eMarketerによると、モバイルマーケティング市場における2019年の広告総額は、過去最大の2,323億4,000万ドルに達すると予測されています。しかし、モバイル業界をむしばむアドフラウドの影響は今だに改善されず、モバイルマーケターにとって、今年の重要課題のひとつとなるのではないかと考えられます。

Adjustのアドフラウド不正防止フィルターは、1日に約100万件の不正アクティビティを検出、排除しています。この数値を考えると、日本のモバイル業界でもアドフラウドへの取り組みを強化しない限り、解決策を見つけ出すことがますます難しくなると考えられるでしょう。

ここでは、モバイルマーケターなら知っておきたいアドフラウドの定義と課題点について解説します。

アドフラウドとは?

モバイルアドフラウドとは、不正業者がモバイル広告のテクノロジーを不正に利用し、広告主の予算を搾取する行為を指します。

不正業者はさまざまなツールを利用して不正を行い、その手法も進化を続けています。巧妙な手口でかなりの高額な見返りを搾取しているケースもあり、ひとつの手段が阻止されたとしても、即座にまた新しい手段に取り組みます。

Adjustのモバイルベンチマークツールによると、現在最も一般的なアドフラウド手法は、クリックインジェクション(拒否対象となったアトリビューションの全体の57.57%)、クリックスパム(23.9%)、SDKスプーフィング(10.59%)が続きますが、その数値は頻繁に変わります。

Adjustのモバイルベンチマークツール
画像引用:Adjustのモバイルベンチマークツールより

適切な不正防止ツールを持たないマーケターは、不正業者が何も苦労もせずに広告予算を奪い取れるよう仕向けているようなものです。Adjustがサポートする広告主様の中には、広告予算の80%がアドフラウドによって失われていた事例も存在します。

また、これはあまり話題に上がりませんが、アドフラウドはデータを歪めてしまうため、これを元にマーケティング施策を行ってしまうとことも大きな問題の1つです。

アドフラウドがメトリックスに与える影響

アドフラウドは、広告予算を盗み取るだけではなく、マーケティングの判断にも支障をきたします。

ネットワークが大量の新規インストールを提供しているように見えても、それらのアトリビューションは不正によるものである可能があります。もしマーケターが偽物と本物のユーザーの区別をつけられなければ、数字が良く見えるネットワークに予算を投入してしまい、不正を受ける間口を広げることに繋がるのです。こうした悪循環によって、本物で価値の高いユーザーに充てるべき予算が奪い取られていくことになります。

また、フェイクユーザーがアプリ内行動や購入データに与える影響も考慮しなければなりません。残念なことに、フェイクインストールにそれほどこだわらないマーケターがいるのも事実です。レポート上ではユーザー獲得数が多く見えるため、良い事だとみなされる場合さえあります。しかし、当然のことながら継続率やライフタイムバリューといった他のKPIには反映しないため、将来的に問題が深刻化します。

業界関係者の中には、クリックスパムやクリックインジェクションといった手法でオーガニックインストールを横取りしようとするケースもあります。以下の表は、アドフラウド手段がどのようにKPIに影響するかという点を、収益やROIなどの違いに注目して示したものです。

アドフラウド手段がどのようにKPIに影響するかを示した画像
提供:Adjust

仮にアドフラウドを全く受けなかった場合、500円のCPIで10,000インストールを提供するネットワークから、広告主は200万円の収益を上げられます。それと同時に、20,000のオーガニックインストールを獲得することで、2,000万円の収益を上げることも可能です。これは非常に高いROIです。

ここで、ネットワークが500円のCPIで18,000のアプリのインストールを提供したとします。数値的には大きな増加で、施策効果があったかのように見えます。しかしそれと同時に、オーガニックインストールが12,000に低下したとします。

この動きから、このネットワーク、あるいはそのソースの1つがクリックスパムやクリックインジェクションを使ってオーガニックユーザーを横取りし、自分のものとしてレポートした可能性があるのではと考察できます。こうした行為への出費が広告予算を無駄にし、最終的にROIを大幅に低下させることに繋がるのです。