日本ラグビー界の今後の課題とは?

ferret:ラグビーワールドカップ2019の終了後は、さらなるファン獲得や競技人口を増やして行くこと、マーケティング部の収益を増やすことが課題となるとご説明いただきましたが、それ以外での課題は何ですか?

竹内氏:課題てんこ盛りですが(笑)、先ず巷の報道にありますトップリーグ改革は、私たちリーグ(協会)側だけでなく、チーム(企業)側にとって、なぜプロリーグなのかの大義を明確にすることと、結果として代表強化へのパスウェイに繋がる必要があります。単なるプロ興行の持込みだと、長続きはしません。

あといくつかある課題のひとつは、大学ラグビーです。将来的な集客においては、トップリーグ以上に課題を実感します。理由は、今の大学生は愛校心が薄く、昔みたいに母校を応援する文化がない。この学生気質を変えない限り、観客者数は伸びません。

例えば、昨年も伝統の早慶戦に約2万人が入りました。その1ヵ月後の全国大学ラグビーフットボール選手権の準々決勝にて、早慶の再戦になったんです。勝てば準決勝へ行ける重要な試合でしたが、会場は同じ秩父宮ラグビー場なのに1万2千人しか入らなかった。天候の問題はありましたがこの数字が何を意味するかというと、いわゆる伝統の早慶戦や早明戦、加えて1月2日の全国大学ラグビーフットボール選手権大会の準決勝は、日本人特有の祭事なんです。この時期にこの試合があるから、あらかじめ予定を空けて応援に行こう、と。
しかしながら大学選手権のようなトーナメント制だと、予想はしても違う大学と当たる場合もあるのでスケジュールを立て辛い。本質的なラグビー観戦における集客に結びついていないことになります。よく言われる大学ラグビーの試合にはお客さまが入っている、というのはまったくの幻想で、入っているのは本当に一握りのカードだけ。これは関東も関西も同じ傾向です。

大学ラグビーが隆盛を誇った時代(1980~1990年代初め)と比べると、各大学の個性がなくなり、どこも同じようなチームカラーに映ってしまっていることも、盛り上がらない要因かもしれませんが、先ずは学生が母校を応援する、どういう組み合わせになっても観戦する、という価値を再度創造し、大学ラグビーをリブランディングしていかねばなりません。

ラグビーワールドカップ2019を終えてから目指すもの

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ferret:ラグビーワールドカップ2019を終えてから日本ラグビーフットボール協会が目指すものは何ですか?

竹内氏:7月以降、協会の体制が変更 し、会見にて岩渕専務理事の発言にあった「世界で一番のラグビーユニオンになること」。その為にも、今回のワールドカップを機に、ラグビー文化やレガシーを定着させ、ワールドカップ開催という大義のもとで培われてきたものを継続していくことだと考えます。そしてまだまだ不十分であるファン視点、メディア視点、スポンサー視点での顧客満足度を高めていく為にも、関係者すべてがマインドセットを変えていかねばなりません。それが結果として、日本代表強化や競技人口の増加、そしていろんなステークホルダーを巻き込んでいくことに繋がっていくと思ってます。

最後になりますが、ラグビーが世の中にもたらす影響として、日本代表チームのように多国籍出身者から成り立ち、文字通り″ONE TEAM″として同じ目標を目指す組織スタイルは、これからダイバーシティを受け入れていく、全ての日本社会が学ぶべきヒントがあります。そのようなラグビーの本質的価値を正確に伝え、共有していくことも、ラグビーワールドカップ2019を日本に招致した、我々の使命であると考えています。