2020年2月5日〜7日に幕張メッセにて、企業の売上拡大に繋がる製品やサービスが一堂に集まる“マーケティングの総合展”「Japan マーケティング Week【春】」が開催されました。

近年インフルエンサーを起用し、自社プロダクトの認知向上や購買促進を目的としたプロモーションを行う企業が増えてきていますが、日本で数多くのインフルエンサーをマネジメント・サポートするUUUM株式会社は、その先陣を切っている企業だと言えるでしょう。

本講演では、UUUM株式会社(以下、UUUM)の取締役 バディ・プランニングユニット統括の市川義典氏が、UUUMの事業内容や事例と共にどのようにインフルエンサーマーケティングを行っているかについて語られました。

ここでは、<UUUMが提供するインフルエンサーコンテンツマーケティング>の講演内容をレポートします。

登壇者

市川 義典 氏
UUUM株式会社 取締役 バディ・プランニングユニット統括

映像音響会社、インターネットメディアレップを経て、2015年にUUUM入社。メディアプラン設計や企画開発などの経験を活かし、企業とYouTubeクリエイターのコラボレーションや、インフルエンサーへの制作支援、マーケティングにおける動画活用の啓蒙活動に従事。

<アジェンダ>
■事務所ではなく「コンテンツを創出するコンテンツカンパニー」
■『良いものは良い』。素直な体験を消費者・視聴者に届ける
コンテンツマーケティングの成功の秘訣は「正しいマッチング」
コンテンツ企画の正しいプランニング方法

事務所ではなく「コンテンツを創出するコンテンツカンパニー」

UUUM株式会社(以下、UUUM)では経営理念として「セカイにコドモゴコロを」、そして経営戦略として「もっとアソビナカマを」と掲げています。

市川氏:「『コドモゴコロ』というのは、子供心を持って新しいことを創造・創出しようという気持ちを大事にすること。そして『アソビナカマ』というのは、専属のクリエイターやインフルエンサーはもちろん、企業、視聴者、ファン、社員といった人たちも指します。『アソビナカマ』を増やすことでUUUMの市場が伸びていくという発想で、お仕事をさせていただいております」

市川氏が紹介されたUUUMの事業は大きく分けて次の6つ。

・マネジメント
・タイアップ
・イベント
・グッズ・ブランド
・ゲーム
・メディア

メディアに関してはYouTube上で運営しているメディアのことを指し、「ボンボンTV」では登録者数200万人突破、「UUUM GOLF」では38.8万人を突破しています。

市川氏:「やはりどうしても『あぁUUUMさんね。ユーチューバーの事務所でしょ』という見られ方をするのですが、我々としてはマネジメント事務所というだけではなく、コンテンツを創出するコンテンツカンパニーということを掲げて、お客さまと接触させていただいております。」

『良いものは良い』。素直な体験を消費者・視聴者に届ける

幅広く事業展開をするUUUMでは、どのようにインフルエンサーマーケティングを行っているのでしょうか。市川氏は、まず、従来のマーケティングファネルとUUUMのマーケティングファネルを比較しました。

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市川氏:「上部のパーチェスファネル(認知)をどのように広めていくか、ということにおいて、下部のインフルエンスファネル(共有)では、ソーシャルメディアを使ったり、インフルエンサーを活用したりというのが、今まで一般的でした。」

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市川氏:「Point『エクスペリエンス(体験)』と記載していますが、上部のファネルにおいて、体験を消費者・視聴者に届けていくことが、認知、興味・関心、理解・検討、購入に影響するんでなかろうかと考えています。」

「エクスペリエンス(体験)が非常に重要」だと語る市川氏。体験を発信したり、シェアし合ったりすることで、他の消費者・視聴者の「体験をしたい」という感情を湧き起こします。それがマーケティングの効果が高める大きな要因となるのではないでしょうか。

市川氏:「認知から、体験したくなる・体験してみる・決定するという流れができると思っています。重要なポイントは、『良いものは良い』という情報発信をすること。つまり嘘をつかないということです。人間として当たり前ですが、そんな情報発信をして、発信する側と受け取る側の関係性を構築・維持することが非常に重要なのです。」

コンテンツマーケティング成功の秘訣は「正しいマッチング」

「ターゲットリーチはどこにセットするのか」を決める

インフルエンサーの起用基準、チャネルの選び方など、UUUMでは具体的にどのような方法を実践しているのでしょうか。

市川氏:「店頭プロモーションとかその場所に行かないと見れない、情報として受け取れないような施策には『コンタクトポイントの問題』というのが、すごくあるんじゃないかなと思ってます」

コンタクトポイントの問題とは、簡単に言えば消費者がマスメディアを使わなくなってきたことにより、リーチできない人が出てきたということ。マスメディアで情報を受け取らなくなった消費者は、YouTubeやTwitterなどデジタルメディアプラットフォームを利用するようになります。

市川氏:「重要なのは、『ターゲットリーチ』。その商品・サービスを、どういった方達にリーチしたいのか、ファンエンゲージメントをどういう風に高めていかなきゃいけないのか、といったようなターゲットリーチのエンゲージメントがすごく重要です。その世界観やコンセプトを届ける時には、じゃあどこのプラットフォームか、どこのメディアなのか考えなくてはいけません。」

エンゲージメントを高めるインフルエンサーとは?

