2020年2月27日にSATORI株式会社が主催した「標 -しるべ-」がオンラインにて開催されました。本講演では、マーケティング担当者の最初のバイブルとも言える『マンガでわかるWebマーケティング~Webマーケッター瞳の挑戦!~』著者の村上佳代氏が考える、いま必要な“マーケティングスキル”について、SATORI株式会社代表取締役の植山浩介氏とともに語られました。ここでは、<超入門!Webマーケッター瞳が語るマーケティングとは>のセッション内容をレポートします。

登壇者

株式会社シナプス フェローマーケティングコンサルタント 村上 佳代 氏
1996年デジタルコンテンツ制作会社起業。2001年以降ネットイヤーグループで、数多くの大手企業の200を超えるプロジェクトを約7年間担当、顧客企業の目標達成に大きく貢献。その後、事業会社でコンサル知見・経験を活かすことを決意。CCC、楽天、化粧品メーカーのマーケティング要職にて戦略立案/予算管理/施策の実行に携わる。2016年再びコンサル側へ戻り現職。著書の「マンガでわかるWebマーケティング~Webマーケッター瞳の挑戦!~」(現在改訂版)は、発行以来のロングセラー、マーケ担当者最初のバイブルに。(経営学修士MBA)

SATORI株式会社 代表取締役 植山 浩介 氏
東京大学情報理工学系研究科修士課程修了後、トライアックス株式会社設立。デジタルマーケティング業界にて23年。エンジニアリング・営業・マーケティング・会社経営に従事。2014年にトライアックスの社内ベンチャーとしてSATORIをスタートし、2015年9月新会社SATORIを設立。SATORIを通して、「現場マーケターの成果」にこだわった事業を行っている。

<アジェンダ>
マーケティングの過去/現在/未来
 ー20年前と何が変わったか?
 ー20年前と現在の違いは?
■どうやって自分を作ってきた?
■これから注目していること
■村上氏にとってマーケティングとは?

マーケティングの過去/現在/未来

20年前と何が変わったか?

●20年前ってどんな時代だった?

**[primary]村上氏:[/primary]**20年前である2000年頃(1990年代終わり〜2000年前後)は、インターネットを活用した商業化が進み、大企業が当時最新のインターネットを使用し始めた時代。1999年には、NTTドコモ社がモバイルインターネットの先駆けとなった「iモード」のサービス提供を開始し、単に話すためだけの携帯電話だったものが、文字が送れたり、番組が観られたり、コンテンツ購入が可能になり、当時は画期的でした。

インターネットの接続環境も、現在では常時接続が当たり前ですが、当時は、ダイヤルアップ接続から中高速のデータ伝送を可能にするADSLが普及し始めていました。
ブロードバンド元年と呼ばれる2001年には、ヤフー社が街中で無料でルーターを配布する時代でした。最新のものが溢れかえっていた時代と言ってもいいでしょう。

●20年前と現在の違いは?

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**[primary]村上氏:[/primary]**当時の「最新」が、現在では「当たり前」。2020年現在も、最新のもので溢れかえっていますが、同様に20年後、下手すれば5年後には陳腐化(コモディティ化)していることを前提にしていく必要があります。

**[primary]植山氏:[/primary]**今回はマーケティングの歴史を振り返るために20年前の話をしましたが、普段20年も前の話をすることはありません。つまり、当時の知識は全く使えない、昔話だということです。例えば、最近では5G(第5世代移動通信システム)が注目を集めていますが、今後回線が遅いなどの機械の制約がどんどんなくなっていくでしょう。今日ここでマーケティングやデジタルの話をしていても5年後、10年後に同じ話はできないのです。

**[primary]村上氏:[/primary]**テクノロジーの進化が私達の制約を取り払ってくれているので、仕事を奪われたり取り残されたりしないために、「では、人間は何をしていくべきか?」を突き詰めていかないといけない状況に今後ますます進んでいくでしょう。

**[primary]植山氏:[/primary]**マーケティングにおいて、よく「このメッセージを送るとCV(コンバージョン)が上がる」「この画像のクリック率が高い」など、過去事例を真似る場面がありますが、真似して結果が出る時代はもう後が無いと考えています。これからの時代は、機械が全て最適化してくれるので、今日我々が話す内容も、テクニック的にはすぐに使えなくなるでしょう。今後は、「いかにオリジナルのコンテンツが作れるか、人間らしいものが作れるか?」が勝負だと思います。

どうやって自分を作ってきた?

