マーケティングには数々の手法が存在し、どのような施策を自社で活用すればよいのか分からずに迷ってしまう担当者の方も少なくないでしょう。

そこで、この記事では、汎用的かつ有力なマーケティング手法の一つである「パーセプションフロー・モデル」という設計図について紹介します。Coup Marketing Companyの代表として長年マーケティングを手がけてきた音部 大輔氏が考案したパーセプションフロー・モデルは自然に顧客が購買へ至るためのルートを実現する設計図として注目を集めています。

この記事を参考に、今後のマーケティング施策の設計図を描いてみましょう。

パーセプションフロー・モデルとは

パーセプションフロー・モデルとは、Coup Marketing Companyの代表として数々の企業や市場のマーケティングに携わってきたマーケターの音部大輔氏が考案した、顧客購買モデルの設計図を指します。

そもそもパーセプションとは「知覚」を指した言葉なので、日本語に直すと「知覚の流れをもとにしたマーケティングの設計図」です。もちろん対象となるのは顧客なので、顧客の知覚が自然に変化していく中で、購買へとつなげていく設計図を指した言葉と言えます。

ここで明らかにしておきたいのは、パーセプションフロー・モデルは汎用的な「設計図の書き方」であり、具体的な戦略ではないということです。あくまでマーケティング戦略の上に成り立つ思考のフレームワークとして捉え、自社の商品やサービスにフレームを当てはめた上で具体的な計画に落とし込んでいきましょう。

パーセプションフロー・モデルとはどのような設計図なのか

まずは、パーセプションという言葉をもう少し重く捉えて噛み砕いてみましょう。先述したとおり、パーセプションとは日本語で認識や知覚を指す言葉です。認識や知覚が変化することで、顧客の行動に変化を生じさせて、自社の購買行動につなげよう、というのがパーセプションフロー・モデルの原則的な考え方となります。

以下の図表は、パーセプションフロー・モデルを図式化したものです。

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出典:
パーセプションフロー・モデルとは | FICC BLOG | FICCのデジタルマーケティングブログ

顧客が購買に至るまでのプロセスを大きく5つのフェーズに分けており、ゴールである「行動」から「パーセプション」「知覚刺激」「KPI」「メディア・媒体」と外側へ向かって組み立てていきます。順を追って説明していきましょう。

  1. 目的となる「行動」を具体化します。
    2 .その行動を起こすために顧客に与えられるべき「パーセプション(認識)」を逆算します。
  2. 認識を生じさせるための「知覚刺激」を明らかにします。
  3. 知覚刺激を与えるために十分な「KPI」を設定します。
  4. KPIを満たすための施策として「メディア・媒体」を設置し、顧客へ働きかけます。

顧客側からみれば、知覚によって自然に認識が変化しているので、マーケティング施策によるものだとは気づきません。無意識のうちに自分から選んで商品を購入する、という行動を選択させるのが、パーセプションフロー・モデルの目的です。

カスタマージャーニーマップとの違い

同様の概念として、カスタマージャーニーマップが存在します。一見すると「顧客が購買へ至るまでの道筋をデザインする」という意味では両者の間に違いはないように思えますが、大きな違いが存在します。それは、パーセプションフロー・モデルが「知覚」に重点を置いている点です。

カスタマージャーニーの視点では顧客の「行動」のみを抽出して設計図に落とし込んでいるのに対して、パーセプションフロー・モデルでは、自社が行ったマーケティング施策を受けて顧客がどのような知覚刺激を受けて、どのように認識し、行動へ移るのか、という点を明確にデザインします。つまり、「どこまでも顧客目線に考えて知覚や認識まで描ききった場合のカスタマージャーニー」とも言えます。

パーセプションフロー・モデルの作成メリット

パーセプションフロー・モデルを作成することで、自社のサービスや商品がどのような経路で購入されやすいのか、という点が可視化できるメリットがあります。つまり最も購入されやすい経路に限定して広告を打ち出して広告宣伝費を削減するなどの施策が打ちやすくなる、ということです。

例えばWeb広告という知覚刺激を受けた顧客のほうが、テレビCMという知覚刺激を受けた顧客よりも高い購買率を誇っている、ということがわかれば、予算をWeb側に集中させて、より高い費用対効果を生み出せるようになるでしょう。

パーセプションフロー・モデルが生まれた背景には、多くの情報に触れられるようになった現代のIT化と、生き方の多様化による選択の高次元化が挙げられます。

これまでの購買モデルとしては、テレビや新聞といったマスメディアに広告という知覚刺激を掲載し、顧客の認識を画一的に捉えてカスタマージャーニーを描けば購買モデルが完成していました。しかし、今はマスメディアに広告を打つだけでは購買モデルが描ききれなくなっています。つまり、顧客が受け取る知覚刺激が急激に増加したことで、複数の購買モデルを描かなければならなくなったのです。従来のカスタマージャーニーでは対応しきれない、という状況下で誕生したのが、パーセプションフロー・モデルでした。

Webメディアや動画、画像など様々な形式で知覚刺激を与えられる上、顧客にリーチするための媒体も数え切れないほど多くなっています。これらに対応するために、顧客が「どこでどんな知覚刺激を受けたのか」を起点として購買モデルを描くことで、より定性的な調査が可能になり、マーケティング施策が打ちやすくなるのです。

作成方法

パーセプションフロー・モデルを作成するには、coupmarketing社が提供している以下のテンプレートをダウンロードすることから始めましょう。

パーセプションフロー・モデル│テンプレート

3Pにあるテンプレートを見てみると、先ほど紹介した図表と同じものが掲載されています。図の左側にある「行動」の欄から順番に埋めていき、顧客の行動、認知、知覚を逆算していきましょう。

例に沿って解説すると、ターゲットは競合他社の商品を使っている顧客となります。使い続ける理由もないが、乗り換える理由もない、という顧客に「認識の変化」を生じさせるために、必要な知覚刺激を逆算して、メディアや各種媒体を活用して顧客へ与えます。顧客の行動は少し変化して、次は代替品を意識するようになります。現状に対して課題を見つけ、あなたの企業のブランドを見つけることで、あなたのブランドへ期待を寄せるようになり――というように、適切な知覚刺激を与えることで顧客の認識を変化させ、行動を変容させていくためのモデルを描いていきましょう。

事例

パーセプションフロー・モデルを活用している例として、国内最大級の不動産紹介サイトを運営している株式会社LIFULLが取り組んでいるマーケティングを紹介します。

LIFULL株式会社では「住宅」だけでなく「人」を中心にしたデータ活用戦略を構築しており、ブランディング広告やレスポンス広告の施策を打ち出しています。また、見込み顧客を算出するために「住み替え予兆モデルによるターゲティング」にも取り組んでいるのです。

「こういう行動をした人は住み替えを考え始めている可能性が高い」という予測を、データドリブンで予測してターゲッティングし、こちらから効果的なアクションを起こすことで競合店に競り勝つための施策として捉えており、具体的にどのようなメッセージを知覚情報として与えればよいか、という点についてパーセプションフロー・モデルを活用している、と発表しています。

参考:
“世界一のライフデータベース&ソリューション・カンパニー”を目指して 〜LIFULLのデータ・ドリブン・マーケティング戦略〜

パーセプションフロー・モデルを活用してマーケティングをより効果的に

従来のカスタマージャーニーだけでは対応しきれなくなった現代において、パーセプションフロー・モデルはマーケティングの実務に役立つ非常に有効なフレームワークです。さっそく紹介したテンプレートを活用して、「顧客に与える知覚刺激」という観点から自社のマーケティング施策を見直してみましょう。