この記事は2016年3月29日の記事を更新したものです。

検索エンジンやメールマーケティング広告など、Webマーケティングのあらゆる分野でパーソナライズドという一人ひとりに最適化されたものを配信する手法が進んでいます。その中でも、広告配信を実現するDMP、SSP、DSPといったアドテクノロジーの進化はめざましく、市場も急成長しています。

ただ、専門用語が多く様々な技術がからみ合って構成されているため、「DMPの導入を検討しているものの、複雑そうでよく理解できないから敬遠している」という担当者様は少なくないのではないでしょうか。今回は、DMPについて、周辺技術と共に図解を交えて解説します。

目次

  1. DMPとは
    1. オープンDMPとは
    2. プライベートDMPとは
  2. DMPの主な3つの機能
    1. データ収集
    2. データ分析
    3. データ利用
  3. DMPを理解する際に知っておきたい4キーワード
    1. SSP
    2. DSP
    3. RTB
    4. オーディエンスデータ
  4. DMP・SSP・DSPの関係性
  5. DMPの未来

DMPとは

DMPとは、Data Management Platform(データ・マネジメント・プラットフォーム)の頭文字を取った略語で、簡単に言うと「ネット上に蓄積されているあらゆるユーザーデータを統合的に管理するプラットフォーム」のことで、巨大なデータが入ったシステムとイメージすると分かりやすいでしょう。

ユーザーデータを統合的に管理することにより、ユーザーに合わせた広告配信、マーケティングを行うことが可能になりました。DMPは大きく2つ、オープンDMPとプライベートDMPに分類されます。

オープンDMPとは

オープンDMPとは、外部メディアが保持していつユーザーの行動データやユーザーのオーディエンスデータ(ユーザーの興味関心)を蓄積する広告配信プラットフォームを指します。自社が持っていないユーザーのデータも豊富にあるため、自社だけでは取得できないオーディエンスデータを活用できます。

プライベートDMPとは

プライベートDMPとは、自社の顧客データを統合して管理できるDMPのことです。プライベートなので自社しか持ち得ないユーザーデータが保管されます。
最近では、このプライベートDMPとオープンDMPの外部データを組み合わせて使うことが多く、自社の情報と外部情報を組み合わせることで膨大な膨大なデータを広告配信に用いることが出来るようになっています。

DMPの主な3つの機能

データ収集

DMPはあらゆるユーザーデータを統合的に管理するプラットフォームなので、データを集めなければ何もできません。集めるデータとしては、

  • ホームページのアクセス解析データ
  • Web広告配信データ
  • オフラインの広告配信データ
  • 顧客属性データ
  • 顧客購買データ

などが挙げられます。オンラインのデータに関しては自社サイトならDMPのタグを貼り付けてデータ収集を行います。自社データ以外にも外部データなども取り入れられます。これらを実現されるために使われるのがCookieです。

Cookieとは

Cookieは、ホームページにブラウザ経由でアクセスすると、ブラウザに対して付与されます。そのCookieを見てホームページ側は、そのユーザー(ブラウザ)が何回アクセスしてきていて、その際どのページを見ているのかなどを把握することが出来ます。

データ分析

データが一元化できると、次はそのデータに対して、ルールに基いてセグメントを行います。基本的に以下の4つの作業を行います。

  1. 保管
  2. 正規化
  3. 分割
  4. 分析

1.保管

これは言うまでもありませんが、集めたデータを保管します。

2.正規化

集めたデータは、データの出元が違うと同じユーザーであるか分からないため、Cookieを使いIDを付与するなどして紐付けし、一元化を行うのが一般的です。例えば、Cookie213番のユーザーは会員番号432番だ。という名寄せを行うイメージです。

3.分割

このフェーズでは、特定の任意のルールに基いてデータをセグメントします。例えば、事例ページを3回アクセスしている人は興味関心度が非常に高い。などののようにセグメントを行うことで、そのセグメントに該当したユーザーだけを抽出してマーケティングを行うことが出来ます。他にもフォームまで行った人だけを抽出する。だったり、他にもユーザーの各行動に対して点数を付け(スコアリング)ることで、セグメントを行うことも一般的です。サイトアクセスで1点、事例ページアクセスで5点、会員登録で50点など。

4.分析

実際に、分割で設定したセグメントの結果を分析します。

データ利用

データ分析でセグメントで整理されたユーザーデータに対して、リマーケティング広告メルマガ配信など広告の効果を高めるために利用するのが一般的です。その他にもプッシュ通知などに用いられることもあります。最近ではアプリだけでなくブラウザ上でプッシュ通知を行うこともでき、活用の幅が広まっています。 

マーケティング広告とは、一度サイトに訪問したユーザーに対して外部メディアなどで広告を配信し、再度訪問や購買を促すための広告です。その際、DMPを活用することで訪問者全員に広告を出向せずに、角度の高そうなセグメントに該当するユーザーに対してのみリマーケティング広告を配信することが可能です。

他にもメルマガ配信であれば、サイトに直近1ヶ月アクセスのないユーザーに対してのみ再訪を促すメールなどを送ることも可能です。ECサイトなどであれば、クーポン付きのメルマガなども考えられます。

