海外のセールス業界では当たり前になってきたインサイドセールスが、日本でも徐々に市場規模を伸ばしています。インサイドセールスとは、主にマーケティングにより獲得した潜在顧客を見込み客へ育成させ、フィールドセールスへ橋渡しをして案件受注を目指すといった、企業の売り上げを伸ばすための大きな役割として注目されている営業の一つです。一方で、自社にてインサイドセールスを立ち上げたい、有効化させたいと思いつつも、ノウハウが確立されていなかったり、営業のフェーズ管理ができていないなど、模索段階の企業も少なくないのではないでしょうか。

2019年7月18日、インサイドセールスに特化したイベント「Inside Sales Meetup 2019 Summer」が開催されました。
本イベントは、「インサイドセールスの本場に学べ!外資企業のインサイドセールス手法と、日本ローカライズされたポイントは?」をテーマとし、日本でも活躍する外資企業が登壇するイベントです。

登壇企業の1つであるセールスフォース・ドットコムは、今や世界で15万社に利用されるSaaSを提供する企業に成長していますが、一時停滞期に陥り、インサイドセールスのあり方やノウハウなどを確立させることで、再度成長を遂げました。今回は、その再成長の鍵となった「The Model(ザ モデル)」に注目し、本イベントで話された具体的な施策などをも踏まえてレポートします。

各部門との連携を高める「The Model」

「The Model(ザ モデル)」とは、Salesforceが作り上げたフレームワークであり、営業プロセスであるマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスを分業化し、各部門でのKPI指標を顕在化させ、組織として業務の生産性を高めるフレームワークです。
現在、The Modelはセールスフォース・ドットコムだけでなく、様々な企業で活用されています。

The Modelを活用することで、各部門がプロセスの一部分のみを担うため、分業化による効率化が可能です。加えて各担当者は、その担当部門に特化することで、より専門性を高めることができ、全体として生産性の向上につながります。そのため、人材教育においても注目されるなど、企業全体としてThe Modelは効果的とされています。
また、各部門のKPI数値も企業全体に公開させることで、どこに問題があるのか、どこに改善点があるのかに対して会社全体で解決へ向かうことができるメリットがあります。

課題は日本文化へのローカライズ

セールスフォース・ドットコムのセッションでは、セールスデベロップメント本部 コマーシャル事業部/スタートアップ戦略部 事業部長の鈴木淳一氏が代表して登壇しました。

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セールスフォース・ドットコムが日本法人を設立したのは米国での創業の翌年である2000年。以来、事業の成長を続けていたもの、創業当時から順風満帆に現在まで進んでいた訳ではありませんでした。
主な原因として、インサイドセールスにおける「海外のフレームワークのオリジナルをそのまま転用したこと」であると鈴木氏は言及をしました。

量だけを求めてしまい、仕事の質は低下、離職率は上昇

当時のセールスフォース・ドットコムは、インサイドセールスのKPIに、「アポイント件数」のみを設定していたものの、思うように売り上げが伸びず停滞していました。

KPIは本社のインサイドセールス部門が設定した数値をそのまま転用しており、海外では通用したKPIが日本では全く効果を持たず、我々はテレアポ部隊化してしまっていました。結果的に、他部門からはアポを取っているだけと低評価を受け、インサイドセールスのプレイヤーの仕事の質が下がると共に離職率も上がってしまいました」(鈴木氏)

本社での成功の要因として、そもそも本社では「セールスフォース・ドットコム」の圧倒的な知名度や、インサイドセールス自体の評価は高く、アポイント件数を指標にしてテレアポ部隊になったとしても、価値があるものとして十分組織化されていました。
そのため、日本でインサイドセールスを有効化させるためにはKPIを再設定させる。つまり、日本の文化にあったローカライズが必要でした。

営業からマネージャーを登用し、マインドチェンジを図る

まず日本では、営業のプレイヤーをインサイドセールスのマネージャーへ登用し、インサイドセールスのプレイヤーのマインドチェンジの実施と、適切な人材配置の意識化をしました。

