フィンテックVCとフィンテックスタートアップの関係について

フィンテックVCの投資判断基準は?

林氏:国内には多数のVC(ベンチャーキャピタル)があると思うのですが、その中でも金融に特化してやられているマネックスベンチャーズの高岡さんに、分野が多岐にわたっている金融業界の中でもどの分野に注目して、どのようなスタートアップに投資されているのかをお聞かせいただければと思います。

高岡氏:
マネックスベンチャーズは1年半前から活動していると申し上げたんですが、実はほそぼそと10年前からやっています。その時から遡ると投資先は8社あります。
まずライフネット生命はインキュベーションから投資していて、お陰様で無事上場しておられます。

2社目はユーザベースという、SPEEDAという、BtoBで会社情報を提供するツールや、NewsPicksというキュレーションアプリを提供している会社です。
あとはマネーフォワードさんやBtoBで生鮮食品のECを手がけている会社さんもですね。fintechに関係ないんじゃないかと言われそうなんですが、最近、ECと金融の境目がだんだんわからなくなってきているところもありまして、BtoBのECがどのように成長しているのか賭けてみたいなということで投資しています。
あとはクラウドクレジットさんや、アメリカのShift PaymentsというVISAカードを使ってビットコインで支払いができる会社さんだったり、MFSという住宅ローンのオンライン借り換えサービスを展開している会社と、Orbという、プライベートブロックチェーンのプラットフォームを提供している会社さんの8社に投資をしてます。

林氏:今お聞きしているとかなり幅広い領域に投資されてると思うのですが、投資判断するうえで何を重視されているか、どういった点が魅力的に見えるんでしょうか?

高岡氏:
リターン目的もあるんですが、マネックスグループが創業当時から掲げている「未来の金融を作る」に基いていて、投資先も、未来の金融を作ってくれる仲間ということを前提にしています。

投資する基準は3つです。
1つ目はファウンダーチームです。
例えばイノベーターがいて、CEOを支える優等生っぽいCOOがいて、人を巻き込む力があるひとがいて、とか。どんなチームになっているかを重視しています。

2つ目はヴィジョンですね。明確で共感できるヴィジョンを持っているか。

3つ目はアジャイル力です。ピボット力とでも言えますでしょうか。お客様によりそうことを第一にしていること。
お客様が求めているものを見極めてアジャイルに、成功するまでトライし続ける力があるかどうかですね。

国内VCと海外VCの違い

林氏:スタートアップ側としては、VCに対してどのような支援を期待されているのか、またどういうVCが好ましいのでしょうか?
特にfintechだと、海外では金融特化のVCとかかなりあると思うのですが、国内VCと海外VCの違いってどうでしょう?
直近、DCMさんらから大型資金調達をされているfreeeの佐々木さん、いかかでしょう?

佐々木氏:
僕らもシリコンバレーやシンガポール等のVC数社から50億以上の資金調達をしてますが、特化型ファンドで国内と海外のVCで一番違うなと感じるのは、アメリカのVCって投資の対象が明確に決まってるんですよね。
将来的にマーケットを作っていきそうなところには投資したいという、僕たちと話す前に彼らの戦略のなかで決まっているケースが凄く多いんですよね。
だから話をした時は既に事業はOKで、このチームはどうなんだとか、どういうヴィジョンを持っているんだというところをすごく聞かれます。
国内のVCさんの場合、「それって本当に日本で広まるんですか」とか「これから先、中小企業のおじいちゃんおばあちゃんに本当に喜ばれるんですが」というところから説明していかなきゃいけない。

最近はいろんなVCさんが増えてきて環境は変わってきているとは思いますが、一般的な傾向としては1つあるかなと思います。

もう1つは圧倒的に大きい投資を実現できるということですよね。
直近で35億調達したんですが、その際にいろんな投資家を見ました。
それでびっくりするのが「35億?小さいね。うちは50億以上しかやんないんだよ」というところがゴロゴロいるんですよね。
そういうところと「10億以上の資金調達ってなかなか見ないよね」というマーケット環境とはやはり全然違うなと。
資金調達のサイズの面でも、国内と海外では全然違うなと思いますね。

事業創造に協力してくれるエンジェルを見つけるのも1つの選択肢

林氏:直近、Fenoxさんから大型資金調達されているZUUの富田さんはいかがでしょうか?

