商品機能で他社との差を生み出し難くなっている昨今、消費者から選ばれるためにデザイン性を高めようと努力するブランドが多くなったことは、店頭に並ぶ商品を見ても明らかです。機能性も高くさらにデザイン性も良いとなれば、消費者にとって喜ばしいことは言うまでもありません。

しかしここで一つ問題なのは、デザインはそのブランドの個性を表現するための手段であるにも関わらず、他社が既に採用し消費者から受け入れられているデザインを転用するブランドが多く見受けられることです。

今回は、ブランドの個性をデザインを通じて表現するにあたり、どのような点を考慮しデザインを開発すべきか説明します。

▼前回の連載はこちら▼
ブランドを強くするペルソナの作り方

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デザインが特定のブランドを連想させるのはなぜ?

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みなさんは、他社ブランドの商品にも関わらず「あ、この商品〇〇ブランドのものに似てる」と思った経験はありませんか。

デザインはデザイナーの感性から生まれるものである以上、本来「このデザインは〇〇のもの」と定義されるものではありません。しかし、一部の個性的なデザインを採用しているブランドに関しては、そのデザイン特性上、消費者に特定のブランドを連想させることに成功しているのは事実です。では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。

デザインを「繰り返す」

ブランディングを行ううえで重要な取り組みの一つとして、同じ視覚的、聴覚的メッセージを、ありとあらゆるコンタクト・ポイントで繰り返し伝えることが挙げられます。これは決して同じビジュアル、同じコピーを全コンタクト・ポイントで使うという意味ではなく、あくまでもコアとなる要素(=メッセージ)を多角的に使うという意味です。

耳に残るメロディーを使用しているTVコマーシャルが良い例と言えるでしょう。それは、特に意識して覚えた訳でもないのに、視聴者が自然とそのメロディーを口ずさんでしまうような場合です。これは、実はデザインにも同じことが言えるのです。つまり、そのデザインが今までにない個性的なものであり、且つブランド名と一緒にさまざまなタッチポイントで繰り返し接触されることで、無意識のうちに頭に刷り込まれているのです。

では、他社と似たデザインを使用すると、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

他社と類似したデザインではダメ!?

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他社ブランドの商品とデザインが似ている際の影響について説明する場合、私は通常ブランドを「人」に置き換えて説明するようにしています。それは、ブランドと「人」は、非常に似ていると思っているからです。

あなたは、タイプの異なるファッションをした2人の人物に初めて会ったとします。その方々とは簡単に自己紹介をし、それ以上は特に話をしませんでした。あなたが、次どこかでこの2人の人物と偶然再会した場合、よりその人物を認識できる確率が高いのはどちらの人物でしょうか。

[タイプA]
今流行りの服装やメイク、髪型をしており、同じようなファッションをしている人々と同化しているタイプ。
[タイプB]
好感の持てる独自のファッション感を持ち合わせており、服装やメイク、髪型がその人物の個性を表現しているタイプ。

もちろん見た目と同じぐらい人の記憶に影響を与える要素として、相手のコミュニケーション能力や表情などがあるため一概には言えませんが、それらの要素が同程度だったとした場合、個人的にはタイプBの人物の方が記憶に残り、別の場所で再会しても認識できる可能性が高いと感じています。ここで考えたいのは、なぜタイプAはタイプBに比べ「偶然再会した際に認識しづらいのか」という点です。

それは、同じ制服を着た学生を識別するのが難しいのと同じように、周囲と似たファッションをしている場合、他者と同化してしまい、結果として違いを認識させることを困難にするからです。さらに流行は一般的に一過性のものであり時の流れと共に変わることを考慮すると、再会した際に外見が大きく変わってる可能性があり、その場合もまた認識することが難しくなるためです。このことから、視覚的な情報(今回の場合外見)は、個人を認知、識別するうえで重要な役割を果たしていることが分かります。

これは、商品(またはサービス)にも同じことが言えるのではないでしょうか。つまり、デザイン性を高く評価されているブランドのデザインを採用することは、結果として自社ブランドを他社のものと識別させることを困難にしてしまうのです。もちろん、それを意識的にやっているブランドもあると思います。しかしその場合、中長期的に構築されるべきブランドの視覚的な情報を蓄積することができず、デザインを活かしたブランド強化がおろそかになってしまうことを理解してください。繰り返しになりますが、ブランドを強化するうえで視覚的、聴覚的な情報は、重要な役割を果たしていることを忘れないでください。

では、そもそもどのようにブランドの個性を表現するデザインは開発できるのでしょうか。

コアとなるブランドの要素をデザインに反映する

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ブランディングを行う上で、そのブランドの価値や独自性を見出すことの重要性は、今までの記事の中でも繰り返しお伝えしてきました。しかし、どのようにこれらの価値や独自性を解釈し、コアとなるブランドの要素としてデザインへ反映すればよいのでしょうか。

ここで重要なのが、どのデザイナーを採用するかです。「結局デザイナー次第か」と思われる方もいらっしゃると思います。しかし、その通り「デザイナー次第」なのです。これまでに私も複数人のデザイナーと一緒にお仕事をする機会がありました。その経験から明らかになったことは、世の中には以下の2タイプのデザイナーが存在するということです。

[タイプ1]
クライアントから提供された概要を基に、デザインだけを提案してくるタイプ
[タイプ2]
クライアントから提供された概要を基に、ブランドに対する解釈を深め、そこからデザイン・コンセプトを導き出しデザインを提案するタイプ

ブランドを強化するという観点で考えると、理想的なのはタイプ2のデザイナーです。もちろんタイプ1のデザイナーを否定する訳ではありませんが、デザインだけの提案では、なぜそのデザインが自社のブランドにとって良いのかを判断をすることが、残念ながらできません。言い方を変えると、そのデザインは他社のブランドでも違和感なく使えてしまう可能性があるのです。

では、どのようにタイプ2のデザイナーかどうかを見極めれば良いでしょうか。正直これは非常に難しい問題です。ただ、デザイナーを選定する際は、必ず一度直接お会いすることをオススメします。そして、御社のブランドについてどのような印象(=抽象的な情報)を持っているか、その印象をデザインで表現するとした場合、どのようにデザインへ落とし込んでもらえるのかなどを質問することは、1つ判断基準として使えると思います。ここで「じっくり考えてみないと分からない」と回答される場合は、もしかしたらそのデザイナーはブランドの要素をデザインに反映することがあまり得意でない可能性があります。

まとめ

デザインは、そのブランドの個性を表現するための手段であるにも関わらず、今日の店頭では、他社が既に採用し消費者から受け入れられているデザインを転用するブランドが多く見受けられます。しかし実際にブランドを強化するためには、コアとなるブランドの要素を組み込んだデザインをありとあらゆるコンタクト・ポイントで繰り返し露出し、消費者の記憶に刷り込むことが大切です。

ただし、全てのデザイナーがブランドの要素をデザインに組み込むことを得意とする訳ではないため、デザイナーの選定は必ず直接会って行うことをオススメします。そして、実際にどのようにブランドが持つ抽象的な情報(=印象)を、具体的にデザインへと落とし込んでもらえるのかを質問してみてください。

このように簡易な判断基準を設け自社のブランディングに合ったデザイナーを選定することで、デザインをブランドの強化により活かせるでしょう。

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