「前提として、アポイントをとるだけでなく、お客様のビジネスの成功に集中することをマインドとして持ってもらいます。加えて、自分自身が経験したことを元にインサイドセールスを経験した外勤営業は確実に売れ、インサイドセールスは営業力を鍛える地位の高い仕事だと意識してもらいます。また、ただアポイントを取れば良いと、質の低いアポ取り電話をしてしまっていたインサイドセールスに対して、外勤営業で培ったノウハウを活用し、アポイントの質を高めようとしました。こちら側の一方的なアポイントではなく、双方がアポイントを取りたいと思っていただける様に、想定課題、事前準備、ロールプレイングをインサイドセールスのプレイヤーの横でサイドバイサイドに実施し、ノウハウを醸成しています。」(鈴木氏)

また、各企業でインサイドセールスを立ち上げる際に、御社で外勤営業を経験した人材をマネージャーに登用することをおすすめすると鈴木氏が言及するように、インサイドセールスの立ち上げにおいては、営業経験を持った人材を活用し、ノウハウをいかに固められるかが重要です。

営業成果に直結したKPIで売り上げにコミット

セールスフォース・ドットコムは、KPIの指標がアポイント件数のみであった状態から、指標の数を増やす施策を行います。以下が加えた指標です。

有効会話数:お客様と会話をした数
有効商談数:自分が決めたアポイントや、外勤営業が訪問し有効と認めた数
受注金額:自分のアポイントが実際に受注された際の金額

当時は、アポイント件数に加えた上記3つを指標で管理し、ただのテレアポ部隊から脱却する仕組みにしました。このように、ただ電話をするだけの質を求めない営業スタイルではなく、受注に向けた意味のある目標を指標に設定する必要があります。

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その後セールスフォース・ドットコムでは、アポイント件数はただ数をこなすだけで生産性が無いとし、指標から外し、KPI指標を「有効商談数」「新規受注数」の2つに減らし、改善を図りました。「有効商談数」は量の質のKPI、「新規受注数」は質のKPIであり、各プレイヤーの性質によって成果を残すKPIが分かれるため、各々に合うKPIへコミットができる仕組みです。質と量の両軸でKPIを設定する必要があると鈴木氏は言います。

最終的に、商談確定数・新規受注数を最終KPIに設定し、質を求める形にすることで、営業成果に完全直結する仕組みをセールスフォース・ドットコムは作り上げました。結果、売り上げは徐々に右肩上がりで伸び、停滞期からの脱却を達成しました。

このように仕組みが出来上がった後、セールスフォース・ドットコムは他部門との連携に力を入れはじめ、そこで「The Model」を活用しました。

会社全体にKPIを共有、会社全体で課題解決

「The Model」は、セールスフォース・ドットコム創業以来から存在していたモデルであったものの、実は4〜5年前までは効果的に回せていなかったと話す鈴木氏。

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「各部門の数字を全体で共有できておらず、どこに問題があるか?を顕在化させられず、次の打ち手が難しくなっていたという課題がありました。そこでThe Modelに従い、1年間は各部門の評価指標を固定し、途中で数値を変更できない様に仕組み化をします。全社員が同じ指標を追い、リアルタイムで問題の認識とその改善策を考えられるような体制にしました。結果、The Modelの強みである、分業による専門性と、数字をリレー形式でつなぎ、部門間の連携の最大化を実現できたのが大きな変化です。」

セールスフォース・ドットコムでは、ダッシュボードも企業全体で公開しており、社員ならばいつでもどこでも閲覧できるようにしています。イベントでは実際にセールスフォース・ドットコムのダッシュボードのデモが公開され、リード数・アポイント数・アポイント率・商談化率・契約者数などを指標として設定していました。
The Modelにより分業化を進めることと同時に、会社全体で課題解決に向かう形を築いています。

インサイドセールスの効果を最大化させるThe Model

インサイドセールスは日本において発展途上です。ノウハウが蓄積されてない故に多くの企業がインサイドセールスを立ち上げるものの、効果を最大化させられておらず、インサイドセールス全体や、各プレイヤーの評価がされにくい現状があります。

しかし、セールスフォース・ドットコムは、インサイドセールスにおいて海外の営業フレームワークを日本独自の文化に合わせてローカライズ、加えてThe Modelを自社に浸透させ、マーケティングと外勤営業の間でそれぞれの部門の価値を引き出し、数字の顕在化で生産性をあげる立場として確立させることを実現しました。このようにインサイドセールス最大化させたThe Modelは、現在、規模感、業界問わず様々な企業にて活用されるフレームワークとなっています。

インサイドセールスは、価値を見出しにくい部門だからこそ、どのように効果を顕在化させるかが重要なのではないでしょうか。