1斤1,000円程度の、相場より高い価格帯の「高級食パン」の専門店が相次いでオープンしています。

「高級食パン」は手を出しやすい食パンに高級感をプラスしたコンセプトがヒットし、認知度を上げている商品の一つ。いまや、SNSやテレビでも話題になるほどの盛り上がりを見せています。

このヒットの背景には緻密なマーケティングがあります。

今回は、この高級食パンがヒットした背景やその秘密をマーケティングの4Pをもとに解説していきます。

背景

そもそも高級パンがヒットした背景を見てみましょう。

日本人の主食として主流な「パン」と「米」ですが、総務省の家計調査によると、1世帯あたりの支出額は昭和60年においては米が75,302円、パンは23,499円と大きな差がありました。

しかし、近年では米が23,880円、パンは30,084円とパンが米を上回っている結果に。

このように、パンが米よりと同等・もしくはそれ以上に日本の食卓に根付いたことが前提としてあります。

参考:
統計局ホームページ/家計調査(家計収支編) 調査結果

ブームの始まり

高級食パンのブームは2013年頃から始まっており、セブンイレブンの高級食パンがブームの草分け的存在となりました。1斤250円とやや高額でありながら、発売4か月で1500万個を売り上げています。

当時は食パン一斤100円程度だったことからも、生活に馴染んだコンビニから高級食パンの認知が増したと言えるでしょう。

コンビニの他にも、大阪の「乃が美(のがみ)」や銀座「セントル ザ・ベーカリー」も専門店としてブームを後押し。特に「乃が美(のがみ)」は、2017年と2018年にはYahoo!検索大賞の食品部門賞を受賞しています。

このように、通常の食パンよりやや高いことから消費者の「プチ贅沢志向」を満たし、食パンをギフトに使うといった新たな市場を生み出してています。

また、どこでも買えるわけではないことから、高級食パンは希少価値があるものになっています。まさに食パンを日常品から嗜好品へと変化させたもの。それが高級食パンなのです。

参考:
【関西の議論】コメよりパンを多く買う日本の家庭…4年連続で続く国統計のワケは

衰えない「高級食パン」ブーム、人気の理由は?

4Pで整理

ここからは、高級食パンをマーケティングの4Pに照らし合わせて分析していきます。
マーケティングの4Pは、企業のマーケティング担当者であれば馴染みの深いものかと思います。

  • Product
  • Price
  • Place
  • Promotion

これらに分類して各項目ごとに高級食パンをさらに深堀りしていきます。

Price

その価格も手が届きやすい範囲に設定させています。店舗によって細かくは違いがあるものの、値段はおおよそ1,000円前後(2斤分)。スーパーで売っている食パン1袋(1斤)は大体150円~200円程度なので確かにやや割高ではあります。

しかし、1,000円前後であれば「手が届かない値段!」というわけではなさそうです。食パンが好きな方なら、なおさらでしょう。

このように、高級食パンは高級感と値段の設定が絶妙にバランスが取れた商品と言えそうです。

Product

では、高級食パンなぜ他のパンよりも価格が高いのにも関わらず、多くの人がこのパンを求めるのでしょうか。その秘密は高級食パンの特徴にあります。

多くの高級食パンは、パンの「やわらかさ」と「甘さ」をウリにしています。もともと、食パンといえば好みはあるにせよ、そこまで大きな商品ごとの違いはありませんでした。どれを買っても「想像どおりのおいしさ」という均一化こそがパンを日本に定着させた要因でもあるでしょう。

この「食パン」というこれまであまり大きな特徴がなかった商品において、その差別点を明確にしたのが高級食パンです。

例えば「乃が美」ではこれまで食パンにおいてタブーとなっていた「腰折れ」と呼ばれるギリギリの柔らかさをウリにしています。

この差別化ポイントが、消費者の購買欲求を刺激しているとともに、1,000円という価格に対しての期待値を超す価値を提供しているといえるでしょう。

Place

高級食パン点は「銀座に志かわ」のように銀座や麻布十番など「ちょっと贅沢する」エリアへの出店が目立っています。やはり高級食パンを売るなら「ちょっと贅沢」な地域に需要に応えるといったところでしょう。

ただ、近年の高級食パンブームに乗って「乃が美」は2020年2月現在、関西を中心に46都道府県に全154店舗を展開中。これから先も出店予定があり、都市圏に留まらない全国の高級食パンファンのニーズに応えています。

Promotion

上記のように、高級食パンは全国でそのニーズがあります。

もともと、限定された地域や「ちょっと贅沢」など、地域への出店が多かった高級食パンが全国に広まりを見せた要因はそのプロモーションにあると考えられます。

というのも、高級食パンのプロモーションは食パンを手土産や希少なもの・気軽なおやつとして提案してきたからです。

高級食パンはただ「おいしい」だけではなく、付加価値を作り出すことに重きをおいています。たとえば、ちょっとシャレのきいた店名や思わず目を引くようなショッピングバッグなど。店名であれば「どんだけ自己中」や「パンのペリカン」・「俺のベーカリー&カフェ」のようなユニークなものもあります。ショッピングバッグであれば、シェフの肖像画のようなものや少女マンガのタッチで描かれた少女などがあります。

このように「印象付け」といった意味では非常に効果的なものばかりです。これらの付加価値によって、食パンをギフトとして贈る流れを作り出し口コミによって認知を高めることに成功しています。

また、話題になれば行列もできるようになります。人間の心理として行列を見ればその内容は気になるものです。吸い込まれるように行列に加わり、思わず購入してしまうといったこともあるでしょう。

さらに、多くの高級食パンの店舗は高級食パンのみを取り扱います。
これによって「高級食パンの〇〇はおいしい」といった、専門店ならではの認知を広めていくのもプロモーションのひとつと言えます。

ヒット商品の秘訣は楽しさや面白さ

このように、高級食パンは均一化されてきた食パンに独自の工夫を加え、パン業界でもひとつの立ち位置を築き上げています。

ただのブームではなく、意識されたマーケティングの4Pによって顧客への購入の動機づけや印象付けを行っているのです。紹介したように、そのプロモーションにはそれぞれのお店からの楽しさや面白さが溢れています。なかなかヒット商品が生まれにくいと悩んでいるマーケティング担当者の方へのヒントとなれば幸いです。