DMPを理解する際に知っておきたい4キーワード

DMPは、SSPやDSPなどのアドテクノロジーと密接に関わっており、DMPを理解するのであればその周辺情報も知っておく必要があります。
最低限知っておきたいキーワードとして「SSP」「DSP」「RTB」「オーディエンスデータ」の4つが挙げられます。

SSP

SSPとは、Supply-Side Platform(サプライ・サイド・プラットフォーム)の略で、メディア媒体側(サプライサイド)が持っている広告枠を効果的に使えるようにするためのプラットフォームです。

広告枠をなるべく高く売りたいメディア媒体を支援する仕組みを持っていると考えると分かりやすいです。

DSP

DSPとは、Demand-Side Platform(デマンド・サイド・プラットフォーム)の略で、広告主(デマンドサイド)の広告出稿効果を高め、効率化するためのプラットフォームのことを言います。2011年に日本で運用が始まりました。

メディア媒体が持っている広告枠の買い付け、広告の配信、分析などを行うことができます。また、DSPはそれ単体では機能せず、前述したSSPと連動していなければなりません。

RTB

RTBとは、Real-Time Bidding(リアル・タイム・ビッティング)の略で、DSPとSSPの間で、メディア媒体に表示する広告を瞬時に入札するための機能のことを言います。RTBが実装されたことにより、訪問ユーザーのオーディエンスデータに適切な広告内容を瞬時に判断し、配信することが可能となっています。

RTBが登場した背景には、広告主と媒体主の利害が一致したことが挙げられます。広告主は広告費を抑えつつ多くのトラフィックを獲得したいと考えていました。一方、媒体主はできるだけ高い広告費を広告主から受け取りたいと考えていました。

インプレッション単位で入札を自動ですることが出来るため、広告主は必要なトラフィックを効率よく予算を押さえて獲得することができ、媒体主は入札式のため収益を効率よく拡大することができるようになりました。

オーディエンスデータ

オーディエンスデータとは、サイトを訪問したユーザーのデータのことを指します。

ユーザーがホームページを訪問すると、ホームページ側はユーザーのCookie(クッキー) 情報を取得できます。Cookie情報にはユーザーのWeb上での行動履歴や位置情報等が記録されており、それを元にユーザーの傾向を予測したデータがオーディエンスデータです。(オーディエンスデータはユーザー個人を特定するような情報ではありません。)

DMP・SSP・DSPの関係性

DMP・SSP・DSPは、互いに影響をしあっているのですが、どのように影響しているのでしょうか。広告配信をしようとしたときの流れを図で解説します。

1.png
①メディア媒体にユーザーが来訪します。
 
2.png
②メディア媒体からSSPに向けて、訪問したユーザーに表示する広告をリクエストします。
 
3.png
③訪問したユーザーの情報を取り込んだSSPから、提携している各DSPに向けて、ユーザー情報を元にした広告リクエストが送られます。
 
5.png
④DSPはSSPから送られたデータを元に、最適な広告を分析し、SSPに送り返します。
 
4.png
⑤各DSPからレスポンスを受け取ったSSPは、その中から最も高額の広告を入札します。
 
84a_(6).png
⑥入札された広告がメディア媒体に表示され、ユーザーに届けられます。

この一連の流れが一瞬で行なわれており、2,4でRTBが動いています。

84a_(7).png
SSPがDSPに送信するユーザー情報は豊富であればあるほど精度が高くなります。
精度を高くするために、オーディエンスデータ(プライベートDMPの場合は自社データも)を保有するDMPが必要となるのです。

DMPの未来

DMPの認知が広まり、オーディエンスデータの活用が一般的になってきましたが、今後はオーディエンスデータと自社のデータを組み合わせて管理できるプライベートDMPを導入する企業が増えていくと推測できます。

広告主側にしてみれば、自社サービスと親和性の高いユーザーに向けて最適な広告を配信することが理想です。出来る限りユーザーに寄り添った広告配信が理想である以上、広告主の企業しか持ち得ないユーザーデータを活用し、より自社の顧客(または見込み顧客)にマッチした広告を配信できるプライベートDMP導入の流れが起こるのは必然でしょう。

一方で、人工知能搭載のDMPも台頭しています。2016年2月、機械学習アルゴリズムによるレコメンドエンジンを搭載した、ブレインパッド提供のプライベートDMP「Rtoaster(アールトースター)」がDMP市場でシェアNo.1を獲得しています。
DMP事業を展開するサイバーエージェントも、2016年中にDMPのオーディエンスデータと人工知能を連動させた広告自動生成・配信サービスを提供する予定と公表しています。

人工知能の学習機能により、より詳細なデータ分析が行われるようになれば、ユーザーにとって不快な広告が配信される機会は急速に減少していくでしょう。

まとめ

今回ご紹介したアドテクノロジー技術の登場により、広告は「枠」から「人」単位での考え方にシフトしたと言われています。

DMPに蓄積された情報を元に、ユーザー毎にパーソナライズドされた広告を配信できるようになった今、自社のユーザー像をこれまで以上に明確にイメージする必要があります。

広告配信に限らず、今後のマーケティングにはどれだけユーザーに寄り添えるかどうかがカギになります。
自社のユーザーを明確にできれば、あらゆるマーケティング施策を有利に運用できるでしょう。