冨田氏:
現在6億弱ぐらい調達してるんですが、今回初めてVCを入れました。
それまでは1億数千万調達してましたが、全てエンジェルの方々に出して頂いてます。

個人的にはエンジェルを巻き込むことをすすめる派です。
佐々木さんみたいに35億集めるのはエンジェルだけじゃ無理かなと思うんですが、数億前半なら十分可能だと思いますね。

やはり、同じ船に乗ってもらえるという感覚が強いのはエンジェルの方で、しかもそういうレベルの方々が本気で関わってくれるっていうのはやはりエンジェルだからかなと。
私も前職で投資家の方々を多数見てきましたが、自分の生金を投資されている方たちは本気度が違うんですよね。
本気で関わって、この事業が成功したら、リターンはそのまま自分に戻ってくるわけですから凄く真剣になって頂けます。
そういうレベルの人たちが真剣に関わってくれるのは嬉しいですよね。
例えば夏野さん(夏野 剛氏)のような方が、月に何回もミーティングして頂けますし、一緒にプロダクト考えて頂けますし、デザインのすごく細かいところまで関わってくれたりいろんな人を紹介してくれて、すごくありがたいんですよね。
外からのアドバイザーを巻き込めるのは大きいです。

そのなかで今回なぜ海外VCと組んだかというと、fintechって、世界で本気で勝負できる分野なのかなと思っているからです。
ZUUは、アメリカでも東南アジアでも本気で勝負をしようとしていて、その時に、Fenoxがアメリカにも東南アジアにも強かったので凄くシナジーが強いと思いました。
海外VCがどうかというより事業シナジーがあるなって思ったのが一番大きかったです。もちろん他にもFenoxの良い点はたくさんありますが、そういったシナジーは大きな点です。

国内VCならではのネットワークを活用した支援を行えるように

林氏:国内VCとして、海外に打って出ようとしているfintechスタートアップをどのように支援されているのでしょう?特に、海外VCにはできないような支援てどういうものがあるのかを高岡さん、お願いします。

高岡氏:
まず海外のVCと国内のVCの違いで思ったことを申し上げると、海外ってVCの市場が出来上がっているんですよね。
なのでその中にいる人の層が厚いということと、イグジットのマーケットも出来上がっているんですよね。
あとは、皆さんIPOするまでの期間を長引かせているというか、アメリカのPEファンドとかがVCに参入してきて、シリーズごとの資金供給者がすごく出てきているので、次どうなるのかが見えやすい、リターンが描きやすいという市場があり、そういった意味でいうと日本はそこまでいってないなと感じました。

で、マネックスがどのように海外支援しているかということですが、我々は海外のfintechVCであったり、シリコンバレーのVC、しかも金融に特化していないVCさんだったりとか、少しずつ投資させていただいてます。
これはストラテジックな目的でして、なるべく幅広く色々見ていきたいということです。
そういうインフラを投資先にも共有できればと思ってます。
また、MITメディアラボの会員であったり、うちのCTOがメディアラボの研究員でもあったりして、将来的には、MITメディアラボさんのような研究機関と共同でできるようにして、投資先との橋渡しもできればかなと思っています。

林氏:海外とのネットワークでいうと、国内VCって今一歩劣るというか、海外VCと組んでいないと厳しいんでしょうか。

高岡氏:
ステージによっても違うと思うんですが、逆にお聞きしたかったのですが、コミュニケーションコストってどう思いますか?
日本の市場って特徴的じゃないですか。
そういうところをすぐに理解してもらえるものなんでしょうか。

佐々木氏:
色々作っておいてあるのでそんなに(コストは)かからないですね。
必要とあれば、役員会も英語で行うのでそこには気になる部分はあまりないですね。