では広い層にリーチさせたいのなら、企業側としては認知度が高いYouTubeチャンネルを積極的に起用したいと考えがちですが、そんな単純な選定基準ではないようです。

市川氏:「当たり前ですが、スキンケア商品のプロモーションを男性クリエイターにさせるかというと、そんなこと皆さんもさせないと思います。きちんとクリエイターとコンテンツと企業のサービスを、マッチングさせないとコンテンツマーケティングは成功しません。

そもそもどのアカウント、どのインフルエンサーを(この企画で)起用するのか?というのがすごく重要です。そこに潜在顧客との相性がいいクリエイターを探さないことには、広くリーチだけ取れるクリエイターだけ選定してても意味がない。そういったことも考えながら、インフルエンサーの(キャスティングではなく)プランニングをしています」

企業の商品やサービスを消費者に届けるためには、親和性の高いジャンルのインフルエンサーを起用すること。それが、エンゲージメントを高められる方法です。

コンテンツ企画の正しいプランニング方法

インフルエンサーやチャネルを選んだら、次はどういったコンテンツを作ればいいのでしょうか?

マーケティングファネルから当てはめる

まず市川氏は、先ほどの「マーケティングファネルのどこに当てはまるのか?を考えるべき。」だと語りました。

<プランニングにおける考え方>
認知:
気づいてもらうコンテンツとは?
再生され続ける企画とは?

興味・関心・理解・検討:
体験したくなるネタとは?

市川氏:「『認知』が目的なら、日本のトップクリエイターを起用しながら、再生回数をより多く稼げるような企画を考えますし、『興味・関心、理解・検討』が目的なら、クリエイターが体験したものを情報発信する、それを観た視聴者の方が体験をしてみたくなる、そういった体験を起こせるようなコンテンツ作りというのが重要。」

さらにそこから、「企業が伝えたいこと」と「視聴者が観たくなるもの」をリンクさせ、適切なコンテンツにしていく必要があります。

<UUUMのプランニング>
認知:
観たいと思わせるネタ・サムネ

興味・関心:
やってみようと思えるもの
マネをしようと思えるもの
あまり知られていないことを伝える

理解・検討:
商品ディテールを伝える

市川氏:「例えば、料理の手順はテキストより、動画で『そういう風に卵を割るんだ、このタイミングで入れるんだ、これぐらいの分量なんだ』と見せた方が伝えやすいです。その商品のディテールを伝えるという意味での動画の活用は、すごくポイントは高いと考えています。」

企画のヒントを得る方法

さらに市川氏は、コンテンツの立案に役立つツールも紹介してくださいました。ここで取り上げられたのはTwitterの「モーメントカレンダー」と「Googleトレンド検索」です。
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市川氏:Twitterのモーメントカレンダーでは、『日本ではどういうトレンドハッシュタグが多くなりそうか?』というのをカレンダー化しています。そのハッシュタグをつけてツイートすると、RTされやすかったり『いいね!』が付きやすいとTwitterでは発信されていますが、こういうものも企画にうまく絡ませることによって、いつもは10万再生ほどのクリエイターが、12万〜15万再生まで伸びたり、という結果に繋げることが可能になると思っています。」

市川氏:Google トレンド検索は、そのタイミングでどういうトレンドが検索されやすいのかということが調べられるツールです。例えば12月から2月で、お年玉、ケーキ、雪、福袋、バレンタインを比較して調べてみたところ、この福袋が1月に上昇し、2月にはバレンタインが上がります。こうやってきちんと調べると、『あぁなるほど』と思います。」

Google トレンドを見ると、「福袋」は三が日で非常に多くの人が検索していることがわかり、2月の「バレンタイン」は2月14日を過ぎると急激に下がっています。

このことから、UUUMではクリエイターに福袋動画をやってもらう時には1月1日に。逆にバレンタイン関連は2月14日では遅過ぎるため、その1〜2週間前に行うように依頼するそうです。

こうしたツールも活用しながら、最適なタイミングでコンテンツを消費者・視聴者に届けることが結果に繋がっています。

自らコンテンツを消費する姿勢が大事

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最後に市川氏は、消費者としてだけではなく、企業側として「コンテンツを消費しましょう」ということを提案されました。

市川氏:「現在、さまざまなクリエイターが存在します。企業の皆さま側でも、そういったクリエイター、インフルエンサーのコンテンツをより消費していただきたいなと思っています。実際に観ていただかないと、それぞれの良さなどなかなかわからないのではないでしょうか。
僕もTikTokなど毎日1時間ぐらい観ていますが、コンテンツを消費することによって、そのクリエイターがどういう情報発信をしてくのかということが、見て取れると思っています。」

最適な人・場所・タイミングを見極めることでエンゲージメントを高める

UUUMのインフルエンサーマーケティングでは、プロダクトと親和性が高くエンゲージメントを取りやすいインフルエンサーを起用し、さらに適切なプラットフォーム、適切なタイミングで、適切なコンテンツを提供していることが今回の講演でわかりました。

さらに市川氏は、講演中「当たり前ですが」と何度もおっしゃっていました。「当たり前のこと」を誠実に守りながらやってきたからこそ、しっかりと成果を出し、日本最大級のコンテンツカンパニーに成長していったのではないでしょうか。

「Japan マーケティング Week【春】2020」のイベントレポートをみる

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