RPAの導入にはAIやbotのように、特別な知識や技術は必要ありません。プログラマーやエンジニアなどを必要とせず簡単に導入ができるため、近年採用する企業が続々と増えています。しかし、いざRPAを導入しても、現場で運用が定着しなければ導入は失敗に終わってしまいます。無駄なコストをかけるのは避けたいところです。

そこで、RPAを導入する際に押さえておきたい4つの流れと、ソフト選びの3つのポイントを、それぞれ解説します。

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RPA導入の流れ

「RPAを導入しよう」と決めたものの、その時点では一体何から始めたらいいのか、どんな手順を踏めばいいのかがよくわからない方も多いのではないでしょうか。

RPAを導入までの流れは、大まかに分けて4つのステップを踏んでいきます。

1.自動化する範囲の策定をする

まずは日々の業務の中で、自動化したい作業を考えてみましょう。データ入力や数字管理などの想定される量が多い作業や、ヒューマンエラーを起こしやすい作業を自動化すると、生産性のアップが期待できます。

また、たまに起きるイベントではなく、毎日または毎月生じる定期的な仕事を自動化するのもおすすめです。コンスタントに発生する業務を自動化できれば、その分他の業務に取り掛かれるため、残業代の削減にもつながります。また、単純作業を自動化することで、メイン業務に集中でき質を向上させられる、というメリットも期待できるでしょう。

自動化に適した作業の例は、以下の通りです。

  • 勤怠管理のシフト表作成
  • オンラインショップの在庫管理や発注
  • SEO対策のキーワード選定や注目されているサイトの調査
  • 顧客の情報入力や変更・更新作業
  • 収集データの分析や整理

日々の仕事内容を見返して、作業時間や人員を多く取られている作業にフォーカスしてみると、自動化させる範囲を策定しやすくなります。そして自動化の範囲を策定することで、自社に合ったRPAの規模がわかるようになります。

2.目的に合ったRPAの選定

自動化する作業の範囲がイメージできたら、RPAを導入する理由や目的を明確にしましょう。目的に合ったRPAが選定できないと、導入しても社内に浸透せず、導入コストが無駄になってしまうおそれがあります。

例として、以下のような目的が考えられます。

  • データ入力を自動化することで、残業時間を削減して人件費を減らす
  • 単純作業をできるだけRPAに任せることで、繁忙期でも安定した業務が行えるようにする
  • 日々の業務負担を減らすことで、社員のワークライフバランスを向上させる

このように、目的を決めたうえでそれに合ったRPAを選びましょう。

また、RPAを導入した後、実際に利用するのは現場の従業員です。経営陣がしっかりと目的を持って導入しても、実際にRPAを使う従業員がメリットを感じなければ、運用が定着せず思った効果が得られないおそれがあります。従業員にはRPA導入の目的をしっかりと周知したうえで、下記のような具体的なメリットを説明しておきましょう。

  • 単純作業が自動化される=残業時間が減る
  • 定期的な作業が減る=他の業務に集中できる
  • データ分析が簡単になる=会議資料の作成が短時間で済む

事前に、RPAに求めることについて、社内アンケートや聞き取り調査をするのも良いかもしれません。実際にどの業務が負担になっているのか、時間と人員を取られている作業は何かを把握したうえで、問題を解決できる適切なソフトを選定しましょう。

3.RPAへのレギュラー・イレギュラーパターンの設定

導入するRPAソフトが決まったら、自動化する業務の設定を行います。ここで重要なのは、作業時にエラーが発生した時の対応方法など、イレギュラーパターンも含めて設定しておくことです。RPAを導入すると、ヒューマンエラーの心配がないので作業の正確性はアップします。ただし、これは設定したルールに基づいて、例外なく作業できた場合の話です。

例えば、アパレルのネットショップがRPAを導入した場合について、見てみましょう。顧客がネットショップで服を購入した時、注文を確定した際のメール送信から商品の発送業務までをRPAで自動化するよう、設定をしたとします。

動作に必要な情報が全て揃っていれば、滞りなく商品を顧客に届けることができます。大量に送られてくる注文データをRPAが適切に処理してくれるので、1日に処理するデータ量も増やせます。生産性が上がり、売上の上昇も期待できるでしょう。

しかし、必要な情報が1つでも抜けていた場合、RPAは設定されていない業務が発生したことで、エラーを起こします。こういったイレギュラーの度に作業が止まってしまうと、商品発送が遅れ、クレームにつながってしまいます。このような場合に毎回人間が対応していたら、せっかく導入したRPAの意味がありません。

そこでポイントになるのが、RPAの設定の際に、レギュラーパターン・イレギュラーパターンの両方をインプットしておくことです。

通常のパターンはもちろん、「必要な情報が1つ抜けていた場合は、顧客に問い合わせの連絡をして情報提供してもらう」というように、作業が途中で止まらないよう、想定できるイレギュラーパターンを細かく設定しておきます。「もしも」の事象が起きたときの対処法をインプットしておくことで、エラーによる作業停止を回避できます。

イレギュラーパターンについては、RPAの導入前によく発生していたトラブルや実際にあったヒューマンエラーなど、起こりうる事象を細かくイメージして、念入りに設定しましょう。レギュラー・イレギュラー両方の対応を細かく設定すればするほど、RPA導入による作業効率・生産性のアップが期待できます。導入後に発生したエラーもすぐにインプットすれば、その度にRPAの作業効率を上げていくことができます。

4.運用の定着化

動作条件を細かく設定したら、社内全体にRPAの運用を定着させましょう。RPAを導入してもうまく運用が定着せず、活用自体を廃止することになった企業も多いのです。

RPAは、導入に特別な知識や技術を必要としません。しかし、慣れるまでには時間がかかる人や、面倒に感じる人もいます。「自動化する=仕事が楽になる」と思えず、「覚えるより自分で作業した方が早い」と感じて、活用をしない従業員もいるかもしれません。現場でしっかり運用するためにも、導入後のサポート体制をいかに整えるかが重要になります。

例えば、以下のような対策がおすすめです。

  • 導入したRPAのベンダーが提供しているサポートシステムを利用
  • 導入前の社内研修や、導入後のサポート体制を構築
  • 社内でどのように活用されているかの情報を定期的に把握&共有
  • RPAの導入をプロジェクト化し、運用チームを結成

導入したことだけで満足せず、社内で安定した運用ができるまでサポートすることで、RPAが本来の効果を発揮できるようにしましょう。