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**[primary]植山氏:[/primary]**村上さんは変わり続けてきた時代のなかで、どのように「自分」を作ってきましたか?

村上氏:「インプットとアウトプットをどれだけ回していけるか」を意識しています。当たり前ですが、いいインプットがないといいアウトプットはできず、いつまでも同じことを言っているだけになってしまいます。

**[primary]植山氏:[/primary]**先ほどの「知識が陳腐化していく」の話に繋がっていますね。勉強は常にし続けないといけない。そして、アウトプットもし続けなくてはいけない。知識はあまり蓄積できるものがないってことなのでしょうか?

**[primary]村上氏:[/primary]**知識は蓄積したとしても、アセット(資産)にならずに不良債権化してしまうと思っています。昔の知識だけでは通用しないため、新しい知識をどんどん仕入れて、それをベースにアウトプットしていくことが必要です。

また、「知識と知識を組み合わせて、それをどう使うか」を考えていくことがより重要です。単なる知識や記憶は陳腐化していくと思います。

これから注目していること

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**[primary]植山氏:[/primary]**村上さんが、注目しているものはありますか?

**[primary]村上氏:[/primary]**最近では「乗れるデバイス」に注目しています。先に述べた通り、20年前の最新が現在では当たり前になっていますが、正直なところここまで進化が早いとは思いませんでした。今後もますます加速していくと思われるので、「これから何が当たり前になっていくのか?」を見極めていきたいです。「注目」よりも「注力」していきたいですね。

**[primary]植山氏:[/primary]**例えば、本や車などの形のあるものから、形のないものにお金が生まれる時代になりました。現在は、ゲーム、SNSなどほとんど実態のないものにお金と人が集まっており、今や時価総額TOP10にはICT産業の企業が名を連ねています。

物理的な制約がなくなったこれからの時代は、機能と価格以外の「人が集まる世界観やブランドをどう作るか」という考え方がこれまで以上に必要です。例えば、「このツールを使ってこうなりたい」と言うゴール地点をみて購入したり、BtoBにおいてもその考え方が必要になってきていると思います。物体のないものにいかに価値を持たせるか。「世界観、ブランド」が注目のキーワードです。

**[primary]村上氏:[/primary]**これまでの話とは反対になりますが、PCを作る、というハードウェアに目をつけたGoogleのこれまでとは逆の動きは新鮮ですし面白く、動向に注目しています。GAFAも引き続き目が離せないです。

村上氏にとってマーケティングとは?

**[primary]村上氏:[/primary]**マーケティングとは、選ばれること、そして選ばれ続けること、だと思います。まずは、「選ばれる(=新規獲得)」とは、1回目の利用を指していて、商品を買ってもらい、認知して実際に使ってもらうことです。「選ばれる」ためには、きっかけ作りや集客アプローチ、刈り取りや受け皿の役目を果たすLP、ATL(Above the line)やBTL(Below the line)などのプロモーションや、リアル+オンライン、OMO(Online Merges with Offline)施策などを考える必要があります。

また、「選ばれ続ける(=リピート購入など)」には、CRM(Customer Relationship Management)やLTV(Life Time Value)を最大化することや、カスタマーサポート(サクセス)の重要性、退会阻止し契約継続に繋げる、ポイントやロイヤリティなどのサステナブルな仕組みづくりが必要です。

このように「選ばれる+選ばれ続けること」を実現することが、マーケティングだと思っています。

必要な“マーケティングスキル”とは、インプットとアウトプットを繰り返せること

マーケティングに長く携わり経験を積んできたお二人であっても、「知識は蓄積できず不良債権化する」という意識のもと、常に新しい知識を取り入れ、インプットとアウトプットを繰り返している、と語られたのが印象的でした。

「選ばれ、そして選ばれ続ける」ために、まずは時代の大きな変化に気付くための上記の意識作りが肝心であり、それこそが必要な“マーケティングスキル”なのではないでしょうか。