フリマアプリの使用が盛んになる昨今、二次流通市場が拡大し新品商品の消費を減少させている可能性があるという指摘があります。メルカリ総合研究所では、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師 山口 真一氏監修のもと、「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態に関する共同調査を実施しました。

そして、2020年2月13日、株式会社メルカリはこの調査の発表会を開催。発表会では、山口氏が調査概要の説明や結果について講演し、その後、山口氏がモデレーターを務め、株式会社メルカリ 執行役員 VP of Business Operations 野辺 一也氏と株式会社三陽商会 執行役員 経営統括本部副本部長 兼 デジタル戦略本部 副本部長 慎 正宗氏によるパネルディスカッション「一次流通企業から見たフリマアプリが生み出す消費活動」が開催されました。発表会の内容をレポートします。

二次流通市場は一次流通市場を凌駕する?

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▲山口 真一氏

冒頭、フリマアプリ市場が現在活発に伸びており、経済産業省の調査によると、2016年の市場規模は3,052億円だったものが2018年には推定市場規模6,392億円にまで拡大していることを山口氏は説明しました。

山口氏:フリマアプリシェアリングエコノミーなどいわゆるCtoC市場が活性化すると、新品市場は減速するのではないか? ひいてはGDPあるいは日本経済にマイナスの影響を与えるのではないか? と指摘する方は少なくない。本調査は、フリマアプリを利用すると新品を購入しなくなるのではないかという仮説を立てて検証を行いました。

参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

フリマアプリを利用することで新品商品の購入が積極的に。新品商品の消費喚起効果は年間484億円

フリマアプリでの取引件数が多い「ファッション」「スポーツ・レジャー」「理髪料・コスメ」「家電・スマホ」「エンタメグッズ」「おもちゃ・ホビー」の6カテゴリーについて、15〜69歳の男女20,000人を対象に調査を実施。

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出典:メルカリ、「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態調査を発表 | 株式会社メルカリ

その結果、フリマアプリでの購入経験者は3カテゴリーで新品購入金額が減少している一方、フリマアプリでの「出品」経験者は全カテゴリーで新品購入金額が増加しており、新品商品の消費喚起効果は年間約484億円に上ることが明らかになったことを発表。

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出典:メルカリ、「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態調査を発表 | 株式会社メルカリ

さらに、追加調査で消費者1,500名に直接アンケートをとると、「家電・スマホなど」を除く5つのカテゴリーにおいて、消費者自身もフリマアプリを利用したことによって、むしろ新品購入金額が増えたと感じている人の方が、減ったと感じている人よりも多かったことが判明しました。

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出典:メルカリ、「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態調査を発表 | 株式会社メルカリ

結論として、出品については売る前提の購入が新品購入のハードルを下げていると同時に、購入については検索で新しい商品であったり、お試しができたりすることで結果的に新品購入が増加。フリマアプリ市場は新品市場を代替するというより補完関係にあるということが明らかになりました。

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出典:メルカリ、「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態調査を発表 | 株式会社メルカリ

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出典:メルカリ、「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態調査を発表 | 株式会社メルカリ

消費者がもっといいものを買うきっかけになる。二次流通市場の活性化による新品市場への影響

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▲左:慎 正宗氏 右:野辺 一也氏

山口氏がモデレーターとなったパネルディスカッションで、慎氏と野辺氏は今回の調査についての感想を述べました。

慎氏:私は感覚的に、フリマアプリや二次流通市場が増えることは一次流通にとっても全然悪いことではないと思っています。今まで買っていたものが使い捨てられるのではなく、資産として価値になるということに変わり、お客様たちの買い方も変わるので、もっと良いものを買うようになるんじゃないかと思いました。

野辺氏:金額が出たのは初めてだったので、インパクトはあるんだなと改めて実感しました。フリマアプリの利用形態を見てみると、購入する際にメルカリでどれくらいの価格で売れるかを検索するという消費行動になっているので、その結果としてもう一個良いものを買ってもいいのかなとか、ハイスペックなものを買って最終的にはメルカリで売ればこれくらいの実数資質なのかなと考えながら購入をされていくので、より良いものを買われる方向性に効くのではないかと思っています。

慎氏:リセールバリューを考えながら購入されるというのは今までのアパレル業界にはなかった考え方でした。最近私も車を探していて、残価設定率の高いところにもうちょっと出してもいいかなという気分になります。今まで服に関しては、今買える中で一番良いものを買うという買い方をしていたと思うんですが、「これってもしかしたらこの後売れるようになるね」と考えると、もう少し良いものを買ってみようかなとなります。手が届かなかった人たちにも逆にフリマアプリを通じてブランドを手に入れるチャンスが広がります

一次流通市場と二次流通市場の今後

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最後に、一次流通市場と二次流通市場の今後について意見交換が行われ、慎氏と野辺氏が今後の展望について述べ、発表会は終了しました。

慎氏:賢い人ほど一次流通と二次流通をうまく使い分けたり、ミックスしたりというのが当たり前の行動になってくるでしょう。個人的にメルカリさんとやりたいと思うのは自動車市場のような残価設定保証モデルです。例えば8万円のものが3年後には2万円で買い取りますよということを、メルカリと一緒にできれば非常におもしろい商売ができるんじゃないかと思っています。

野辺氏:メルカリはメーカーのD2Cの環境を提供していくべきだと思っています。メルカリが商品のライフサイクルを見える化することで、結果的に一次流通のメーカーの商品力アップやお客様とのエンゲージメントをより強くさせる流れをつくりながら、リセールという行為の中ではメルカリが一番の選択肢に入ってきてくれることを望んでいます。