ストリーミングの特性を踏まえた戦略

ストリーミングサービスが普及し、ここ数年で多数のアーティストが利用するようになりました。ミソは*週の売り上げしかチャートに影響しないCDやダウンロードと違って、ストリーミングは「再生回数」が評価基準になること。*アーティストやアルバムよりもプレイリストから聴くユーザーが多いため、再生回数を増やすにはランキングやプレイリストに追加され、露出を増やす必要があります。

King Gnuはストリーミングの特性をよく理解し、プレイリストに入りやすい曲を作りました。まず、多様な音楽性によりバンド・歌モノ・クラブ・オシャレなど複数のジャンルのプレイリストに入るようにして、幅広いリスナーを獲得しました。ストリーミングでは早くリスナーの心を掴まないとすぐに飛ばされてしまうため、イントロが短い構成もプラスに働いています。

そして、配信のタイミングとスピードも戦略的です。2017年4月にKing Gnuへ改名してすぐに「Tokyo Rendez-Vous」のPVを公開し、その後も数か月ごとにPVやアルバムを発表。次々に新しい話題を提供して注目を集め、2017年末には認知度を高めていました。メジャーデビューしてからも、基本的にはリリースを3ヶ月以内に繰り返していて、ストリーミング時代の回転の速さに適応しています。

ポイントは、若手映像集団「PERIMETRON」が手掛けるPVのクオリティがとても高いこと。いくらスピードが速くても、質が悪ければ評価されません。スピードを保ちながら、楽曲・PVともクオリティを保っている点がKing Gnuの強みです。

マスメディアへ露出して知名度を獲得

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ロックバンドが避けがちなマスメディアの露出を積極的に行ったことも追い風になりました。ミュージックステーションなどの音楽番組に出る、タイアップの話が来たら断らずに寄せた曲を作る、ラジオやCMに出る、プロモーションを行う、そして紅白にも出場……売れる取り組みを多数行ったことで、知名度はうなぎのぼりに。合理的かつ戦略的な行動により、音楽通以外の人々も知るバンドになりました。

*ラジオやテレビ番組のタイアップでは毎週音楽が流されますから、定期的にたくさんの視聴者へ自分たちの音楽を届けられます。*ミュージックステーションではボーカル・井口さんが変顔を見せたり階段を駆け下りたりと独特のパフォーマンスを見せ、ツイッターでトレンドワードに入るほどの反響がありました。こうした大舞台での振り切った露出が、さらなる話題創出に貢献したのです。

SNSの活用

King GnuはSNSもうまく活用しています。ツイッターはボーカル・井口さんが下ネタやダジャレを発信したり、ジャスティン・ビーバーからローマ法王に至るまで面識のない著名人のアカウントにダジャレやミュージックビデオなどのリプライを送ったりと、強烈なキャラクターにより公式アカウント以上のフォロワーを持っており、グループ全体で高い情報発信力を有しています。
※井口さんのツイッターアカウントは、2020年4月26日までに削除されています。

音楽関係者からの評価も高く、SNSで紹介されることも珍しくありません。こうした関係者によるシェアがさらなるファン獲得につながっていると言えるでしょう。

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