2019年9月5日に開催された「アドタイ・デイズ」。本記事ではアドタイ・デイズで講演された株式会社LDH JAPANのCDO(Chief Digital Officer)・長瀬次英氏の「トップCDOが考えるデジタルマーケティングの本質」から抜粋してレポートをお届けいたします。

プロフィール:長瀬次英氏

日本初のCDOであり、2018年1月に「Japan CDO of The Year 2017」を受賞。史上初2年連続アド・テック東京(2017&18)で#1スピーカーを受賞、Forbes・Japan(2017年12月号)にて「カリスマCxO」の一人として特集される。インスタグラム日本事業責任者、日本ロレアルのCDOを経て、現在は株式会社LDH JAPANにてCDOを担う。1976年京都生まれ、中央大学卒。

個と個の繋がりがビジネスの本質

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デジタルの世界でマーケティングを進めていくのに必要なのは「個と個が繋がること。ブランドとお客さま一人ひとりが繋がる。店頭販売しているものなら可能ですが、オンラインでは難しいです。人と仲良くなるためにはどうすればいいか。そこに現代のマーケティングの本質がある」とし、マーケティングはもちろん、ビジネスの本質を示してくれた。

デジタルが得意な部分はデジタル(ツール等)に任せ、人でなければできないコトに注力することこそがデジタル時代のマーケティングをさらに深めていけると話し「eコマースが進むに連れて、お客さまとの関係がおろそかになっています。どうやってブランドやサービスが個人と繋がるかというと『仲良くなるしかない』に尽きるんです。」と説明した。

そして改めて人間力の必要性を説き「人間力がないと本当に必要な個人データを引き出せない。ある程度の個人データならみんな持ってます。そこで差別化をしようと思ったら、自分の独自のデータを持つしかない。それは自分のデータをも出してお客さまのデータを取得するということ。つまりコミュニケーション、個と個の繋がりしかない。それを日本でやろうと思ったら、引き出しやすいのは現場です。デジタルマーケティングを豊かにしようと思ったら、例えば店頭販売で会話のうまい人を増やすことで進むかもしれません。」と語ってくれた。

1対1の関係性構築のためにどれだけ熱量を注げるか

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お客さまへのアプローチで外せないのは「サービスがどこで変わるか。それは現場です。お客さまとの関係をよくし、お客さまをもてなすことで、ここでしか買えなくさせる。現場の体験が大事です。」と改めて店頭で向き合うことの重要さを力説。

そしてお客さまとの関係構築のために大切なことは「個と個の付き合いができれば安泰で、長い付き合いができるようになるでしょう。もしかするとそういうことができる熱量の高い担当者には長く在籍してもらう必要があるかもしれません。」と話した。その理由は「なぜかというと担当者が変わるとお客さまの熱量が変わるからです。熱量が変わるとお客さまは去っていきます。」とした。

今後の課題として「企業はどうやって熱量の高い人材をキープし、熱量を伝播させていくかというところに力を入れなければなりません。今後はHRにも投資することがデジタルで生き延びるための一つの方法になるでしょう。」とマーケティング領域のみならずHR領域にも示唆を与えた。

最後は「現場でコミュニケーションをかわし、特別な情報をもらい、その情報を大切にして、さらに関係性を作っていく。おもてなしの先にマネタイズがある泥臭いことですが、そこでしかお客さまとの関係性は作れません。人間力が大切です。」と締めてくれた。

マーケティングをデジタル世界で実行するには個の理解と関係性構築が必要

当然のことながら、お客さまを知ることこそがブランドやサービスをスケールさせるために必要なことでしょう。デジタルの便利さゆえに個として人が見えづらくなった今だからこそ、原点回帰の大切さを改めて感じさせられました。