「雑談」は本当に無駄か

ferret:
バ、バーチャルオフィス...SF映画みたいな響きですが一体...?

倉貫氏:
2014年に遠く離れた社員同士でコミュニケーションできるように、自社でつくったチャットツールのようなものです。

ferret:
既存のチャットツールだけでは、ダメだったんですか?

倉貫氏:
そうですね、僕たちは仕事をする上でいわゆる「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」よりも「ざっそう(雑談・相談)」が大切と考えていまして。既存のチャットツールでは、ちょっとしたことでも通知が飛んでしまったり、雑談がしづらかったんですよ。

ferret:
雑談が大切というのは?

倉貫氏:
なぜ「雑談」が大事かというと、チャットでいきなり離れたところにいる人へ相談するのってハードルが高いんです。

まず、相手が今そこで何をしているかを判断できないですし、何をしているかわからない人にいきなり「相談があるんだけど」と声をかけるには勇気がいる。でもパッと見ただけで、相手がそこで何をしているか判断できて、普段から雑談している仲であれば、そのハードルは低くなります。リアルオフィスの役割ってそこですよね。ただ、海外のサービスを見ても、相手がいることをすぐに判断できるうえに気楽に雑談できるツールなんてなかったんです。だったら作ってしまおう!ということで...つくったのが「Remotty」でした。

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パソコンのカメラ機能を使って、2、3分おきに利用者の状況を写真で共有。社員の写真がずらりと並んだサムネイルの下には2分割のテキスト画面。左はチャットスペース。右のタイムラインには、全社員のコメントがTwitterのように流れてくる。

相談のほかにも、社員がそこにいる安心感を共有することで、物理的に遠かった社員同士の距離が、ぐっと縮まりました。朝になるとみんなバーチャルオフィスに出社して、写真が並ぶ。仕事終わると、バーチャルオフィスから退社して、写真がグレーアウトしていく。物理的なつながりはないけれども、インターネットでつながっている。心理的な不安を減らして、オフィスにいるときの安心感を再現することができました。

ferret:
雑談と聞くと、世の中で叫ばれている効率化と逆行しているかのようにも聞こえますが...?

倉貫氏:
効率化はやるべき取り組みと認識していますが、世の中の効率化は「そっちじゃないだろ!」って方向性の取り組みが多いですよね。例えば捺印する文化とか報告するだけの会議とか...世の中から、本当の無駄はなかなかなくなりません(笑)もちろん、僕たちはそういった無駄を徹底的に排除しています。結果「無駄じゃないものは何か?」を考えぬいたら、実は雑談とか社員旅行とか人間関係を築くことこそが、効率化で解決できないことだって気づいたんです。