破できていないユーザーに対して、クエスト直後にアプリ内メッセージで攻略のコツを伝えるといった施策が考えられます。

このように、イベントを細かく、かつそれぞれのアプリに合った箇所に設置することにより、ユーザーの行動を分析し、課題や傾向に対する打ち手を考えられるようになります。

ゲーム以外のアプリのイベント

ゲーム以外のアプリでも、ゲームアプリと似たような考え方でイベントを設置します。

たとえば「もっと売上を伸ばしたい」という目的であった際に、動画系・音楽系など月額制のアプリに関しては「無料会員登録」「有料会員登録」といった地点、カメラのフィルターなどその都度アイテムに課金していくタイプのアプリではそのアイテム毎にイベントを設置します。

ゲーム以外のアプリでの分析例

例として、ツール系アプリの課金到達地点を見てみます。

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このアプリでは、インストール数はかなり多いですが、コンテンツ課金数・年額プラン契約数はかなり少ないことが分かります。課金者数が少ない要因はさまざまですが、例えば「課金プランへの魅力を感じているユーザーが少ない」、「課金プランによるメリットをユーザーに伝えきれていない」といった課題が考えられます。

上記のような課題に対しては、課金プラン自体の内容を見直すことや、課金していないものの利用率の高い(連続ログイン5日など)ユーザーに対し課金プランへ加入することのメリットを訴求した広告を配信する、といった施策が考えられます。

こういった課金以外の視点でも、「もっとアプリを活用してほしい」という目的であれば、特定の機能にイベントを設置し、その機能を利用していないユーザーに対するリテンション施策が有効です。

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あるアプリにて特定の機能2つの利用者数を比較したところ、どちらも無料で利用できる機能にも関わらず、その数に大きな差があることがわかりました。
この場合、機能②を使ったことのないユーザーに対して、機能自体の説明やTipsを動画広告として配信し、ユーザーによるアプリの活用をさらに促進するといった施策の実施が可能です。

まとめ

リテンション施策を行う上で重要となる「イベント」について、分析結果のデータと合わせて紹介いたしました。

イベントの設置には、

  • 何を目的としてリテンション施策を行うのか(課金、活用促進、休眠復帰、etc…)
  • その目的へアプローチするために、ユーザーのどの行動(チュートリアル突破、クエスト、レベル達成etc…)を分析するべきなのか

の2点を意識することが重要です。

目的や解決したい内容・分析したい内容から逆算し、イベントを設定することで、より効果的なリテンション施策へつなげ、ユーザーの定着を図りましょう。